最終更新:2004年4月4日

私の見たイベント、メディアの率直な感想です。言いたい放題ですが、ご容赦下さい。備忘の為にタイトルだけの場合もあります。(後日、多少の加筆修正有り得ます)

放題放談

2003年の続き、2004年版は今しばらくお待ち下さい (4月4日掲載)

コント「半生な女達」 (2004年4月4日掲載)
 太田寸世里一人コント。2003年10月8日(水) 19:35-20:50 下北沢:OFF・OFFシアター

「ウェディング」
 結婚式が始まるというのに新郎のタカシはまだ来ない。焦る新婦だが、彼の遅刻癖が語られる。しかも、モンゴル人だとかイスラム教徒だとか言ってその場凌ぎの出任せの理由を言う。いつしか彼女は、待たされる怒りよりもその言い訳を楽しみにするようになっていた。男前の彼は女にも持てた。しかし「第一婦人は君だよ」という言葉を信じていた。やっと現れた新郎は、妻を連れていた。「じゃあ、私は第二婦人?」と新婦。
 結婚式と言うのに家族が描かれないのは余りにも不自然、と思っていると、後半出て来て一安心。落ちは今一つだが、それまでに紹介される、遅刻した彼の苦しい言い訳が面白い。彼女が虜になるのもわかる。

「携帯電話」
 道路に携帯電話が落ちていた。しかもわざと置いたかのようにど真ん中に。車に引かれる恐れを感じて道端に移すが、目立たなくて却って見つからないかと元に戻そうとすると、着信音が鳴り、思わず出てしまった。掛けて来たのは男で、その電話の持ち主は妻だと言う。妻の居場所を聞かれるがわかる筈が無い。そこはどこかと聞かれ、渋谷だと答えると、そんな筈は無い、妻は仙台に行っている筈だと言う。他人の家庭の揉め事に首を突っ込んでしまった彼女は後悔するが、電話を切ることができない。渋谷なら花屋に居るかもしれない、と言われるまま向かうと、果たして男性店員とその女性が居た。二人は結婚する予定だと言うが、女は電話の男の妻だった。
 これも、結末が苦しいが、それまでの、親切心から携帯電話を拾った女性が、たまたま掛かって来た電話に翻弄される様が面白い。安心して笑える内容だ。

「応援演説」
 定年退職後、突然立候補した夫の応援演説に借り出された妻。聴衆を前にしどろもどろで必死に話すが、いつしか自分の地域活動や夫の悪口になり、浪々と演説をし出すのだった。
 今回いちばんの面白さ。初めの右往左往状態から徐々に熱を帯びて来る演説の移り具合が絶妙。その話の内容も、家庭の主婦ならではの話題で楽しめる。本人が意識しない変化を、その内容を楽しみながら周囲が面白がる、という構図。劇中劇のようなおかしさもある。

「女湯デビュー」
 折り畳み椅子の上に置かれた花瓶と一輪の赤い薔薇がスポットライトに照らされている。ナレーションで、10月5日、女湯に初めて入った体験が語られる。しかし、成人女性にしては感想やいきさつが妙だ。話の内容から徐々に、おかまだと判明する。
 声だけでちゃんと落ちている。しかし、オカマだと気付くタイミングが客によって違うだろうから、早目に気付く(客が多い)と面白くなくなるので台本作りが難しそう。

「証拠隠滅」
 電話で留守番中の子供に指示を出す、遊び人風の母親。まずは髭剃りをおもちゃのバッグの中へ。そして、家族は誰も食べない納豆の始末。これで、引き込んだ男の形跡を無くそうとしていることがわかる。夫が予想以上に早く帰宅することがわかって、外出先から慌てている妻なのだ。納豆まみれになった子供の前に現れた音を間男と勘違いした女だったが、それは夫だった。
 3歳の息子に留守番をさせるのは無理を感じるが、外出先から、文字通り隔靴掻痒の如く子供に指示を出す様は良く描けている。結構リアルなのでブラック系。

「丑の刻参り」
 白い衣装で椅子に座る女、夜中の神社で虫の音が聞こえる。台詞は全て短歌の三十一文字。季節の歌から始まって、いつしか浮気夫の悪口に。袋から取り出したのは藁人形と5寸釘。木に打ち付けるその場に猫や野犬が現れ、やがて人々が。盆踊りの稽古と誤魔化す女。
 「盆踊りの稽古」という言い訳はもう一工夫欲しい。浮気する夫への復讐がメインだが、丑の刻まで待つ間の「歌」の時間が長過ぎるかも。それが恨み晴らしに変わって行く、その辺りの変化が面白いと言えるのだが。ちなみに正確には「丑の時参り」の筈。

「当選演説」
 「応援演説」の後日談。顔のポスター。ナレーションで、当選のお礼を述べる妻・東山かよこ。その後立候補した妻は、中野区議や衆議院議員を経て都知事に立候補し、当選したのだった。
 パート2として、面白い。

「ラジオ体操」
 当日の新鮮ネタを取り入れる辺りは絶妙で的確。文句ございません。

「改悛」
 地獄に落ちる夢ばかり見、左の二の腕には鬼の人面のような瘤ができて来た妻は、それまでの生き方を変えて善行を目指す決意をする。まずは、夫の朝ごはん作り。その間、今までの悪業を、都合の良い解釈を織り交ぜて自ら語るのだった。義母との喧嘩、窃盗、放火、浮気等々。そして朝食が出来て起こしに行った夫は縛られているのだった。
 数々の悪事をさらりと言ってのけ、付け加える都合の良い言い訳が面白い。ラストは今一つ。こういう時にやらずに、「怖いものシリーズ」として集中させ、もっとブラック度を深めるのもいいかもしれない。

「生まれ変わり」
 気付けば生後三歳の赤ん坊になっていた。23歳のOLグラフィックデザイナーだったのに。あやしてくれる「両親」に、必死に事情を説明しようとするが、単にぐずっているだけに見られてしまう。徐々に記憶が戻って来る。社長賞を貰って、祝賀会の3次会後、交通事故に合ってしまったのだった。未練は残るが、あやされる快感が徐々に捨て難くなるのだった。
 同じ子供役でも、「一人遊びの幼児」よりも完成度が高いと感じるのは、遊びまわる動きが無く、客としての想像力を要求されたからか。事故発生が1983年? それでは生まれ変わりにはならないのでは?

「あきら」
 残業で疲れて帰ったOLの、縫いぐるみ相手の勘違い一人相撲。
 何となく、いつもより疲れて老け込んだOLだったという気がする。あきらとのやり取りは相変わらず笑わせる。あえて落とさず、このように勘違いのままフェードアウトさせるのも面白い。
 ちなみに、劇場ビルの横道に「あきらくん」という店があった

BLU-NAZI第8回公演「空」 (2004年3月15日掲載)
 2003年9月7日(日)15:00-、シアタートラム、出演:吉田はるき/目崎暁子/曽我部智子/竹内靜香/長谷川惠子/阿部祥子/鈴木魅穂子/日下部紀久子/山崎裕子/室伏美由紀/吾郷多津子/岡本希美/陶山優子/坂本奈緒/矢島有里子、作・演出・振付:竹内靜香、演奏:tov(佐々木朝美/加藤麻弥/田中愛/松橋恵)、¥3.500

 舞台には四角いブロック状のものが3列4行に並んでいる。奥には障子風の淡い照明が当たった幾つもの窓のようなもの。
 開演前、一人の女性が舞台上のブロック状のものの位置合わせを行う。この「作業」は、既に鑑賞準備が完了している観客へのサービスか。しかし、これはまだ席を確保していない客を焦らせてしまうような気がする。私は、開演前には出演者は姿を見せない方が良いと思うのだが。
 「授業」の説明があったということは、希望通り、空を見る会社を立ち上げた、ということなのだろう。現実的にはとても収支が折り合わないだろうが、設立趣旨としては好感が持てる。
 風子の家に盲目の晶がしばしば訪れ、茶飲み話をして行く。しかし同居している雪子には晶の姿は見えなかった。実は晶は病院で寝たきりだった。では風子が話していたのは誰なのか……。

 病院で寝た切りの晶は、見舞いに訪れた雪子の話を聞いていた、というのはあり得るような気がする。そこで仕入れた情報に従って、晶の生霊が、風子の元を訪れる。そこで二人が、事故を巡ってやり取りするならわかるが、話題が余りにも世間的、暇潰し的なので、導入としては引付が弱い気がする。
 盲目の晶は、実は風子と逆の立場だった……。晶が何故、盲目である必要があったのか。風子の引きこもりは盲目故、ではなく、事故が原因ではなかったのか。
 引きこもりの人間とは、こんなにお喋りなのか。外に出ない分、中で発散するのか。晶は何の為に毎日ここへ来るのか。
 雪子もよく喋る。そして彼女達はお茶ばかり飲んでいる。
 帰宅した雪子が、見えている筈の晶を無視するのは何故?と思ったが、それは伏線だった。
 いくら引きこもりでも、窓から外は見えるだろう。何故、いちいち雪子が空の様を報告しなければならないのか。それも伏線……いや、既に盲目だったから?
 やがて2年前の事故の話が紹介される。風子のせいで父親が脇見運転をし、両親が亡くなった。そして事故に巻き込んだ相手は寝たきりに……。
 映写のピントがぼけていたのは残念。
 同じ北沢タウンホールで行われた以前の作品の、よくもこれだけ集めたものだと思うくらいの品々で溢れた居間に比べると、今回は実にシンプル。それは夢の世界、非現実・不思議な世界だったからか。いずれにしても、シンプルでも、それなりの世界が作られていた。
 しかしこれでは「久しぶりに青い空を見たような」気持ちにはなれない。何故なら、青い空に浮かぶ白い雲が事故の原因であり、不幸の始まりであり、その悲しみを克服する過程が見えて来ないから。新しい友人関係の始まりは結構なことだが、それが事故の当事者同士にしては、余りにも都合良過ぎる展開だと思う。
 ダンスについて。
「プロローグ」パジャマのような衣装。均等なリズムに乗った体操のような振り、動きはワークアウト(トレーニング)を思わせる。何かを物語るというよりは、機械的な運動に近い。これはこの作品のダンス全体に言える。
 青系の色使いは青空の象徴か。後半の、赤と青のライティングが綺麗。スクリーンの情景を合わせると、色合い的には火山の噴火、溶岩流の雰囲気。
 「サクラサク」チマチョゴリ風の衣装。
 「祭りのあと」狐の面(祭りと言えば何故か狐が多い。かと言って狸だとコミカルになるが)。tovも浴衣姿。祭りの後には、何となく寂しさが漂うが、ダンスはそうでもなかった。
 「エピローグ」葉っぱの行列。竹内のソロ。
 「フィナーレ」犬、鳥、馬、蛙、鶏、等々の鳴き声が面白い。これも均等なリズムに乗った動きだが、動きに流れ(カノン)があり、飽きずに楽しめる。
 かっちゃん=船越英一郎、が意味不明。
 Eckkoの歌=いかにも、物語の終わり、という雰囲気があった。

「脱心講座〜フラチル編〜」 (2004年2月22日掲載)
 2003年8月30日(土)19:00-、セッションハウス地下スタジオ、出演:三浦宏之、康本雅子、2500円
 男が大きな袋を担いで下手から入って来る。下ろして開けると中には女。袋から出し、取扱説明書を見ながら頭や手を触ると股からビデオテープが落ちる。それを傍らのビデオデッキにセットするが写らない。更に説明書を読みながら触ると、女はデッキに近寄り、コードを自分にセットすると壁に映像が映り出す。
 教室のような場所で、同じ格好をした女が語尾に「る」が付く言葉を喋る。「る」を抜かして聞けと言う。黒板には「脱心講座」と大書。講座の開始だ。映像の彼女の動きに合わせて男が向かい合って同じ動作をする。虫の交尾シーンでビデオ終了。
 女、起きて踊り出す。ぎこちなく。うつぶせの男の尻に乗る。
 海の映像。男を手漕ぎボートにして、腕の魯を漕ぐ。
 女、ソロダンス。靴を脱いで男の尻に乗る。靴を手に持ち拍子をとる。
 海の映像が消え、男は起きて女の後ろから操るように上着を脱がす。海底のようなビデオ映像。男、女を担いで上手にはける。
 女が紐に繋がれた犬になっているビデオ映像。公園のよう。投げたボールを取ったり、川で滝に打たれたり。鳴き声が可愛い。男、ベンチで居眠り。お互いに相手を噛もうとする。これは心理描写か。
 二人が相手の面を被って上手から登場。男が犬の役。面を取ると笑った面。落とした面を踏む。面を交換し、外す。
 向かい合わせに横向きに立ち、奥の方の手でTシャツの中から「飛び出る心臓」のような形を作る。蹴り合うダンス。倒したり。ワルツ。
 向かい合って座り、握り拳を握り、むかつき合う。女、男の腿や腕を切る仕草。眼を覆って「目出度し」。
 公園の茂みで横たわる女の映像。男が耳栓をし、顔に薄絹を掛ける。女の衣装が徐々に葉に隠されて行く。土に返るのか。
 女、ソロ。花の詩の二人の朗読と物悲しい音楽。「花が泣いていた、光よりも水が欲しい。」
 女の眼には花が眼鏡のように置かれている。右足を、前に置かれた水の入ったコップに入れる。倒れ、花を食べる女の映像。木の根っこに「完」の文字。
る付き言葉を言ってはいる。
 男、女性のような衣装で出たり入ったり。上手奥に椅子とマイクがセットされる。女が歌い出すと男が膝に乗ってギターの変わりに。一旦、男のソロダンス。女の膝に戻って終わり。
 ビデオの「脱心講座」=女性と一緒に踊る(動く)という構成は、今まであったかもしれないが、私は初めて見た。アイデアは湧いても、それほど面白く無さそうなので実行には移しそうにない気がするがこうして見てみると結構楽しめた。
 使用するのは普通のビデオテープなのに、パッケージとしての女は重過ぎる、大き過ぎる。しかも、講師と同じ「女性」というのは紛らわしいが、逆にグッドアイデアでもある。
 初めはビデオ映像が出ず、女性がデッキに近付いて操作後に移るが、この工程は無くても良かったのではないか。
 犬になった映像はどうだろう。自ら望んでやっている訳なので「女性の人権」云々を気にする必要は無いのだろうが……。鳴き声は可愛かった。
 お互いが相手の面を被っての踊り。Tシャツの中から「飛び出る心臓」のようなやりとり。これもアイデアは面白かった。
 花の詩の二人の朗読の音楽は、何故こんなに物悲しい音楽を使うのか、と思う。
 「る」付き言葉、花の詩の言葉が聞き取りにくかった。
 総合的には、今までの康本ダンスのイメージに無い内容で、マイク、スピーカーを通しての声も美しく、新たな発見だった。

芝居「ORB オーヴ」 (2004年2月8日掲載)
 2003年8月24日(日)14:00-、会場:本多劇場、作・演出・出演:小野寺丈、出演:三浦浩一、黒田アーサー、中村由真、水谷あつし、岡元あつこ、他、4,000円(全席指定)

 この日は余りにも暑かったので、1階の店に入って火照った身体を冷やしてから劇場に入る。ここは初めて来たが、俳優座劇場と似た印象だ。

 城のような城壁。その中から大きな樹「蛍樹」が生えている。小鳥のさえずり。電車が通過するガード下のような騒音の中、大勢の人々の雑踏の音。
 一転して村人達が集って話している。300回目の「蛍樹の実」の収穫は21+3という数。この村に新たな三人が加わる訳だ。
 月曜日。一人の男が登場するが、自分の名前も職業もわからない。ポケットに入っていた名刺から安西と思われる。続いて現われたもう一人の男は「偉大なる矢沢栄吉」と自ら名乗る。最後の女性は安西のメモから「スケバン」と判明。
 長老は3人に住まいと衣服を提供する。栄吉が連れて行かれたナナの家は、夫が行方不明中だった。
 蛍樹の実の葉に願い事を書いて実を塔に置き、もしも塔が光ってその実を食べれば願い事が叶うという。そのようにして金のなる樹を得た王は、金を権力として好き放題をしていた。
 火曜日、水曜日と進んで行くが、暗転のたびに流れるインターネットの掲示板の書き込みが、これが、ある村落の単なる物語ではないということを暗示する。

 観客は、事情がわからない3人と共に徐々に理解して行く。しかし、わかった積りだったが実は“逆”だった、という展開は手が込んでいた。
 しかし、死人が訪れる村は、余りにも俗っぽかった。それは、後々の展開の為に敢えてそうしたのかもしれないが、振り返った時に、死者の世界という印象は薄かった。
 死者たちの世界なのに、理想郷を求める為に生贄を選ぶという設定には無理を感じる。余りにも人間味に溢れている(かと言ってゾンビ集団にすればよいというものでもなかろうが)。
 インターネット心中という、今時の話題を取り扱っているが、失恋で苦しいとしても、心中仲間を欲する気持ちは理解できない。
 また、経営に行き詰った会社を建て直す為に娘を犠牲にする父親、それに屈する子供や若者というのも、現代としては無理な設定とも思う。
 ギャグは面白く、そこそこ効果的だった。しかし、タケチャンマンもどきのあの王子はやり過ぎではないか。敢えて崩すならギャグに徹して、“支配階級”は長老だけでよかったようにも思う。
 こうなってしまった経緯は、悠子の分だけが描かれていたが、他の二人も気になる。
 人妻のナナが戸田を自宅に招くのは、ちょっと安易な感じ。
 朝倉の感情露出は、もう少し抑えた方が、より共感を得られたのではないだろうか。
 リョウはストーカーに怯え、シンの死を悲しむネガティブな役所だが、王子が追い回す(何と迷惑な!)ほどの魅力的な女性像が描き切れていないように思う(演技ではなく脚本として)。
 個人的には、ゴウに男の野性味を感じた。役柄ではなく、風貌に。

 さて、死後、過去は綺麗さっぱり忘れられる(?)ものだろうか。私は、苦しみながら死ねば、それが続くと思う。だから、失意、絶望のままは死にたくない。それに自殺は、周りの人を苦しませることになる。病死や事故死以上に、傷が癒えないと思う。そんなことを考えさせる作品だった。

芝居「Happy Circle DX」 (2004年2月1日掲載)
 2003年8月24日(日)18:05-19:40、ブディストホール(中央区築地)、劇団:じっと困った、2500円(前売り)

 龍円寺家の家主・寿太郎(川上和典)は、姉・珠湖の見合いに出掛けようとするが、珠湖のネックレスが見当たらない。他にも、メイドのビデオテープやお菓子、ティーカップ、電子レンジ、冷蔵庫の食糧などが次々に無くなる。
 寿太郎は甥の探偵・朝佑に捜査を依頼するが、一緒にやって来た助手の浩一ともども捜査がおぼつかない。寿太郎の娘・萌伽、息子の鼓太郎の家庭教師・真理絵や、アメリカでのダンス修業から戻った長女・瑠伽とその弟子達、個性的な5人のメイド達も捜査の邪魔となる。
 密かに寿太郎に思いを寄せるメイドのリーダー・さちえは、寿太郎と仲の良い真理絵に意地悪をする。
 結局、最終的には寿太郎と真理絵、瑠伽と朝佑、メイドのつかさと浩一、メイドのふたばと鼓太郎、泥棒の瞬とメイドのちはるがそれぞれ結ばれる。
 残ったメイドのさちえときよこは、萌伽と一緒に珠湖に教えを請いながら一緒に見合いに出掛けるのだった。

 チラシの面白さから勝手に増幅させて期待したものに比べると、舞台はちょっと外れだったが、寿太郎のキャラクターは裏切らなかった。裕福な育ちで小さいことには拘らない寿太郎、自信の無い臆病な朝佑のキャラが面白かった。
 鼓太郎は印象が薄い。萌伽は、見た目の可愛さと正確な判断能力を欠いた行動のギャップが生きている。
 珠湖の状況把握能力欠如振りは中途半端で、感情があまり伝わって来なかった。もっと自信過剰、自惚れ家、或いはその逆でも良かったかもしれない。
 浩一は図々しさは出ていたが、周囲との関係を考えると空回りな印象。単に、嫌な奴、で終わっているかも。
 オカルトマニアのふたばは個性的だったが、作品進行上、もう少し比重が薄くてもよかったのではないか。他の4人のメイドは、そこそこの個性だが、そのくらいが良かったかも。それぞれがあまりにも強すぎると雇われ人の雰囲気が損なわれるので。
 さちえの、真理絵へのライバル意識は取って付けたような感じ。寿太郎への想いをもっと描くか、逆に無くても良かった。
 萌伽と真理絵は、夢想家的なキャラクターがダブっていたように思うので、もう少し分けた方が良いかな。
 あの体格で、世界に羽ばたくダンサー・瑠伽という設定は、パパイヤ鈴木に通じるものを感じる。二人のダンサーはそのギャップを拡大するのに役立っている。
 道具類やNYでの活躍振りを報告するスライドなど、工夫はされていたが、スライドの西洋人を象徴する「白い鼻」には違和感があった。
 金銭的価値の低い品物を盗ませて、頭の悪い泥棒像を作ってはいるが、あの家庭で何度も盗みを働くのは、逆に馬鹿にはできない芸当かもしれない。いずれにせよ、キーマンとしては瞬の印象も薄かった。
 探偵に捜査を依頼しておきながら、一家が非協力的なのは解せない。品物が無くなる不気味さ、不可解さ、犯人追及のスリルなどよりも、登場人物の個性のぶつかり合いが優先されているので、展開が散漫な感じ。話の幹と枝葉が整理仕切れていないように感じる。
 ラストでドタバタと5組もカップルが誕生し、取り残された4人が見合いに気合を入れる、という終わり方は安易な感じもするが、この作品の流れとしては良いようにも思う。
音楽は状況説明として多用されており、それぞれが有効だったと思うが(思わず苦笑い、程度だけど)、オープニングはちょっとうるさく感じた。
 全体的には、後になって、あの家庭はその後どうしているのだろう、という余韻は残らず、さりとて、大笑いしてスカッと忘れる、というのでもなく、中途半端なコメディの印象。しかし、劇団としては良くまとまり、仲が良い感じがした。これが、長く続ける秘訣か。

二十一世紀舞踊 パフォーマンスシアター水と油「急降下 (2004年1月25日掲載)
 2003年8月22日(金)19:30-、世田谷パブリックシアター、前売3,500円
 見終わった直後の感想は「疲れた」。ダンスや芝居以上に、一挙手一投足を見逃すまいと集中して見続けたからかも知れない。まるで手品のようにいつの間にかモノが出ている、状況が変わっている。もう見逃したくはない、という気持ちになってしまう。この種の演目は、数分間演じた後、幕間があって全く別の作品が始まる、というような展開が多いような気がするが、幾つかに分かれてはいるものの、ずうっとつながっている構成のせいもあるだろう。
 初見だが、数少ない鑑賞歴のオーソドックスなパントマイムとも、お笑いのコントとも、道具を使ったモダンダンスとも異なる、独特の世界だった。くすっとした笑い、はっとする動き。下ネタが無いのも嬉しい(嫌いじゃないけど、安易な気がするので)。
 床に吸い付くような倒れ方は、やはり秀逸(演者によって、多少の差はあるけど)。
 いちばん面白かったのは「エレベータ」。わかりやすく、あり得ないけどありそうな出来事。テーブル上の歩行も、一瞬だが良かった。「落ちる顔」も斬新で面白かった。
 二人一組での「人形」は、期待しただが不完全燃焼だった。文楽のような人形に徹するか、何かわからないけど何かに操られている不自然な人間か、どちらかの方が面白かったと思う。操られているようで、結構自分で動いていた感じがする(主旨が異なるかもしれないが)。
 あれだけ人が動き、物を動かすのは、相当大変なことだとは思うが、その動きの面白さ、タイミングの絶妙さはあるものの、今一つ見所、落とし所が無い感じで、ちょっと散漫な印象も受けた。もう少し要所要所に見せ場的な所があっても良かったのではないかと思う。特に、ステージ全体を使っての大きな動きのシーン。
 反面、ジェンガのシーンは、静と動の面白さがあった(これもわかりやすいからか)。
 「急降下」というタイトルだが、見終わった全体の印象としては「落下」「落ちる」というイメージ。人間は、飛行機など機械を使わないと、落ちる以上に早く、急に降下することはできないし、それを舞台で表現するのは難しいと思う。これはこれで楽しめるのだが、そういう意味では、あの倒れ方に関しては短距離ながらも、まさしく急降下と言えよう。

映画「マトリックス リローデッド」 (2004年1月17日掲載)
 監督・製作総指揮・脚本:ラリー&アンディ・ウォシャウスキー、製作:ジョエル・シルバー、出演:キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー=アン・モス(2003年、アメリカ、ワーナー、138分)
 ストーリーは、正直言ってよくわからない。地下深く作られた国「ザイオン」が「マシーン」によって攻撃されようとしている。それを阻止すべく、ネオ達が分身の術を使うスミス達と戦いを繰リ広げる。
 「何故知っているのか」という問いに「それが私の目的だから」と答えてしまっては、全てが何でもありになってしまう。
 死者を簡巣に蘇生させてしまう。「因果関係」を重要視している割には、話の展開が御都合主義だ。
 キ一マンを見つけたら、壁一面に鍵が並んだ鍵屋というのはベタなギャグ。
 幾ら戦っても怪我も無く、息切れもしないのでは見応えが無い。
 高速道路の逆走、CGとはいえ多数の人間の処理はよくできていた。
 重力を制御する科学カがありながら、工場の機械に原始的な巨大なギアを使用するアンバランス。出演者による、抽象的で理屈っぽい説明。
 見終わってスッキリしない映画である。(2003年8月17日鑑賞)

「DANCE 夢洞楽」−夢が目をさます日− (2004年1月11日掲載)
 2003年8月17日(日)18:30-、北沢タウンホール〔下北沢〕、前売3000円(全席自由)、主催:西山プロジェクト
 感想と言うより作品メモ。

☆ナオコ モリ
 流水や小鳥のさえずり。センターに置かれた流木のようなオブジェが、ワイヤで回転している。その周りで二人が踊る。黒い衣装、青いラインの入ったス
カート。
☆山下裕子
 何かを探すそぶり、何かから逃れるそぶり、片方の靴を脱ぎ捨てる。ビー玉を落とす。センター奥の少し開いた扉からビー玉が転がって来る。
 バレエの姿の印象しか無いので、新鮮に見られた。予想以上に大人っぽい。ビー玉は、どこに転がっていくかわからない自分の方向、脱ぎ捨てた靴は、過去からの脱皮か。
☆Ra.ccoon
 センター奥に透明な椅子。柔軟な身体で、脚が楽に上がる。踊りを急に止めて終わる。
☆高橋あや乃
 ピアノ、オルゴールの音楽。白い衣装に腕に赤い帯。
☆鳥沢美緒
 ベルのような音で始まる。1畳くらいの透明なシートを持って登場。床に置いた時の壁に映る反射が綺麗。踊りは一本調子な感じ。
☆武田 泉
 オルゴールの音楽でゆっくりした踊り。ギターと歌でフラメンコ。再びオルゴールで終わる。
☆海保文江
 シモテにしゃがむ女。3人が出て来て「烏合の衆」の歌で踊る。一人では何もできない。白いアイシャドウ、墨衣のような上衣、マフラー、コミカルな表情、三味線の音楽、再び烏合の衆、緑の破れ網が落ちて来て、絡まって倒れて終わり。
☆小林和加枝
 センターのピンスポットの中にしゃがむ一人。だらりとした感じの上衣、チェロの綺麗な曲、独特の世界、独創性を感じる。
☆菊本千永
 白いパンツに四角い模様の上衣。二人が寄り添うように、追いつ追われつするように踊る。絡み合う。おどろおどろしい雰囲気の曲。
☆引地由美
 黒いロングワンピースにピンクのラインの入った衣装。奥に縄梯子が下り、最後はそれが上がって、追うように終わる。
☆前沢亜衣子
 懐中電灯を持った5人。足元や自分を照らす。「空」を使った言葉を朗読。清水のソロや他のカップル、5人で綺麗に踊る。楽しめて飽きない。
☆小澤恂子
 青く薄いチマチョゴリ衣装。ほとんど立ち居のゆったりした動き、回転。
☆福沢里絵
 5人が一列で前方に後ろ向きでスタート。奥に進み、一人がくしゃみ、踊りのミス、笑い。ユニゾンでミスしたり、くしゃみや笑い。後半。隅に置いた四角い穴の開いた布を持って踊る。
☆多田直子
 帽子を顔に被って寝ている。起きて2ビートの軽やかな曲で踊る。帽子を取ってひたすら楽しそうに踊る。靴を脱いで投げ、置いた帽子に手を差し出して終わり。
☆平多好美
 センター・ピンスポットの奥で暗いまま踊る、周囲を左回り、手や脚を差し入れる、中に入ってひたすら踊る。迫力、エネルギーのある踊り。
☆中野ちぐさ
 センター、上から花びらが降り注ぐ。突然踊り出す。紙風船を膨らまし、割ると中から花びらが出て終わり。
☆石井早苗
 セーラー服に白いヒダスカート。二人一組で三畳程度の長さのプリント布を持つ。センターでよじらせたり、編んだり、壁状にして、その前で半分が踊ったり。ポルカ。イベントダンス風。フォーメーションが綺麗。

「2003年日本女子体育大学公開講座ダンスワーク・セミナー」 (12月30日掲載)
 8月7日(木)、8日(金)、9日(土)、日本女子体育大学にて
 この講習会の目的は、日本女子体育大学がどのような舞踊教育を行っているかの紹介と、来年度の受験生に入試準備のアドバイスをすること。もう一つは、ダンスの奥深さと魅力を実際に体験できる機会を、大学という組織が中心になって、学外にも広く公開するということ、とのことである。
 然るに私は高校生でもないのに、男性も歓迎とのことで受けてみた(他に男性が一人いた)。

ショーケース:
 イベントダンスは、競技エアロビックダンスとチアリーディングを混ぜたような感じ。体育会系だ。
 非日常的なバレエを、あのような体育館で見ると、5作品の中で最も違和感がある。
 コンテンポラリーとモダンは、何となくそれらの違いがわかりやすい作品だった。

「ムーブメント(技への挑戦)」坂本秀子:
 メニュー=歩行、ピケターン、シェネ、エアージャンプ、バトマン(前・横)+転がり、シャッセ・ジャンプ+拍手、ソテ・ジャンプ。
 それぞれを次々にこなして行くだけで、一つ一つについての詳しい説明や指導が少ないので、技のボキャブラリーを増やすというよりも、技の体験という感じ。
 技を向上させたい人には物足りないだろう。高校生にはちょっと背伸びした体験であるが、大学生たちの技を見て励みにはなるだろう。
 バレエで全身運動をして来た積りだったが、いかに使っていない箇所が多かったかがわかった。

「学としての舞踊A」松澤慶信
 哲学的で難解。高校生だからといって敢えてレベルは落とさなかったらしい。

「ボディコンディショニングA、B」橋本佳子:
 メニュー=疲れたら横になって休む。呼吸。頭と腰底の十字形を結んで真っ直ぐに。ストレッチ、尻伸ばし。
 言葉遣いが子供相手のように丁寧でゆっくりしている。ダンス向上の為には技の鍛錬だけではなく、ダンスの種類を越えた、どんなダンスにも共通するこのような基本的なことをマスターすることが肝心である。
 内容と時間を考えると密度が薄いようにも思うが、参加人数と、説明だけではなく実技を伴っていることを考えると妥当かも知れない。体育系の授業として必須だろう。

「コンテンポラリーダンス」社本多加:
 メニュー=こすり合い(私はこすられただけ)。背のび、胸のび。歩き、前後横。走り、前後横。寝転んで手上げ、足上げ。右縮み左縮み。振り付け。
 ダンスは難しくない、楽しんだ方がよい、細かい動きに拘らなくても良い。
 別のジャンルのダンスで動きが綺麗な人が、ここでも綺麗とは限らない。立ち姿が綺麗でも、転がるとぶざま。敗者復活ダンス。
 転び方をちゃんと学ばないと危い。いきなりプールに投げ込んで泳げるようになる人もいれば、恐怖で遠ざかる人もいるだろう。向き不向きがあるかもしれない。私自身、腰骨が少し痛くなった。
 振りは、予想以上に覚えられたが、動きが追い着いていけない。

 仕事の関係で午前中の半日ずつとは言え、3日間という日程。高校生と在学生中心の約200名とはあまりにも年齢差があり過ぎたが、普段経験できない時間を過ごし、ちょっとした、夏の思い出となった。
 いろんなダンスを経験して来た積もりだったが、まだまだ知らない世界であり、ダンサー予備軍にも有望な人々が多く、層が厚いと感じた。実技はもとより、見方も、まだまだ勉強が必要だ。
 スタッフ(学生)や講師は親切で良かった。

「SHOWCASE2003」 (12月30日掲載)
 2003年7月25日(金)19:00-、日本女子体育大学トクヨ第二体育館、無料
 日女体学生によるショーケース。雨の中はるばる出掛け、無料とは言え、さてその値打ちがあったかどうかと考えると、学内の仲間内で開いているならともかく、外部の人に見せるには、作品の終わり方や司会・紹介をもっとしっかりさせた方が良いだろう。「観客の視線にさらす」なら、やはり外部の人をもっと入れて、もう少し緊張感のある空気にした方が良かったかと思う。そういう外的な印象の反面、身体のテクニックとしては予期していた以上にハイレベルで、人材の厚い層を実感した。
 さて、作品紹介は省略して一言ずつ。
1.「5人のやさしい日本人」より抜粋(お宝フィンガー巣)
 動きが機械的で、無表情故、どんな気持ちで踊っているのかが伝わって来ない。或いはあえて無機質に踊っているのか。
2.「魂を揺さぶる情熱のフラメンコ」(フラメンカーズ)
 初めの二人ずつ出て来ての踊りが魅力的だった。後のフラメンコは、ただフラメンコという感じ。題名負け。
3.「波紋 endress circle」(JO-G)
 動きが綺麗で良かった。大きなスペースを有効に使おうとしたのだろうが、ばらけ過ぎの気がする。集中と分散が欲しい。テーマが感じられない。
4.「四羽の白鳥」(パリ・オヘラ座)
 宴会芸、しかも素人っぽい。テーブルを出すまでは良かったが、後はもっとダンス風に整理すべし。菓子を食べるのは良いが、もっと「美しく」仕上げて欲しい。工夫次第では独創的な面白さが出せると思う。
5.「う、うん」(うん。)
 以前、小さなスペースで見た作品だが、やはり舞台が整うと見応えが増す。動きを影絵でも楽しめる。フルサイズを見ているので4人(一人減った)だとちょっと寂しい。
6.「Saudade Suite」
 内容は良かったが、衣装が今一マッチしない。長髪の女性の動きが良かった。
7.「傷口を押さえる綿」
 長身の女性の動きが斬新で興味深い。タイトルの意味が不明。キリンの歌の振りも良かったが、全体としてはまとまらなかった。
8.「頬の花束」
 物語性や心情を感じる。しかし二人が勝手にそれぞれ踊っている感じ。それがどのように関係して来るのかと期待したが、そのまま終わってしまった。
9.「桃色アフター5」
 一連の中でお口直し風な作品。サングラスは要らなかったかも。遅れて来た女性との関係描写がもう少し欲しかった。「先生」はよく出来ていた。
10.「ひろ子トなお子」
 平板で、構成が今一つな感じ。
11.「マイナス10」
 今回の中で最も見応えがあった(オハド・ナハリンを真似ているから当然か)。動きの緩急のバランスやフォーメーションが抜群。最近見た二見一幸の作品が連想された。
(18:30からプレイベントとしての上映があったが未見)

「眠りの森の美女」 (12月21日掲載)
 2003年7月27日(日)15:00-、文京シビックホール、芸術監督・振付:関直人、美術・衣装:ピーター・ファーマー、公演監督:岡本佳津子、制作:(財)井上バレエ団、5000円

「プロローグ」
 暗い中でカラッボスのマイムによる説明。紗幕を通してオーロラの誕生祝いの場。ベンチの青色がちょっとどぎつい感じ。妖精達の踊り。トネリコのジャンプ、脚上げが高い。招待されなかったカラッボスの怒り、王女への呪い。リラの精が眠るだけだと呪いを緩和。頼もしい。

第一幕
 花のワルツはパインシャーベットのような色合いのロマンチックチュチュで、花輪は無し。花婿選び。ローズアダージオ。島田衣子の踊りは、パドブレが若くてピチピチした王女の雰囲気が出ていた。カラッボスの策略で、オーロラは眠りに着く。横たわっているオーロラの、ピンと立ったチュチュが回転鋸のよう。リラが皆を眠らせる。

第二幕
 100年後、王子が一人で森を散策。ジプシー達の踊り。展開がブツ切れな感じだ。リラが王子に王女を紹介。王子と羽衣のような衣装の妖精達、幻の王女との踊り。王子はリラの先導で王女の元へ。二人が孔雀の舟に乗って、というのはちょっと遊園地っぽい。

「暗転(舞台転換)」
 カラッボスのマイムによる説明。王子とカラッボスの戦い。王女へのキス。王女の目覚め。全員の目覚め。

第三幕
 祝典の序曲は舞台転換の為にであろう、幕が下がったままで、結構長く感じた。結婚式の場。登場人物達の入場。貴族らしき者達は全員がピンクの衣装で制服っぽく、客人という感じではない。パドカトルのソロの2曲目はこの作品では初めて聞いた曲。長靴を履いた猫の悪戯っぽさが物足りない。赤頭巾、青い鳥の振りは曲と合っていない感じがする。男性の額の羽は青いが衣装は白、女性も薄い青。グラン・パ・ド・ドゥのフィッシュの脚が高かった。王子と王女がシモ手舞台袖から登場するのは初めて見た。結婚式。

 井上バレエ団、24年振りの演目。奇しくもプログラムは24ページ。本公演に関するページが12ページというのは物足りない気がする。
 主役は勿論、その他の出演者の技術には前を見張るものがあったが、作品としての盛り上がり、感動は今一つだった。
 ブラボー連発は納得。約2時間。

「山田うんによる、チャンス・オペレーション的ダンスへのチャレンジ」 (12月14日掲載)
 2003年7月17日(木)20:30-、五画、企画と進行=松澤慶信、ダンサーと演出=山田うん、ダンサー=渡邉優、中川小夜子、船矢祐美子、西崎まり江、丸山暁子、1500円(1ドリンク付)
 内容は、
 第1部:音楽、映像(空間美術として)、テーマを、我々観客が選び、山田うんが、即興で踊る。
 第2部:日本女子体育大学の現役女子大生5人が考えてきた各人30秒の動きのモチーフを、山田うんがコラージュして、統一したショートピースにその場でまとめ上げる。
というもの。
 山田うんはチラシのイラストでは見たことがあり、活動には何となく興味を抱いていたが、未だ見る機会がなかったので参加してみた。顔はイラストに似ているが(逆?)、もっと丸顔の先入観があった。踊る雰囲気が康本雅子を思わせる所有り。大きな眼の顔が良い。色んな表情が生かせそう。不要な脂肪を削ぎ落としたような身体で、あれだけ動けるのは凄い。次は是非とも舞台を見たいものである。
 第1部:企画意図が今一つな感じ。結局は彼女の一人舞台。観客が映像や音楽を選んでも、彼女が勝手に踊っているだけ。それはそれで、観客としては映像や音楽や踊りを楽しめるのだが、選択に要したあれだけの前準備が、果たして意味があったのかどうか疑問である。
 映像の内容が似通っていたので、花ばかりとか、文字ばかりなどの方が違いがあって面白かったかも知れない。音楽も、実は半分以上知らなかったので、選びようがなかったというのが事実。
 第2部:見応えがあった。あんなにポンポンと作れるものだろうか。踊りのばらつきは不問として、構成、振り付けも良かった。全体的に、よく踊れていた。学生だからと言って侮れない。特に船矢は身体も動きも良く、即、プロとして通用しそうに思う。夏にワークショップを受ける予定だが、彼女達と一緒に受けるのに怖気付く。(その後、受けたが、受講者が多く、うまく紛れ込んでいたのではないかと思われる)

「tick,tick...BOOM!(チック・チック・ブーン!)」 (11月2日掲載)
 2003年6月15日(日)19:00?-、アートスフィア、作・作詞・作曲:ジョナサン・ラーソン、翻訳・演出:吉川徹、演奏:The Band
 1990年1月、あと1週間で30歳になるジョナサン(山本耕史)はニューヨークのソーホーに住みながらミュージカル作曲家を目指す。演じながら自分や恋人・スーザン(YU-KI)、友人・マイケル(大浦龍宇一)の説明をする。水曜日には自分の書いた曲によるワークショップがある。
 中々目が出ないジョナサンに、スーザンは田舎への引越しを切り出すが、彼は相手にしない。彼は家計を稼ぎ出す為にレストランでウェイターをしている。姉は弁護士。
 日曜日のランチは、遅くて高くてまずいのに常連がいる。
 8歳の時に参加したサマーキャンプで知り合ったマイケルは俳優を目指していたが、転向してサラリーマンになり、羽振りは良い。
 月曜日はマイケルに請われて会社の会議に出席し、斬新なアイデアを出すが、居心地が悪くて飛び出す。マイケルを空港に送って行く。
     −休憩−
 空港から戻ると、腹が減ったので、まずはスーパーで買い物。甘いパイを買っていると、ダンサーのカデッサに会い、一緒に帰ってアパートの前でキス。部屋に入るとそれを見ていたスーザンに咎められる。
 マイケルは不治の感染症に罹っていた。
 バースデーパーティ。スティーブン・ソンドハイムから電話があり、未来が開ける。自分の為に嫌がっていたピアノ曲を弾く。ケーキの蝋燭を吹き消して幕。

 単純、単調な筋だが、それを2時間の作品にし、飽きなかったのは感心。それだけ堅実、じっくりと丁寧に作ってあるという気がする反面、筋が事実に沿い過ぎて、ドラマ性、エンタテイメント性が不足している感じもする。台詞が徐々に歌となって踊り出すという、典型的なミュージカルでなかったのは、個人的には残念だが、じっくりとした見応えはあった。
 柵があって狭い屋上、階段など、制約の多い場所でのダンスだったが、全体の流れとしては踊りは無くても良かった気がする。踊るなら、ジョナサンの歌で、ダンサーとしてのスーザンをもっと踊らせ、二人の仲を表現しても良かったのではないか。
 ジョナサンの解説は、作品を理解する上では役立ったが、すぐにその後に演じる事柄まで触れるのは余計だ。
 移動式の階段と屋上のセットが効果的な舞台を作り出していた。
 サンデーランチのエピソードは、流れからは蛇足な気がするが、典型的なアメリカ人を皮肉っているて面白い。
 ジョナサンが、ワークショップ後に評判を聞かずにすぐに帰ったり、何度も掛かって来る社長の電話に居留守を使ったりするのは不自然な感じ。ワークショップとは、臨時的なオープンクラス・レッスンというイメージがあるが、この作品では公開リハーサルというイメージか。
 ジョナサン=髪は金髪だが顔立ちがどうしようもなく日本人故か、アメリカ人の雰囲気が感じられない。
 スーザン=声が甲高く、子供のようであり、歌も半分以上聞き取れない。踊り云々ではなく、雰囲気としてはダンサーっぽくない。複数の役の中では、お高く留まった感じのローザのキャラがよく出ていた。
 マイケル=ちょっと陰のある役所にピッタリ。父親、店員など、ちょい役だが複数のキャラを上手くこなしている。
 舞台にはバンドが演奏する高いステージと、それと同じ高さの、移動式の階段と屋上(合計三畳程度)のセットが3セット。これがシーンごとに移動し、位置や方向を変えて、効果的な舞台を作り出していた。電話のベル音や話し声は、あたかも電話機から聞こえて来るように感じられた。

Spaced Out vol.2「Sepia」 (8月31日掲載)
 5月18日(日)18:00-、スフィアメックス、前売:2800円、当日:3300円、演出:SpacedOut、出演・振付:川島真紀/酒井麻也子/星原泉/三井アヤ/米川千津子。他の出演:赤尾仁紀、加藤奈々、川島優子、柴田恵美、SAE、松村朋子、森田玲奈、YASU-CHIN、木下聡、常石哲司、本橋哲郎、MORI

 海の中に沈んで行く箱の映像。途中で蓋が開いて中から玉などが飛び出す。思い出の品々か。
 「りんご追分」を編曲した、大正時代を思わせる音楽。渋い色の、シャツにフレア−スカート。これから懐かしい世界が展開されるんだなあ、という雰囲気である。曲はパソドブレ?に。
 三味線が奏でる静かな曲で、男女二人が踊る。男は去り、女は残る。
 待ち合せ風の、眼鏡を掛けたスーツ姿の女性に、男子学生が近づく。後方では、その様子を観察する男女学生が6人。それは男子学生と女教師の逢瀬だった。彼らに覗かれていることを知った二人は、てんやわんや。わかりやすい内容だが……。
 下手の椅子に座って手紙を朗読する女性。感謝の内容にしては冷たく冷静な印象。祖母を「あなた」と呼ぶせいか。上手奥ではそれに合わせて踊る女性。祖母にしては元気だから「私」か。
 7人の女性。茶色の衣装。早くて激しい動き。
 白い衣装の5人。オルゴールのような音楽で人形のような動き。爆撃音?をきっかけに早回しのような動きに。身体の伸縮を繰り返す。
 大木の映像。女性7人、一人は辛し色、6人はグレー。ピアノの曲で動きが止まり、スペイン語の歌で機械的な動きに。
 8体の人形の映像。そのまま舞台へ。ピエロ?、宇宙飛行士、ガンマン、兎などが踊る。彼らが箱に収まる映像で終わり。要するにおもちゃか。
 黒い帽子を被った紳士が破れた蝙蝠傘を持って踊る。
 黒い衣装の女性ソロ。次々に入れ替わって5人が登場。いずれも自分の振り付けのよう。ショーっぽい曲としては最後の女性がぴったり。
 中世の宣教師のような丸い襟を付けた、白い衣装の男性5人。動きが少々かったるい印象。
 薔薇の映像にカルメンの曲。普通の女性の格好だが、動きは老人。ロックンロールで震えて踊るが、途中から若く元気に踊り出す。ゆっくりな動きで終わり。
 鳥の鳴き声。狐の面を付けた人々。暗転で面は取られて、民謡風な曲と合わせの和風の衣装。

 オープ二ングは「古くて懐しい」世界への展開を期待させたが、その後は雑多な印象。亡くなった祖母や、子供の頃に遊んだ人形など、過去の素材は感じられたが、あれこれ出されても散漫な印象なってしまう。
 このグループの主催者は、途中でソロを踊った5人で、それぞれダンステク二ックは高かった。

2003年DOOP! DEEP !LEAP! Vol.7「こりゃボレーション!」 (8月17日掲載)
 5月17日(土)19:05-21:30、東京芸術劇場中ホール、構成・演出:瀬下尚人(THECONVOY)、山田茂樹、ゲスト:島田歌穂、5,500円

 ホール内での携帯電話の注意などを面白おかしくアナウンス。4人の銀色衣装の女性達が案内役。観客は「リープ21」(「リーブ21」の駄洒落?)という宇宙船に乗って銀河系ツアーに旅立つ。
 まずは、細かく動かせるセリを利用して、全員?によるオープニングダンス。
 月、火星とHIPHOP系ダンスが続いた後は「白鳥の星」でのクラシックバレエ。クラシックチュチュとロマンチックチュチュで、それなりにバレエの世界が展開する。翼を表現する腕の動きが見事。
 最後に現れたのはアヒルか。兵士らに連れ去られる。
 カラコーレス星では、靴は踏み鳴らさないものの、黒い衣装でフラメンコ。
 ブラックホールの辺り、両端に錘を付けたロープを回転させるシーンでの踊りが最も気に入った。
 但し、逆光の照明が多く、折角のダンスが眩しくて見辛かった。「光」というシーンに限らず、全体的に言える。
 地球に帰還して、賑やかに踊るパーティーシーンで終わり。
 結局、色んな星の名前にちなんで振付されているよだが、それぞれの場面の連携は無く、次々に色んなダンスが披露されたという感じ。折角宇宙旅行するなら、もう少しドラマ性があっても良かったのではないか。

 2部は、白い衣装のダンサー達。今話題の白装束とは無関係だが、頭も覆い、マスクもしている。順番に並び、機械的に「処理」されて傘を渡されて持って踊る。
 やがて一人の男性が傘を投げ出し、マスクも取って倒れる。黒い衣装の男が現れ、そのマスクを付け、傘を持って客席からはける。
 白い男の周りには天使達が踊る。この曲は「ネバーエンディング・ストーりー」?と思っていると、客席から龍が現れる。ここでサブ・タイトルの「ネバーエンディング・ストーカー」が繋がる。龍の本体を支えていた子供達が踊る。衣装の背中が割れているので、初めは止め忘れかと思ったが、どうやら全員なのでそういうデザインなのだろう。
 龍の頭は下りてきたブランコに乗り、少し上昇して何か始まるのかと思ったら、そのまま映像の中に溶け込み、映像が終わると同時にはける。結局この龍、よく出来ている割にはあまり活躍しなかった感じ。
 映像内容は、黒い全身タイツ風の小さな男(これがストーカーらしい)が、瓶から注がれるビールの中や回転寿司の上など、あちこちに現れる。東映映画のオープニングの波が砕け散るシーンもあるぞ。これはコメディか。
 一転して島田歌穂の歌。
 「Bird Land」へようこそ。頭に羽飾りを付けた「鳥」達が踊る。ミュージカルの一シーンのよう。
 網タイツ風の女性や黒服男性。金色のベスト。椅子を使ったり。燕尾服風。黒いカクテルドレス風。大人のバックダンサー、いかにもショーという感じだ。同じメンバーとしても、第一部より洗練されている感じ。
 再び鳥達の登場。稲妻に倒れる。
 鳥達、上衣を脱ぎながらソデに入り、すぐ出て来て踊る。脱ぐなら、次の衣装は見せないようにはけてから、あるいはその場で脱いでソデに放り込む、後ろに投げるなどが一般的だが……。
 光を求めてのソロ。黒い男が戻ると倒れる。白い男、ソロ、傘とマスクを壊して去る。ジーンズに白いシャツでフィナーレっぽい踊り。
 無機質な白い世界、コミカルな映像、ゲストとショーダンス……、第一部に比べると、見応えはあるが、それらが融合せず、つながりがわかりにくい。

ラフィネ・バレエコンサート (8月14日掲載)
 2003年5月11日(日)15:00-16:50、ティアラこうとう、東京シティ・バレエ団

 さすがにこれだけ日数が経つと印象も薄れていますが、記録を残したいので書きます。それにしても少な過ぎる。
第一部「パキータ」
 コールドは、身体つき、顔の表情、化粧の仕方までが揃ってる。
 次々と踊られるだけでストーリー性は無い。だからか、この演目は何度見ても印象が薄い。
等二部「VAIN CONSTRUCTION」
 穴吹淳と志賀育恵、カミシモから近付いて交差。身体をくねらせる女に、男が寄って来るが擦れ違い。ライトは横からのみ。無音。音が出るのと共に上からもライティング。音楽はパーカッションのみ。
第三部「ハンガリー舞曲」
 民族風衣装。

フラワートップpresents「お笑いバラエティー花満劇場」 (7月15日掲載)
 5月8日(木)19:30-20:30? 新宿ロフトプラスワン、2500円?
 会場はライブハウスで、6畳程度の腰高のステージと、隣合わせの4畳程度のサブステージ。
 まずはそのサブにて女性3人によるよさ来い踊り。何も、こんな狭い所でやらなくてもいいのではと思うが、まあいいでしょう。
「脳天直撃」?
 コントと言うよりは漫才。マスクを被っているのは、ギャグがつまらなくて恥ずかしいからか、と思うくらい。照れてはいけませんな。
「ザ・ネームレス」?
 今では珍しいショートコント。落ちが見えているネタもあったが、結構笑えた。
「おおくぼあきらとヴァラエティー・ショップ」
 色々工夫しているのはわかるが、メンバー同士のやりとりが今一つ笑えない。何事も事前に用意されているのは当然だが、それが見えてしまう。とは言うものの歌は上手いし、最後の文楽は心底笑えた。これだけでもリピートOKである。定番にしてもらいたい。
「古田三奈」
 「あのKSD事件で愛人歌手などと言われ話題の演歌歌手」という触れ込み。スキャンダルをセールスポイントにする意気込みは買いましょう。歌は上手いのだが、何故か今一つ魅力に欠ける。
「ぺこちゃん」
 ちょっと焦り気味? 持ち時間が少ないので慌てている感じ。「ラジオ体操」は常に新ネタを取り入れていて、新鮮に見られる。「コギャル」は落ちが難しいかも。「血液型講座」では、落ちと解説の間をもう少し空けた方が良かったと思う。山崎課長のキャラクターは笑える。OL役なのに、OLを離れて山崎課長に成り切っている。面白いキャラだ。「幼稚園児」は、内容の毒はともかく終わり方が難しい。
「だるま食堂」
 和風のグループ名に反して洋風のギャグで笑えた。今まで見たことの無い面白さだ。歌も上手く、女性三人それぞれのキャラも面白い。ネタも面白く、次も見たいが、同じネタだと2回で飽きるかも。

「情熱」 (7月9日掲載)
 5月5日(月)19:10-20:50、空中庭球園(池袋「ロサ会館」屋上テニスコート)、予約券3,300円、当日券3,800円、出演:指輪ホテル、新脚本+演出:羊屋白玉、如月小春作「DOLL」より、所作:佐々木絢子(5月1日-5日)
 「DOLL」は、劇団「NOISE」の旗揚げ公演として1983年に上梓された。関西の、3人の女子中学生による同情心中事件を題材にしており、5人の女子高校生が主役。実際の事件と同じく、少女たちの心中の動機は不明のままらしい(読んでいない)。
 事前に出演者達の顔写真を指輪ホテルのサイトで見ておいたのだが、テニスコートというステージに、黒い男子学生服を着て、階段状になった客席の下から飛び出して来た彼女達15人ははるかに子供だった。屋上の金網によじ登ったり、揺らしたり、じっと止まったりしている後姿は中学生のようであった。
 やがて踊り出すのだが、学生帽のツバから覗く長いまつ毛、その円らな瞳は「美少年」だった。コート一面に散らばって立つ。3人?が上着を脱ぐと、その下は手描き風の絵が描かれたキャミソール。そしてズボンのジッパーも数センチ下ろす。その下はフリルの付いたアンダースコート。
 ここからは多少芝居風になる。お互いに存在が気になる女子高生と男子高生。女子の方から朝の挨拶をし、二人は初デートとなるが、学生服の格好良さに比べると、普段着はあまりにもダサい彼は振られてしまう。
 帽子を脱ぎ、学生服を脱いだ彼女達は、徐々に個性が生きて来る。
 クラスで演劇をやることになった。女の子は犬と暮らしているが、そこに熊がやって来る。(ストーリーとしては付いて行くのがちょっと辛い)
 生徒会長に立候補する佐藤いずみ。それなりに応援演説も行われる。
 テニスルックで踊るが、そのスコートの短かさはちょっと滑稽過ぎるほど。単に寸法が合わないというのではなく、意識的なのだろう。
 最後に5人の現役?女子高生達が金網伝いに登場する。この出演者はどうやら日変わりらしい。
 終わって、いや途中から、そして誰もが最も感じていたことは「寒い、この季節にしては寒過ぎる」だろう。ビルの屋上で風が強かったにしても寒かった。

「シアター21・フェスstep up1 vol.2」 (6月9日掲載)
 4月29日(火・祝)19:30-21:15、セッションハウス、前売2300円、当日2500円、企画制作:セッションハウス企画室

1.「みどりのうた03」金井久美
 真上からの弱いスポットライトに照らされ、かがんだ姿勢で右手を天に突き上げ、右回り。衣装は、ゆったりした、まるで妊婦服のような白いワン ピース。ゆっくりとくねくね踊って暗転。明るくなるとシモ手に横たわっており、クラシックの曲で起きて踊る。正面を見据えたり、後ろ髪を引かれる ようにはけかけたり、何かを考え込んだり。ステージ奥の柱に耳を当て、そのまましゃがみ込む。無音。女性の歌曲で再び踊り出す。クラシックのピ アノ曲で終わり。15分間
 超絶技巧でも、それほどのオリジナルでもなく、ダンス教室の生徒の試演風。何とも物足りない感じ。

2.「Flower」藤田ユミ
 ベールを被って登場。上衣と下衣に分かれ、腹部は素肌。ストロボほどではないが稲妻風の照明が点滅する中、身体をベリーダンスのようにくねら せる。音楽は中近東とまでは行かないが、アジア風。走り回ったり横になって腹を震わせたり。ベールを取ってたなびかせる。転がって、民謡風の音楽 の中、立ち上がって終わる。15分間。
 衣装や振りに工夫は見られるが、もう一度見たい、次回の舞台を見たいと言うほどではない。中途半端な色っぽさはあるが、もう一工夫欲しい感じ。

3.「Earth and My place」清藤美智子・今給黎久美子
 ステージ奥にはウッドベース、大木をくり抜いたような、長い背もたれを持つ椅子。手前には青い水を張った透明なボウルに、蛇のように横たわる、恐竜の尻尾の化石の感じのオブジェ。
 暗転後、明るくなるとボウルの中に顔を突っ込んで、もがくほどではないがうごめく女性ダンサー(清藤)。顔を上げると客席から今給黎が入り、白布で彼ダンサーの髪を拭き、ベースに 向かう。清藤は四つん這いになったり手足を水に浸したり、壁に沿ったり。今給黎はベースを爪弾いたり駒の下で弦を引いたり。清藤、椅子に座る。「蛇」のそば に寝る。今給黎、ボウルを彼女の近くに置き、水を彼女の背中にかける。明るくなり、今までの雰囲気が一転し、主に背中を見せて踊る。ピアノのBGMにベースが重なる。白布を持ち、椅子に座って眠るが、すぐに起きて舞台を一周して「蛇」の上をジャンプして終わる。17分間。
 異色作。それは、予期できない内容、意味が汲み取れない内容、舞台設定・美術の大掛かりさなどから、同時上演の他の作品はもとより、私の知る作 品の中にも類を見ない、という意味で。特に、技術や内容を1、2と比べると、彼女達のはるか先を行っている感じで、部分的なダメ出しは通用しない、独自の世界 が展開されているように感じた。が、途中の明るい照明の中での踊りは、それまでと比べて「普通」であり、美術との関連が無くなる。それは、それまでを経ての成長、変身、脱皮を表わしているのか、解放、開花、本当の自分なのか。いずれにしても、つながりがあまり感じられない。
 そういえばボウルの中の青い水は地球であり、椅子は居心地の良い場所、と解説を読み直せば理解できるのだが……。

4.「うっ マンボ」うっちー(内田成美)
 全身黒タイツで登場。「マンボ!」と叫び、暗転。舞台奥からライトを持ち出し、マンボの曲で、主に床に寝て踊り出す。ステップやダンステクニックと言うよりはオリジナルの動き。部分的にはストリップショー的でもある。曲のリズムに合った、ややコミカルな動きもある。途中、スローな曲でストレッチ風。曲よりも早い動きになって終わり。10分間。
 面白さが中途半端な感じ。動きがオリジナルではあるが、逆にマンボ・ステップを取り入れた方が、衣装やキャラクターとの差異が出てコミカルになると思う。ライトを使ったのは有効。照らす対象を工夫すれば面白さ倍増だろう。

5.「デイドリーム・ビリーバー」箱入りオブラート(早川朋子、宇野あかり、石橋徹郎)
 長身の男性、箱を持って登場して「こんにちは!」と大声で挨拶。四角く歩いて「最終検査、合格!」。2回繰り返した所で、箱を渡す女性、箱を受け取 る女性の二人が登場。男性、箱を8個積み上げ終えて、立ったまま寝る。女性に起こされると、ここは「知られざる森」、忘れ去られたものが富士山の如 く積まれている場所と解説。そこで、二人の女性が、王と女王に成り変わって代理喧嘩をおっぱじめる。ウェストサイド・ストーリーの「クール」のシーンの真似。邦楽の歌振り。 男性一人になり、箱無しでオープニングと同じく一回りして終わり。
 今回の作品の中では最も面白かったが、ダンスパフォーマンスよりも演劇的要素が強い。面白くはあるが 、楽しさはそれほどでもない。

白ゆりバレエ教室おさらい会「クラシックバレエ小品集」 (6月7日掲載)
 2003年4月29日(火・祝)13:30〜15:30、ルネこだいら、無料
 開場15分押し。整理券が事前に、あるいは受付で発行されていたが、100番以降はほとんど意味が無かったのではないかと思われる。プログラムは、出演関係者だけにB4判二つ折りが配布済みの模様で、受付には置いていないとのこと。「おさらい会」という名称に一抹の不安を覚える。
 オープニングは出演者全員によるポーズ。良かった、ジュニアもいた。しかし先生がレッスンウェアでポーズというのはいかがなものか。

 第一部
 「スペイン」バレエにしては薄目の化粧。肩に力が入り過ぎているのが残念。
 「チャイコフスキーのパ・ド・ドゥ」バレエを始めて2年というナガサワ君、ピルエット3回転、ザン・レール(2回転)をあっさりこなす。落ち着いてバランスも良く、将来有望と思われる。
 「海賊」メド−ラのバリエーション。雰囲気がちょっと重い。
 全体的に化粧は薄目。緊張してはいるものの笑顔が良い。

 第二部
 「パリの炎」力が入り過ぎだが良い。
 「スワニルダのバリエーション」少々力強過ぎる感じだが良い。
 「黒鳥のバリエーション」ちょっと重い感じだが良い。
 最後に、このバレエ教室出身者の“すずきりな”による「ゼンツィアーノの花祭り」。全員によるフィナーレ。
 実質65分間。会場の雰囲気ともども、いかにも地元バレエ教室の「おさらい会」という内容だった。まあ、それでいいんだけどね。(いずれも一部のみ記述)

「NATIONAL TAP DAY 2003」 (6月4日掲載)
 2003年4月26日(土)19:00-21:15、新宿・シアターアプル、当日5000円、主催:ナショナルタップディ事務局、監修:瀬川昌久

1.市川ミサオ R3 TAP-HOLIC
 アカペラの手拍子を交えたリズムタップ。客席を左右半分に分けて、違ったリズムで手拍子。盛り上げたい気持ちはわかるが、最初のステージで、持ち時間の半分以上を使ってというのは、少々強引な気がする。

2.大高純子 JUN TAP STUDIO
 ジャズをバックに、黒と派手な衣装の組み合わせ。

3.伊藤夏子/Percussion/中村浩之介 スキップッポイ
 澄み切ったジャンベのリズムに乗って、カップルによる掛け合いタップ。ロックダンスも入った切れのあるダンス。

4.みすみ"Smilie"ゆきこ ARTN/藤林真理 Tapage
 今回の舞台装置としては移動するボード(壁)があるが、それらをうまく移動させて見え隠れしての登場。「チムチムチェリー」のジャズ、サンバのアレンジ。

5.吉野寧浩 J-CLICK《大阪》
 軽やかなリバーダンス。両手は下げたままのあの姿勢ではなく、結構使っている。

6.天野俊哉 佐々木隆子タップダンススタジオ
 ジャズピアノによる、早くて高度なタップだが、5人揃って同じ踊りで、フォーメーションの変化も前後の入れ替え程度なのが寂しい。

7.藤川誠 M'S TAP FACTORY
 アカペラに手拍子を加えたストリートダンス。

8.近藤千恵 スタジオブンブン 向井好一
 猫をモチーフにした、男女のじゃれあい的パフォーマンス。タップのテクニックよりも雰囲気、構成を重視した感じで、全体の中では異色。

9.穴田英明・松本晋一 TOKYO RHYTHM BOYS
 ジャズピアノによるアステア風の踊り。最近では少数派なってしまったスタイルなので貴重。

10.今西康之 STUDIO TAP 72
 よさこい風の踊り系ダンス。

11.中川裕季子 中川三郎総合学園
 白い椅子に座ってのタップ。

12.ナショナルタップアンサンブル
 22名によるショーダンス。これこそタップダンスの原点でしょう。

第2部
1.キッズアンサンブル
 17人の子供によるショーダンス。懐かしい曲による、曲の流れに乗った構成。これこそタップダンスの原点でしょう。

2.MAYOU funk a step
 ピエロ風、マイム風。

3.古庄里好 BOX MEN
 小さ目の、昔の駅の改札口を思わせる木枠に入ってのタップ。中でタップを踏むだけならどうと言う事は無いが、枠ごと身体の向きを変えたり枠ごと跳んだりと、今まで見た事の無いパフォーマンス。しかも、ちゃんとリズムに乗っていた。

4.白髭瑛 Hige PRO DANCE SCHOOL
 HIPHOPの踊りによるタップで、これも少ないジャンル。全員がタップシューズを履いているが、リーダー以外はあまり聞こえて来ない。

5.成川直人 加藤忠
 「TOKYO RHYTHM BOYS」と同系列だが、よりコミカル。堪能。

6.白井博之・眞由美 G・E‐JAPAN
 女性の歌に乗って男性が踊る、静かな異色作。

7.渡辺かずみ 加藤忠 成川直人 熊谷和徳
 バケツ・パーカッションなど、元気一杯、弾けた感じ。

8.橋本祥 SACHI'S T.D.T
 野球のユニホーム衣装で、練習風景を取り入れた異色作。

9.熊谷和徳 and Solebrothers
 トランペット演奏に、アカペラタップ。

10.冨田かおる 冨田かおるタップダンスカンパニー
 女性7人で、リズム感に溢れ、フォーメーションも工夫されている。

11.フィナーレ
 出演者紹介を兼ね、短時間ながら全員で踊る。いやー、楽しかったです。

「The Letter」 (5月13日掲載)
 2003年4月24日(金)19:30-、MUSEUM TOKYO、4800円、振付・演出:畠山慎一、主催:シムズ・ダンス・キッチン(24日-27日)
 当日券はチケットも無く、立ち見だった。靴を脱いで上がると、L字型の大きな部屋。角の部分が客席で、ステージは90度に分かれた2方向。
 まず、その一方の出入り口側のスペースにて始まった。一見、ぼろ布のような白い衣装。パイプオルガン風の音楽の中、2台の蜀台の蝋燭に火が灯され、“一人”は壁一面に作られた書架から何かの本を探している様子。他の3人はゆっくりと身体を動かす。まるで股関節が無いかのような脚の動き。上半身を少しも傾ける事無く、脚がスーッと上に上がる。一人は本を朗読し、徐々にに暗転。明かるくなると、3人は早いコンチェルトで踊る。床はコンクリートだが裸足だ。
 暗転後、他方のスペースではフラメンコが始まる。その右手では壁に沿って5人がうごめく。
 再び入り口側。二人は椅子を取り合い、その奥で二人が絡み合う。
 再び壁に沿って5人がうごめく。それはまるで、入れられた水槽の淵によじ登ろうとする蛙のよう。その横で、ゆっくりした動きからフラメンコへ。そこに5人が徐々に移動し、ユニゾンで踊る。
 入り口側。3人は本を探し回り、一人は鳥かごから羽毛を散らす。3人、ユニゾン。
 ここで20分間の休憩。観客は全員が外に出され、その間に客席の移動。5分送れて2部開始。今度は入り口側が客席。ここでやっと椅子に座れる。
 水琴屈のような音の中を男女二人がお互いに歩み寄る。女性は青っぽい衣装、男は黒(青木尚哉)。
 赤い衣装のペア。
 センターでソロ。徐々に加わり二人はコミカルな動き。ボイラーのような音楽。
 ソロ。とても柔らかい動き(金田洋子?)。
 交代でソロ。鼓動のような音楽で7人ストップ。それぞれ、ソファから封筒を持って来て、中から取り出した紙を見ながら各自が朗読。一人、うろつき、しゃがみ込む。皆に囲まれ、逃げ出す。朗読は徐々に怒鳴り声に変わる。皆、持っていた紙を赤い籠の中に破り捨てる。
 一人、ソロ、7人はソファに戻ったり踊ったり。一人ずつ「一人」に触れてはける。
 赤い衣装の男(JOEY)女、「ベニスに死す」?の曲でペアダンス。
 2部は衣装は地味だが色とりどり。全体の雰囲気は変わらないが、1部よりは大きい動きのハイレベルなダンスが見られた。身体は完璧なバレリーナ、動きはコンテンポラリーという感じ。
 会場の不思議な空間に、すぐ傍を走るJRの電車の通過音や、配水管を流れ落ちる水の音、どこかのカラオケ、通りの話し声などが薄っすらと聞こえて来る公演だった。

ひげ太夫第13回公演「烈々宙王(れつれつちゅうおう)」 (5月6日掲載)
 4月20日(日)18:00-19:50(16日(水)-)、こまばアゴラ劇場、作・演出:吉村やよひ
 濡れ衣を着せられ身の潔白を晴らそうとする爆嵐、王国を抜け出したサワジ国王、邪の神、羊飼いなどが入り乱れての冒険活劇。何故、粗筋が書けないかと言うと、ややこしいのだ。
 道具類は一切使わず、身体とアクション、ト書き風台詞や擬音、擬態語だけで、場所や状況を説明するという異色劇団だ。人間ピラミッド、人間ブロックなどがスピーディーに展開される。切り立った崖での様子など、アングルを変えて繰り返されるサービス振り。しかも、全員が女性で鬚を描いての男性役。3公演ぐらい前からチラシを見て引かれていたものの都合が付かず、ようやく見ることが出来たのだが……。
 その素早さ、人間造形には圧倒されるのだが、芝居として見た場合、あまりにも騒々しい。ひっきりなしに続く台詞は疲れる。出演者達はもっと疲れているのだろうが、見ている方も疲れる。もう少し緩急のメリハリが欲しい(歳のせいか?)。
 ラストの、リハーサル時のNGの再現演技は他には類が無く新鮮。
 それにしても、本番二日前に片足を骨折していながらそれを感じさせなかった座長には頭が下がる(座員のバックアップあってのことだが)。予定の3段重ねの組み体操は見られなかったのは残念だが、順調な快復を祈る次第である。110分。

LOCK ON2 (5月6日掲載)
 2003年4月20日(日)14:00-17:40、赤坂ACTシアター、前売5000円、主催:(有)オフィス・ムーブ、TBS
 ここは監獄。舞台カミシモに建てられた監視塔からは、サーチライトがあちこちを照らしている。その間隙をついて、舞台前方(オーケストラピットに当たる所)から10人の出演者達が紹介を兼ねて次々に顔を出す。彼らはこれからロケットに乗って脱獄するのだった。ところが着いたのはどこかの小惑星。どうすれば帰れるのか見当もつかない。そうこうする内に、地球に戻ったら何をしたいか、お互いに夢を語り合い、それらがダンスで表現される。
 さて実は、ここはオルデラン星で、レイア姫たちはダースベイダーに苦しめられていたのだった。デススターを破壊すべく、彼ら脱獄者たちも手を貸すことになるが……。
 足にライトをつけてのヘッドスピンが斬新。つまり、この舞台のダンスはブレイキングなどのストリート、HIPHOPが中心で、ストーリー展開と共に、そのシーンや雰囲気をダンスで表現する内容構成である。
 地球での夢に「夢」が無い。例えば、レーサーはともかく、3人は何で工事人夫なのか。二人は何で遊園地遊びなのか。もう少し夢らしい夢を語ってもらいたかった。
 後半の内容は、あまりにも「スターウォーズ」べったり過ぎないか。もう少し独自性が欲しかった。
 何と言っても3時間半は長過ぎる。それも、面白くてあっと言う間、ならともかく進行と無関係のギャグが盛り沢山が原因の一つ。ファンにとってはそれも楽しみの一つなのだろうが、半分程度の数で良かっただろう。
 しかし、主役ダンサー、及びゲストダンサー達の実力は、多少優劣はあるものの上位クラス揃い。誰一人知らなかったのは不勉強であった。

シアター21・フェスSTEP UP 2 vol.1 (5月5日掲載)
 2003年4月19日(土)19:30-、セッションハウス地下スタジオ、前売2300円(当日2500円)
「5人のやさしい日本人」(お宝フィンガー巣)
 5人の早い動きから始まる。二人は抱き合い、ユニゾンの二人にもう一人が加わる。バラバラになったりユニゾンになったり。
 3シーン目は、二人がテレビゲーム本体とリモコンを持って登場。と言ってもデジタルな動きをする訳ではない。
 全員、スケッチブックを持ち出し、客席最前列の子供をスケッチし始める。普通に会話しながら、ただスケッチするだけ。これは、ダンスとは言えないし、パフォーマンスとしてもどうでしょうか。
 最後はクラシックの曲で踊って終わり。
 動きや身体の表情、ダンステクニックはそれなりに綺麗だが、振りや構成にはあまり魅力を感じなかった。グループ名からはもっと面白いものを期待したのだが……。今後に期待したい。30分。

「ムーチョ・ユビキタス」(惑星Q)
 壁にへ張り付いて身体を揺らし、身に着けた鈴を鳴らす。
 コートを頭から被った一人がカミ手奥から手前に向かってかがんだ姿勢でゆっくりと歩く。照明が明るくなるとコートの中から羽毛をばらまく。そのままシモ手を経て奥に向かう途中、コートの中から音楽と、トニー谷のような話し声が聞こえて来る。そのままカミ手奥へ。
 オルガンの曲。ダンサー、身体をかきむしって寝る。二人は目が見えない役割のよう。
 オルガンの音が止まり、コートの人物が起き上がる。
 4人は、冒頭と同じように再び壁にへばり付き、震え出す。
 それなりに工夫は感じるが、舞台周囲を怪しく歩むコート人物は、結局何なのか。彼と中央で踊るダンサーの関係は何なのか、不明。30分。

「瞬間」(CST)
 ブギーワンダーランドでHIPHOP。ロックダンス。ぼろ着で7人がジャズ、HIPHOP。
 動画と言うよりはスライド的コマ落ちの映像にかぶせて、詩の朗読。
 鞠がシモ手て袖から転がって来る。
 赤いワンピース姿に、椅子を使ってのジャズ。
 黒い衣装でぴったり揃ったロックダンス。
 HIPHOPでフィナーレ。
 という内容は、ほとんどが1月25日の「LA COMBINAISON」と同じでした。が、狭い舞台、数メートルの近さで見るのは、また新鮮なもの。先の2グループとは別分野で、セッションハウスでも珍しいダンス。35分。

第15回「petit Students' Dance concert 2003」 (5月1日掲載)
 4月19日(土)13:00-、国立オリンピック記念青少年総合センターカルチャー棟大ホール、1500円、主催:青少年舞踊研究委員会、企画・制作:アンクリエイティブ

 「趣味人」茶、黒の地味な衣装に、地明かり的照明。これでは舞台効果があまり感じられないが、その後の作品も同様なのは劇場の制約、特性か。ダンスは、いかにもというジャズ。

 「MUKU」モダン、ソロ。音に合わせた動き。表現にあまり意味が感じられない。

 「PLATINUM」和服風の上衣に、パンツの下衣、小道具に扇子といういでたち。曲も和風。

 「アジサトバレエスタジオ」パ・ド・ドゥによる静かなバレエ。リフトで気を揉ませたが、全体的にはバレエの雰囲気が楽しめた。

 「趣味人」赤いワンピース。

 「BLU-NAZI」2段の小さな階段に、横向きに腰かけた女性、立ち上がって一踊りしてカミ手にはける。すると階段の向こうから姿形がそっくりの女性が起き上がり、同じようにカミ手にはける。今度はシモ手から、また姿形がそっくりの女性が現れ、えっ、何人いるの? と不思議な気がする。結局、よく似た二人が踊っているのだった。
カウボーイハット風の帽子に、フリルの付いたスカートをパンツに重ね履き。なまじ出演者を知っているだけに、どっちがどっちなんだろう、と余計な詮索をしてしまう。発表会での親の気持ちと同じか。前半、意表を突く不思議な展開だけに、後半の踊りが普通に見えてしまった。ラストはもう一捻り欲しかった、と言うのは贅沢か。

 「味彩」HIPHOPがうまい。

 「Junoesque」HIPHOP。最後は黒い男装4人とのダンスバトル。

 「PLATINUM」燕尾服型の白いワイシャツ風に黒パンツ。動きがあまり曲と合っていない感じ。

 「LOADED」オープニングとラストは無音。三人の男性とも、全体的にダンスは上手い。基本的にはジャズだが、モダン的要素もあり。群舞としては最も見応えがあった。

 出演者全員でフィナーレ。ホールの舞台横の壁が鏡面仕上げになっており、反射が邪魔である。約85分間。

ポカスカジャンの脱線音楽祭スペシャル版「ドレミファおやじは歌う」 (5月1日掲載)
 2003年4月18日(金)19:00-21:30(20日まで)、新宿シアターアプル、前売3500円(全席指定)、制作:ワハハ本舗
 出演は、ポカスカジャン3人と、バンド「バンバンバザール」+杉浦哲郎。まず、彼らを紹介する言葉に笑ってしまう。「尊敬するミュージシャン、軽蔑する友達」。
 その後の演目を並べてみよう。
 東北弁のシャンソン(実にそれらしく聞こえる)、3年目のマイケルの真実、タマちゃん(神出鬼没のアザラシではなくメンバーの玉ちゃん)ネタ自己紹介ソング、ポカスカ宗教メドレー(何人かは信者が来ているだろうに。まあ、棘が無ければギャグは成立しないからね)、早口言葉、レゲエフリージャズ、台詞ドラマ・渡る世間は鬼ばかり、武田鉄也ネタ、浜田省吾ネタ(滑った?)、さだまさしネタ、着ぐるみのガリガリ君登場、加川良。途中で「大魔神」の装いをした経理部長による弾き語りがあるのは何とも言えません。25分間にわたる親父有難うソング(長いのはともかく、あまりにもプライベート過ぎて、しんみりしてしまう)、監獄ロック、サーフィン与作、剣の舞チャックベリー、ベンチャーズホテルカリフォルニア、おふくろサッチモ、ゴスペル親父の海、オフコース小錦等々、笑わせてもらった。
 パフォーマンスと言うよりは、寄席芸的な面白さでしょうか。

ウズメの人でなしレビュー!! 第6弾「サイケとバラバラの日々」 (4月28日掲載)
 4月17日(木)19:00-21:30(20日(日)まで)、青山円形劇場、作:色羽“V”紫、構成・演出:松田道徳、振付:田中“H”浩子、前売り5500円(全席自由)、制作:魁分舎
 レトロな色調の出演者の写真が、大きな掛け軸となって周囲の壁に掛かっている。
 オープニングは、逃げる怪人80面相とそれを追う小林少年。80面相がマスクや衣装を剥ぎ取ると、鉄腕アトムだった。しかし「2003年、アトムは誕生せず」と宣言。
 さて、「ウズメほのぼのファミリーランド」にやって来たのはウラン一家。犬役?のパトラッシュ、母親役のセーラームーン、祖母役のイライザ、妹役のキャンディキャンディ……実は虚構家族なのだ。今日は離婚した父親と会えるのを楽しみにしているウラン。しかしその父は来る気配が無い。父の仕事は何か、離婚の理由は何なのか……。
 理想の家族を求めるウランに与えられるのは、厳しい現実。彼女が描く家族は、果たして存在するのか。
 クイズ形式のニューマザー度テストや、ジュークボックスバトルが繰り広げられ、寺内貫太郎一家をモデルとするアッタカカサンアサゲ家族vsニューファミリー家族ミセスプジョー。
 動物夫婦ファミリーコーナーではおしどり夫婦のオシドリとワニと蛙のカップルがそれぞれの結婚生活を披露。
 上海リリーは近代父親像をショーとして展開。80年代マリンパパ、90年代バブリーパパ、2000年ダンディパパ、そして2003年はビジュアルパパ。
 花嫁の挨拶、しかしそこに集うのは父親とその愛人、離婚した妻とその夫という複雑さ。
 家族とは何か、その理想の姿は、そして現実は、と色んな家族が次々に展開される。
 最近の舞台は、長々と早口で理屈をこねるパターンが続いていたが、今回は見れば解るという感じで、円形舞台を上手に利用した、スピーディーな展開を楽しめた。逆に、あまりの早や替えに追い着かず、汗は流れ、ヘヤスタイルは乱れ、衣装は中途半端という部分もあった(初日のせいもあろうが)。
 途中に挟まれる歌と踊りは、程好い気分転換と息抜きではあるが、何度か出て来る80面相と小林少年のやり取りは、本編とは拘わり無く、あまり意味が感じられない。まさか、衣装替えの時間稼ぎという訳でもあるまい。
 理想家族の夢を捨て切れない切ない少女・ウラン役の柏原U由佳が好演。

芝居「桜の樹の下で」 (4月23日掲載)
 4月16日(水)19:00-20:55、シアターX、演出:永井寛孝、出演・制作:コメディ オン ザ ボード
 桜祭りの開催を約1箇月後に控えた川島町では、出演者達が練習をしていた。テキヤの司会、その弟子のジャグラー、二人の老婦人と女性編集者による歌謡漫談「トリオ・ザ・サクランボ」など。踊りを披露する予定の町会長は、20も年下の看護師とのハネムーン準備に追われて早々に立ち去る。
 その後も、トリオの練習は繰り返されるが、老人ぼけのために遅々として進まない。
 そうこうしているうちに、沙汰止みになっていた町の再開発の話が急に持ち上がり、住民達は練習を続けながら再開発反対運動も始めるのだった。
 川向こうには遊郭があったという下町の、使われなくなった銭湯で繰り広げられる住民達の人間模様である。桜祭りの練習に再開発反対の住民運動を絡めてはいるが、練習する老婦人のボケギャグが中心で、そこに女性編集者への実らぬ恋や、会長夫婦の土産騒動をまぶした感じで、住民運動はさらりと済ませている。町興しのために芸術家を呼ぶ計画とか、取材を続けながら住民の暮らしに溶け込もうとする女性編集者など、様々な要素があるものの、その豊富さが総花的となり、話の展開に今一つ盛り上がりに欠け、平板な印象だ。ある出来事が騒動を呼び、別の出来事がそれに拍車をかける、或いはどんでん返しなど、もう少しドラマ性が欲しかった。
 さて、老人のボケ振りとしての物忘れや勘違いによる可笑しさや、嘘泣きや撮影前の化粧などで笑わせてくれ、ボケ老人のネガティブな面は描かれていないのが、コメディたる所以だろう。知恵遅れの男性も、虚を突く言動が笑いを誘うが、必要だったかどうか疑問に思った。しかし、自分の子供の頃を振り返ると、老若男女はもとより、貧乏人や金持ち、身体障害者、ルンペン(昔は乞食と言った。ルンペンも死語か)、大都会からの転校者、ガキ大将にガリ勉など、色んな人が身の回りにいたことを思い出す。子供もいればなお良い舞台になったことだろう。
 タイトルの「桜の樹の下で」は、町内に子供が生まれるたびに植樹した桜の樹が、再開発と共に切り倒されてしまう寂しさを誘っている。遺跡保存を始め、有名建築家による建物の保存や町並み保存、または行政区の合併による地名の消失など、色々連想を引き起こす作品だった。
 それにしても何かと言えばハーモニカ、というのは、今時、という気がしないでもない。
 石原(藤原常吉):会長に反発する理由があまり感じられず、不自然な感じ。酔いも足りない。
 おさむ(永井寛孝):化粧のせいもあろうが、普段のイメージとは違った顔作りになっていた。どことなく知的障害者らしい雰囲気があった。
 しおり(太田寸世里):ヘヤスタイルが看護士(看護師?)らしくない。妻役としては、独りコントでやる独身OL役のイメージが邪魔をする。

「火呼人(ビヨンド)〜焼くなら死んでからにして生きてるうちは熱いから〜」 (4月23日掲載)
 4月14日(月)19:00-20:50(10日-14日)、こまばアゴラ劇場、作・演出:トクナガヒデカツ、企画製作:X-QUEST
 舞台には松明用のスタンドようのものが七つ。地下から男三人が現れる。しかしそこも太陽の無い世界。彼らは出口を探すが、そこに悪魔と天使の女性が二人現れる。
 出口探しをしながら、最後は光を求めて太陽を作ることになる。その間、マッチ売りの少女、スパーレンジャー戦隊(何故か全員がモモレンジャーを名乗りたがる)、タカシの話、オズの魔法使い(ロボット、案山子、臆病なライオン)、迷子の子猫、酒と涙と男と女、学校、避難訓練などのエピソードが繰り広げられる。ギャグのオンパレードという感じ。脱出劇はどうなったんだ? しかし何と言っても圧巻は全員による早口言葉だろう。何でここで?、しかも長過ぎる気もしないではないが。
 そして最後は原子の火を作るのだった。これすなわち火を呼ぶ人なり。
 例によって、早過ぎる台詞に脳が拒否反応を起こしてしまった。何だか、覚えた台詞を忘れないうちに一気に喋ってしまおう(そんなことは無かろうが)と思えるような話し振りで、じっくり噛み締める余裕が無い。台詞と同じくスピーディーなダンスは、これまた例によって見応えがありました。
 口角泡飛ばすトクナガヒデカツ、能天気(そう)で明るく天真爛漫な小代恵子、とぼけたキャラの市川雅之、そんな中では普通っぽい佐藤仁美、伊勢直弘でした。

映画「帰ってきた刑事(でか)まつり」 (4月15日掲載)
 4月7日(月)レイトショー(4月18日まで)、シネマ・下北沢、1000円、監督:文中( )内、制作:カリフォルニア・ドールズ、配給:コムテッグ

 「壱、主人公は女刑事であること! 弐、完成尺は十分を一秒でも超えてはいけない! 参、本編中に最低でも五回ギャグを入れること!」を掟にした短編映画の競作である。時間的制約もあったのだろうが、勧善懲悪の正統派デカは一人も登場しないので 、逆に、そういう作品が一つぐらいあってもよかった。
 警察手帳を見せると200円割引という企画が面白い。http://forum.nifty.com/fcinema/dekamatsuri/

「絶好調刑事」(鈴木浩介)
 張り込みをする刑事二人。そこに女性デカ(秋本奈緒美)が応援に駆けつけ、刑事の一人(諏訪太郎)をヅラ(かつら)と見破るが、口には出さない。彼らに気付いた犯人(遠藤憲一)は逃げ出し、公園に追い詰められるが、人質を取って抵抗する。そこで犯人もデカのヅラに気づき……。
 緊迫した空気の向こうでは、小学生が散歩し、ベンチで日向ぼっこしている人がいるというのは偶然なのか。それはそれで笑える。ヅラを外した瞬間に100人ほどが押し寄せ、頭を撫でて祝福する様は圧巻。しかし何が絶好調なのかは不明。

「発情女刑事」(吉行由美)
 命を懸けてホシを追おうとするデカをテレビドラマで見た少女は、発情を覚え、やがて成長して女性刑事(林由美香)になる。犯罪現場や警察用語を聞くたびにに発情し、遂に憧れていたデカと殉死し、天国で結ばれる。
 これだけ事ある毎に発情していれば、捜査は勿論、一般生活にも支障を来すだろう、それはそれで徹底しているので面白い。やはり、犯人を追い詰めた公園では子供が散歩している。

「はぐれちゃった刑事」(是枝裕和)
 トイレ。何故か傾いて小便する先輩デカ。用を足して遅れて外に出た後輩と女デカ(岡元友紀子)は、先輩に取り残され、走行中の乗用車を強奪して都庁に向かい、都知事にサインをもらったり、不良高校生と絡んだり。やがて先輩は、有名デカの物真似をしながら戻り、傾いて小便する後輩を見て一人前と認める。
 はぐれからといって特にハプニング性は無く、盛り上がりに欠ける。先輩とはぐれた時点で終わっている感じ。

「姦刑事」(瀬々敬久)
 アパートの部屋で空中浮遊に励む男。その目の前のベランダでビキニ姿で洗濯物を干す女の尻に欲情して襲いかかる。それを遠くから監視するカップルのデカ。アパートの男は爆弾魔だったのだ。物干し女は実はセクサロイド。とは言え彼女の危機を救うべく、見張っていたデカも駆けつける。しかし男の作った地球儀爆弾が作動してしまった。
 生身の女デカではないところがミソだが、実は一緒に監視していた女デカ(佐々木ユメカ)もセクサロイドだった、というのが落ちか。

「アトピー刑事」(井口昇)
 グロテスクな死体を目の前にして弁当をむさぼる女デカ。彼女の左頬には赤いアトピーを抱えるているが、心象を害するとそれが顔全体に拡大してしまうのだ。彼女と一緒にチームを組む男性デカは、そうならないように気を使うあまり、捜査よりもご機嫌取りに精を尽くす始末。
 彼女に土下座して、上げた額に吸殻が付いているシーンは笑った。吐瀉物による死体検証シーンは気持ち悪い。果たしてこの作品、デカ映画と言えるでしょうか。どちらかと言えばホラーかと思われ。

「背徳美汁刑事」(本田隆一)
 法で裁ききれない犯人を始末する女デカ(中原翔子)。つまり、セックス後の強烈な“潮吹き”が男を惨殺するのである。20年振りに再会した男(遠藤憲一)も例外ではなかった。しかし、彼と交わってもその武器が使えない。初めて本当の恋をしてしまったのだ。ところが男にも武器があった。実はそれが理由で、惚れていた彼女に告白できなかったのだ。そして二人は壮絶なバトルの後、悲しいラストを迎える。
 これで全てが終わったかのような雰囲気の後、その部屋のカーテン裏で二人の結末にすすり泣く上司に爆笑。とんでもない荒唐無稽さを人情味で閉めるはお見事。

「地を這う十字剣刑事」(塩田明彦)
 その昔、ある村を支配した闇の勢力は退治され、鉄の爪で封印された。しかしそれを解く者が現れ、闇の勢力が復活した。妹を探して、たまたまその村を通り掛った二刀流の女デカ(この設定が既に苦しい)を襲う闇の勢力。揉め事は避けたいが降りかかる火の粉は払わねばならない。ところがその妹は闇の勢力の手下で、ボスに殺されていたのだった。復習に燃える女デカ。
 鉄の爪とは、映画「燃えよドラゴン」でハーンが残したアレである。女デカに差し向ける刺客にも、映画の出演者写真が挿入される。素人っぽい作り方だが、素材や構成は個人的には好きだ。

「キューティー刑事」(松梨智子)
 大阪から女デカが赴任して来た。同じ女性の目からはどう見てもブス。しかし男にとっては、甘ったるい可愛娘ぶりっこ振りがとても魅力的で、署内で大人気。荷物も持ってもらえるし、捜査の囮にもにならずに済む。そして遂に結婚までしちゃったのだ。
 女性の目を通してのブスデカのラッキー振りの描写が面白い。可愛いこちゃん優遇社会への皮肉とも受け取れる。

「ぱいぱん刑事」(新藤風)
 ここは子供天国。おとなは子供に従わなくてはならない。陰毛を生やしている大人はけしからん存在なのだ。子供裁判でお仕置きだ。しかしそんな子供も初潮を迎え、大人になる時期が訪れた。素っ裸で堤防を走る女児。確かにぱいぱんだ。それを横目に木の枝で首を吊る男。
 子供が主役だからお子様向けかと言うととんでもない。アイデアではあるが、苦しい。最後の自殺シーンが意味不明。

「子連れ刑事」(安里麻里)
 乳母車を押して歩く、サングラスに赤いコートの女デカ(宮田亜紀)。堤防やガード下で何物かに銃撃されるが、乳母車に乗った子供(突き出した手からは大人の男としか思えないが)の援護もあり、難を逃がれる。買い物中のスーパーでは、パック詰めの肉を乳母車に引き込んで貪るさまは怪物風。再び堤防で襲って来たのは片目の男。二人は倒されてしまうが、乳母車は置き上がり、男を追いかけて行くのだった。
 「子連れ狼」のシチュエーションを真似ており、振りかかる火の粉を振り払う役どころ。何故狙われるのかは不明で、デカとしての捜査もしない。これも素材や構成としては面白い。

「DANCEPAS2003」 (4月10日掲載)
 4月8日(火)19:00-、天王洲・スフィアメックス、当日3000円、制作:東京ダンス機構

「We are Arice」(Moving Water)
6人がそれぞれのポーズで固まっている。そこに首から時計を下げた7人目が現れ、一人にアプローチしてはけると、皆も続いてはける。
 再び時計を持った女性、今度は耳と尻尾を付けて兎のようす。続いてそれぞれのダンサーが交代でソロ。
 白衣装の女性。ガムラン風の音楽。
 ロングヘヤーの女性。マイム風。フランス語講座風の音声によるソロ。
 黒い衣装の女性はおどおどした動きでちょこまかと踊り、歩く。
 丸虫のように転がって出て、雑巾掛け、犬のようなソロ。
 黄色い衣装の女性は元気良く体操風。
 頭から出て来たぶりっ子っぽい衣装の女性は壁を意識しつつ何かを探す。ミュージカルの一シーンのようでもある。
 オープニングでは、何らかの展開を思わせたが、結局、一つの作品としてはまとまらず、それぞれの個性の共演という感じで終わった。約30分。

「かごめ」(夢姫)
 ステージ手前で鶴を折り続ける母子。奥には4個の大きなこけし?風オブジェ。
 その真ん中で、リバーダンス風の音楽で女性二人がユニゾンで踊る。濃いメイクは舞踏のようでもある。爆撃音で暗転、明るくなると母子は倒れており、一旦はけた二人は赤色の布をまとって登場。炎の象徴か。やがて二人は叫び声を上げ、おののく。
 わかりやすいと言えばわかりやすいが、母子が倒れるまでの、前半の二人のエネルギッシュな激しい踊りは何を表現していたのだろうか。10分。
 さて蛇足。途中で「かごめ」が歌われるがその中の歌詞が気になった。「鶴と亀とすべった」と歌われたのだが、ここは「鶴と亀がすべった」と記憶している。後日調べてみると両方あり、しかも「つるつるつべった」というのもあるらしい。「鶴と亀がすべった」よりは「ツルツル滑った」の方が意味が通りやすい。未だに謎の童謡の一つである。

「The Memorial」(Be-JaM)
 マーサ・グレアム風の黒い衣装に長い髪の女性ソロ。音楽は琴などによる邦楽。
 やがて7人と交代。やはりグレアム風だが、透かし彫りのような荒い刺繍入り巻きスカート。しもて手前からかみて奥に、ステージを斜めに位置する。その後5人は円周上に並び、二人はセンターで踊る。かみて奥に集まり、手を上げてうごめく様は、水槽の隅に群がるドジョウのよう。一人がのけ者風にセンターに送られ、ソロ。次々と交代する。初めの7人のフォーメーションに戻り、徐々に変形し、寝転んだり、腕を上げたり、反ったり。
 結局、冒頭のソロ女性とは絡まず、二つの作品のよう。後半は、形の変化は楽しめたものの、何を言いたいのか不明。30分。

第2回バレエコンサート「青い鳥」 (4月10日掲載)
 4月6日(日)17:30-、リリア(川口総合文化センター)メインホール、全席指定1,500円、プログラム500円、主催:原田富子バレエスタジオ(17:35-20:00)
 クリスマス・イブの夜、ベッドに入ったものの、中々寝付けないチルチルとミチルは、隣りの家から聞こえて来る楽しそうな賑わいが気になってベッドから起き出す。そこに真っ赤な頭巾の老婆が現れ、自分の代わりに青い鳥を探すよう、二人に頼む。渋る二人に、老婆はダイヤモンドの付いた帽子を与える。チルチルがそのダイヤを回すと老婆は女神となり、青い鳥を探す旅に出るように促す。光や火、水、砂糖などの精と共に、二人は鳥かごを持って……。
 冒頭、隣家から聞こえて来る音楽は「くるみ割り人形」。窓を開ける(マイムをする)と音が大きくなるという凝りようだが、曲から連想するイメージを考えると、一般的なクリスマス音楽の方が良かったかも知れない。
 いろんな場面が展開され、それぞれに工夫は凝らされているが、終盤へ向かっての劇的さや盛り上がりに欠ける。場面が変わるごとに幕が下り、その前で、旅を続ける一行の様々なやり取りが展開されるが、その時の曲はもう少し冒険的な方が良かった。
 四つの鍵を貰ってドアを開けて行くが、三つ目のドアに入った後に聞こえて来る戦争の音は、意図はわかるがあまりにも現代的過ぎて、気持ちが舞台から離れてしまう。
 森の場面では、植物的な衣装で、森の雰囲気がよく出ていた。
 墓地のシーンではロマンチック・チュチュの6人が出て来るが、トゥでなかったのが残念。もっと浮遊感が欲しかった。リスなどの小動物の出番は、ここよりも森の前半が良かったのではなかろうか。
 幸福の国では着飾った貴婦人達の飲めや歌えやの世界。一行も惑わされてしまうが、豊かさとは何かを考えさせられる。目的を失った時に目を覚まさせてくれるのは、光の精、つまり箴言者であり、鳥かご、つまり目的であろう。
 花園のシーンは曲がとても美しく、何となくミュージカルの雰囲気。
 未来の国では青い色で作られた様々なものが出て来るが、それらの持つ意味がわかりにくい。
 二人が目覚めた時はもう少し朝の雰囲気が欲しい。
 光の精・尾崎友香の表情が良い。
 老婆・女神その他の須藤梨沙には大人の風格がある。
 全体的には発表会というよりも公演という感じで力作だったが、数年前に見た「コッペリア」に比べると今一つ感動が薄かった。
 さて、このバレエでは、夢から目覚めた我が家のシーンで幕が下り、出演者と客の一少女とのやり取りで終わったが、実は私はこの話を読んだことが無かったので調べてみると、原作ではその後訪れた隣家のシーンがあるらしい。一見、子供向けの童話だが、読めば読むほど色んな象徴が込められ、思考を引き起こす、哲学的な作品らしい。これを切っ掛けに読んでみたいと思った。

「Kei Nakanoクラシックバレエアカデミー発表会」 (4月9日掲載)
 4月5日(土)、17:30-20:15、文京シビックホール大ホール、中野バレエ教室(文京区本駒込)
 プログラムを見て呆然。ほとんどの出演者が子供である。お遊戯のような小品集を幾つも見るハメになるか、と気が重くなったが杞憂だった。
 最初の「Harry Potterより」は30分間の創作バレエで、技術的にはともかく、出はけを含めて、ステージ一杯に繰り広げられるフォーメーションの数々は見応えがあった。ほぼ全員が例のとんがり帽子を被っているので、親御さんとしては我が子が探し辛かったかも。
 「Billy the Kid」は、カウボーイハットを被った10名の女性ダンサー達に何度も自己アピールを繰り返すものの、全く相手にされないキッド、という多少ストーリー性を持たせた作品。どことなくバランシンの雰囲気を感じた。キッド、その他を踊ったたった一人の男性・石田浩三は、技術的にはまだまだだが、動きが安定しており雰囲気も良く、将来性を感じる。
 抜粋ながらも、発表会で「La Bayader'e」を見たのは初めてである。「水がめのバリエーション」では、壷が頭に接着されているのではないかと思うくらいに安定していた。ガムザッティ(武井美穂子)も、高岸の相手として遜色無かった。「4人のバリエーション」の4人のソリストも良かった。
 男性ゲストダンサー、高岸直樹(ソロル)は、久し振りにダイナミックさを堪能した。木村秀樹は華奢で、少々影が薄い感じ。佐藤利幸は筋肉質で、少し重い感じ。
 フィナーレはクラシックのディスコ・バージョンで順番にご挨拶。

「石田種生の世界II」 (4月7日掲載)
 4月2日(水)18:30-、新国立劇場中劇場、4000円、主催:東京シティバレエ団

舞踊詩「まほろば断章」
 舞台奥に大きな柱。バックには大きなスクリーン一面に渦を巻いた墨絵の映像(以下、バックは全て映像)。一見すると巨大な竜にも見える。舞台空間は巨大な伽藍のようだ。
 その前で14名によって繰り広げられるダンスは、バレエの基本的なパの組み合わせで、何となくセンターレッスンのようでもある。衣装は、照明のせいか、やや青味がかった白い全身タイツ。音楽は雅楽だが特に日本的な振りという訳でもない。約20分。

「伝説」
 バックは波が押し寄せる海のようだ。西洋音楽。16人の群舞の中で一人の女性(安達悦子)が羽衣をまとって踊る。そこに現れた上半身裸の男性(佐藤雄基)が彼女に気付いて近付き、羽衣を奪う。やがて二人は祝言を挙げるが、女は男が寝ている隙に身に着けている羽衣を取り返そうとして見つかり、絞め殺されてしまう。男は大いに後悔し、彼女の亡骸と踊った後、羽衣で引いて去ろうとするが亡骸は消えてしまう。その周りで3人の女性が軽快な曲で踊るが、状況から違和感を感じる。ラストは4人の女性が羽衣を広げて持ち、男はその下に沈んで行く。まるで海に沈むかの如く。
 男と引き合った羽衣が首に絡んで締め殺されるという女の死に方が呆気ない。それに反してグラン・パ・ド・ドゥのコーダのような男の嘆き方があまりにもオーバーに思える。終盤、寝転んで反り返る女性群舞の仕草が、波のようでもあり魚のようでもあった。約25分。

「妖」−−なよやか
 舞台上手には七つの提灯が縦に吊るされ、下手には逆三角形のオブジェ。中央には立方体があり、それを挟んで二人がシンメトリーに踊る。それぞれの背後には一人ずつが横たわり、立方体の向うから更に一人が現れる。黒い全身タイツの彼女達4人の顔は縦に半分は白、反面は黒、一人は中央が黒でその脇が白い。これは人間の二面性、多面性か。
 発表会の小品風のような、段取り風の動き。衣装が黒く、照明も暗いので動きがわかりづらい。そういう地味な色合いに無機質さを感じるが、それに反して曲や動きは軽やか。約15分。

「ヒロシマの残照」
 文字通り頭までの全身が白い女性(安達)がのた打ち回る。徐々に舞台前ににじり寄るが、動きが音楽に合わせ過ぎる感じ。かみてに、同じく全身を白い包帯で包まれた人形(「かごめかごめ」を途切れ途切れに歌う声から少女か)。当然動かないが、女性はそれを見つけると引き寄せ、いたわりながら歩かせ、背に乗せて馬となって立て膝で歩き回る。2週して息絶えた我が子(?)を抱きしめて暗転。約30分。
 この役、動きからは、バレエダンサーである必然性をほとんど感じない。ヒロシマの悲しみを表現しているのだろうが、出口が無い感じで何とも重苦しい作品である。約10分。

「女面 ―光と影―」
 バックに能面(女面)の目の部分だけが四角く映されている。その後も能面が部分的に、或いは全体が映される。後頭部に狐のような面を着けた黒い全身タイツに白手袋の群舞。黒と白の対称的なペアダンス。白、黒の男が現われ、それぞれカップルに。二組はユニゾンで踊る。群舞もペアで踊る。
 音楽やフォーメーションから、どことなく「春の祭典」を連想する。最後は白い女、生贄のように群れの頭上に。約30分。

 鑑賞直後は、予想していたほど日本的な印象は無かったが、数日後に振り返ると、日本的な古さを感じる作品群だった。観客の年齢層は全体的に比較的高かった。

「忘却という神話」 (4月3日掲載)
 3月29日(土)19:35-20:45(会期:27日-31日)、世田谷パブリックシアター、当日3階自由席5000円、出演:白河直子、奥山由美子、菊池久美子、木戸紫乃、泉水利枝、小林史佳、構成・演出・振付:大島早紀子、主催・企画制作:H・アール・カオス/有限会社東京アートファクトリー
 H・アール・カオスを初めて見たのは2001年の「神々の創った機械」で、この年ナンバーワンの作品だった。同年、このカンパニーは朝日新聞主催の「朝日舞台芸術賞」の舞台芸術賞も受賞しており、自分の中では常に完売、満席という思い込みがあったが、開場と同時に自由席に向かったのは5、6名だった。全体でも7割程度の入りか。
 舞台中空に空いた小さな四角い穴から逆光。背中に天使のような羽をつけた白河がうごめく。穴から続く階段を下り、上半身裸に。羽ばたく仕草。天上人か。白っぽい髪に半裸体だけで十分に異質化されている。何も、羽を付けなくても良いと思うし、その後の展開でも、特に浮遊する役でもなかった。
 四角い穴に戻って奥に消えると、三方から手が伸び、やがて姿を現した6人の彼女達は、その小さな穴の中でもつれ合う。それはあたかもルネサンスの宗教画を見るようだ。
 足を踏み鳴らし、一人がステージに転げ落ちる。穴では一人残った女性が手にした本の1頁を破り捨てる。
 明るく照らされたのは、舞台を手前と奥に仕切る壁。そこに六つある内の四つのドアが開き、その奥で二人がユニゾンで踊る。ドアの向こうも明るく、別の世界がある。
 更に一つのドアが開き、ダンサー達はドアを開け閉めしながら、紙吹雪(雪?)を抱えて手前に飛び出し、雪をばらまきながら踊る。紙吹雪は積もるくらいに多く、ダンサーの動きで起こる風が小さな竜巻を呼ぶ。
 白河、雪の中でソロ。壁は奥に下がり、椅子に逆さに座った5人が残って白河と入れ替わり。一つの椅子の角がドアと擦れたものの、その精巧な位置合わせに驚く。黒っぽい床、壁、衣装に白い雪が美しく映える。
 壁は前に移動し、開いたドアが上手く椅子を通り越す。
 白河、踊ると言うよりは動きのモーメント風。
 衣装から、パンツとスカートは男女をイメージしているのだろう、2組のカップルが戦うかのように踊る。内、女性一人が倒れる。4人は去り、白河、黒いコートを羽織ってソロ。壁、後方へ。
 大きな本が飛び石のように置かれ、その上をワイヤに繋がれた一人の女性が踊る。
 5人も黒コート姿で登場。倒れた女性が白河を追うが、4人は諌める。
 3人がワイヤで前後に大きく揺れる。3階席からは、その空中浮遊感は今一つだ。これが席料1000円の差か。
 6人、コートの襟で顔を隠しながら踊る。
 ドアの向うに積まれているのは大きな本か? 冒頭の階段も積まれた本だったようだ。積まれた本は歴史か。私としては本を踏むのには抵抗がある、幾ら舞台芸術とは言え。
 音楽がとても綺麗だ。
 白河、再びコートの胸をはだけ、走る。舞台全体に雪がおびただしく降り、暗転。
 しっかりと造られた舞台装置、緻密に計算されたその動きと、それによって舞台空間と色を仕切る妙。ドアの開閉と、ダンサーの見え隠れしながらの動き、ダンスの造形が美しい。踊りながら、踏みしめることができる位に積もらせた紙吹雪。的確で安定したワイヤーワーク。時として優雅に、そしてドラマチックな音楽。それらに圧倒されながらも、感動は今一つだった。白河は何故、裸にならなければならないのか。蛇足ながら、鼻呼吸のスースーという音をうるさく感じたのは私だけでしょうか。

芝居「RENTAL SPACE」(SPARKO/03) (3月31日掲載)
 3月27日(木)19:30-20:20。中野ザ・ポケット。脚本・演出:高羽泰雄。出演:渡辺詩子、小関ゆかり、高園陽子、吉田麻起子、邑城秀美、和田好美、畔上千春、菊川朝子。前売3000円、当日3300円
 色っぽいチラシに引き寄せられて、また来てしまったが、前回見た「PLAY SET」同様、ひねった内容だった。
 “宇宙人”の男・ディマンシュは、いろんな星の女性を自分の“宇宙”に呼び寄せ、助けを求める。やがて彼女達は、“軍曹”に率いられ、小熊小隊となって、暗黒宇宙の半魚人達と戦う。そして最後の難関であるシュワルツワルトの障壁を突破しようとするが……。
 恋愛とは相手を自分の宇宙に引き込む事、という発想らしいが、それは本当の愛ではないだろう。結局彼女達は弄ばれただけなのだ。いや、愛を求め、それが得られずに終わった男の悲劇と見るべきか。
 くねらせた金属棒を複雑に絡ませた、スチールアートを思わせる舞台セットと同様、宇宙と人の心を絡ませた内容であるが、そういうのって、結構疲れる。ストーリーの裏を読むのに疲れる。それよりも、出演者の個性を楽しませてもらった。
 同じ衣装のまま、いろんな小道具をとっかえひっかえ、多い人は5役もこなす精力振り。女性がここまでやるか、というくらいコミカルな役に入り切っている。
 ディマッシュは、急病の佐藤陽子の代役、菊川。急な起用を感じさせない出来栄えで、私が気付いた台詞の間違いは一箇所だけだった。キャラクターをどこまで消化していたかは不明だが、物静かな坦々とした男役を好演。
 無表情で平坦な喋り方で、常に沈着冷静に的確に状況を判断する不気味な軍曹、高園。
 全く異なるキャラクターを演じ分ける吉田。
 そして何と言ってもパープリン美女と、アニメのような操り人形のようなパン屋の主人を演じる小関には恐れ入った。間延びした話し方や動きは現実にはあり得ないキャラクターだが、生き生きとしていた。
 終演後に出て来た出演者達は、いずれも作中のキャラクターを脱ぎ捨てた普通の女性達、のように見えた。もう一人の冷静沈着な女性・サムディが知人の和田だったとは、紹介があるまでわからなかった(チラシの写真は見ていたが、文字は読んでいなかった)。それほど普段とは異なる演技だった(と言っても3年前に会ったきり)。

佐々木隆子タップダンス・ファミリー公演「第10回タップ&ジャズダンス・フェスティバル」 (3月27日掲載)
 3月21日(金)13:30-14:50、鶴見会館大ホール、入場無料(要プログラム)
 初めに司会者が「この発表会は参加すること意義があります。どうか暖かい目で見てください」というような話があった。日頃の練習成果を披露するという趣旨だからその通りだが、それはそれとして記憶に残った作品を曲毎に一言。
 サウス・ラムパート・ストリート・パレード=音楽が大き過ぎてタップの音があまり聞こえない。スモークが拡散せずに固まったままで雲のよう。
 I Saw the Light=センターの女性、動きは硬いが腕や手の動きが丁寧で良かった。
 Four Brothers=4人の内の一人が自信無さそうで危うい。衣装が踊りやすそう。途中で幕が閉まり、決めポーズで終わると幕が開き、背後には同じポーズ次の出演者が待っている、という上手い構成。
 Shine=こんなに上手い生徒が居たのか、と思ってしまった浅賀幸弘のソロ。
 レディ・イズ・ア・トランプ=センターの男性インストラクター(天野俊哉)、教科書的な丁寧なステップ。それまで、タップ音が小さかったので板のせいかと思ったがそうではなかった。
 ホワッツ・マイケル=ズボンの素材が光り過ぎではないでしょうか。
 Step to the New World=ジャズ6人、右から三人目、表情が付けば尚良かった。
 Don't be that Way=7人中、タップが聞こえるのは半分程度か。
 君の瞳に恋してる=今までの出演者もそうだが、全体的にトゥの音が小さい。この発表会でタップにディスコ音楽を使うのは珍しい。輪になって踊ったり、グループでの移動などフォーメーションの変化も豊かで異色な感じ。こういうのを待っていました。
 Dancers in Love=6人によるアカぺラ始まり。
 Bugle Call Rag=男性の田中秀幸は米屋のオヤジ風の出で立ち。速いステップが聞き取りにくい。かみさん風の市村はもっと老け役でも良かったかも。コミカルさを追求するなら、踊りや動きにもっと緩急のメリハリを付けた方が良かった。扮装は凝っているが、キャラクターが未完成という感じ。他の出演者よりは十分個性的だが。
 ゴールド・ディガーズ2003=上手いが、男女共にきらびやかな衣装の中に、二人だけジーンズ地のオーバーオールは、特に踊りが異なる訳でもなく違和感がある。次の4人の出演者と重なっての転換だが、終わった出演者は、もっと早くはけた方が良い。
 スクービー・ドゥー=音楽が大き過ぎてタップの音があまり聞こえない。
 Well Get It=三人が移動して離れるならカミ・シモの2:1ではなく後方を加えれば良いのにと思った。が、フォーメーションから、実は4人の振り付けだと判明。一人が急に欠場したのだろう。(終演後、プログラムを見たら4人だった)
 American Waterfront=最後の決めポーズがさまになっている。
 Just in Time=衣装が5人とも派手な割には踊りが地味だった。
 Theme From Lupin III=「ルパン三世」のジャズピアノ・アレンジ。黒ずくめの衣装。センターの女性が上手い。
 Tommy Gun=これもやや異色な、9人でストリート・タップ風のダンス。
 最後に女性インストラクター5名が登場。踊りは当然、良かったのだが、スカートが重そうだった。あの生地なら膝が見えるくらい、あの長さならもっと軽い生地が良かったのでは?
 エンディングは出演団体毎にポーズを工夫しての紹介。その時々に客から花束の贈呈。

軌跡プロデュース試演会 vol.2「Little StepsII」 (3月25日掲載)
 3月19日(水)19:00-20:10、会場:シアターブラッツ、主催:劇団軌跡、前売当日共2000円
 第一部は芝居「Kiss」。原作:MARIO、脚色・演出:久賀健治
 知り合って一箇月の彼女が初めて自分の部屋にやって来る。いそいそと準備をしていると、やって来たのはおかまの知人。早々に追い出して、やっと彼女
の到着。何とかキスをしようと試みるが、そこに電気屋が配達に来る。しかも彼は彼女の同級生で、妙な癖かあった。その後は父親が突然の訪問。
 色んな障害を乗り越えて、晴れて二人はキスに到達する。今時こんなカップルが居るのかとも思うくいの純情さ。言いたいことも言えず、やりたいことも
できずにもじもじとしている二人の演技は、見ているこちらが恥ずかしくなるぐらいによく演じられていた。
 結末はこれと言って感動は無いが、そこに至るまでのてんやわんやが楽しめた。
 渋さを気取ってはいるが、ほど良い笑いを誘うギャグ好きの父親(熊谷正行)が好演。
 第二部は「DANCE・DANCE・DANCE」と題してダンスのオンパレード。構成演出:久賀健治、監修:荒井修
「LUPIN THE THIRD」:4人によるよくまとまったダンス。ルパン3世は何度聞いても良い曲である。
「OVER NIGHT SUCCESS」:ショーウィンドーの中の二つの男性マネキンと少女のダンス。という設定は、後日説明を聞いて判明したが、幻想的なダンスでは
あった。
「ガタメキラ」:いかにも「太陽とシスコムーン」が歌って踊っているかのように見えた。
「小泥棒」:スリのカップルと、その餌食となる人々によるストーリー仕立てのダンスで、楽しめた。
「ちょこっとLOVE」:いかにもプッチモニ、という訳ではなかったが、衣装がそれらしく凝っていた。
「Because of you」:いかにもWINSが歌って踊っているかのように見えた。「WAKE ME UPBEFOREYOU GO GO」:タップダンス。
「JIVE INTO THE NIGHT」:ダンサーの出入りと様々なフォーメーションの変化が効果的だった。 
 ダンスは全体的にそれほど高度とは言えないが、程よくまとまっていたし振り付けも良かった、。
 松元修の幕間の漫談風のつなぎも、一人で悪戦苦闘している様がコミカルで楽しめた。
 太田麻衣子は、目鼻立ちが派手なので、笑顔がややオーバー気味だが、キュートで表情も良かった。

ミュージカル「地下鉄」 (3月18日掲載)
 3月15日(日)18:00-20:10、IMAホール、出演:東放学園高等専修学校第一期生、脚本:マイケル・ディスタシオ、無料
 卒業公演であることを考えると、彼らのものであり、外部の者としてはあまり口を挟めないようにも思う。学校、教師としては、生徒の稚拙さをどこまで引き上げるのか、どこまでが生徒のものかなど、自主性との兼ね合いが難しいだろう。それらを敢えて無視して一般観客として一言。
 うだつの上がらない、競馬の漫画雑誌の編集者と、王宮の生活に飽きて家出した王女の恋に、ヤクザと警察が絡んだ内容。どこかで聞いたような話だが、「ローマの休日」「虹を掴む男」「ムーランルージュ」をベースにしているらしい。登場人物も、トム・ジョーンズや座頭市を真似ている。この制作姿勢、小さな独立劇団ならともかく、学校としては安易ではないだろうか。
 全体的に冗長で詰めが甘い気がしたし、これでミージカルと言えるかどうかが疑問である。歌は全て口パク、踊りも少ない。メインストーリーの展開も、各シーンが長過ぎて勢いが失われている。シーン単位では結構面白い箇所もあるのだが、それらが却って流れを阻害している。出演者のたどたどしい台詞や素人っぽさは仕方が無いが、演出でもう少し何とかできなかったのかな、と思う。
 大道具小道具が、いかにも手作り風で親しみを感じる反面、多過ぎて贅沢な気もする。東京タワーなど映像か絵で十分だろう。
 通り掛かりの女性を口説きに掛かるサラリーマン(全員女性)や、それを挑発する女性。生活費獲得の為に我が身を餌に男を誘う王女(恐れ多くも名前まで同じ! あの方と)。ヤクザの情婦の布越しのストリップ……、高校生の分際でこんな演技が許されるのでしょうか? キスでもしようものなら不良、不純異性交遊と言われた我が世代では羨ましい、いや考えられません。
 さて、高校生とは言え、乳母役の金子梨沙が迫真の演技だった。これは商業演劇で立派に通用するだろう。社長役の榎本由美も貫禄があった。駅長の若杉亮太は進行役をこなし、小林龍平はダンスが良かった。
 いずれにせよ、部外者であることを少し寂しく感じながら、終演後のホワイエの賑わいを後にしたのであった。

「a spring night」 (3月17日掲載)
 主催・制作:青山ダンシング・スクエア、構成・演出:木佐貫邦子、監修:小川亜矢子、オーガナイザー:桑名和也、振付:小川亜矢子、木佐貫邦子、YOUYA、料金:S6000円、A5000円、B2000円(3月12日鑑賞)

 この団体の公演には小作品群と言う先入観があったが、今回は「春」という統一イメージがあるようだ。但し、特にストーリー性は感じなかった。昨年までは会場が狭く、スケジュールの読めない私は、入場可否の不安を伴う当日券での鑑賞だったが、今回は“ゆったり”できた。作品紹介と寸評を簡単に。

第一部
 男性4人がそれぞれ定位置で踊る。そこに11人の女性が、猿のように両手を下げて登場。踊るというよりは動いている感じ。
 稲妻、降雨で女性一人残り、破れ傘を差した女性が一人登場。二人の関係が読めない。
 赤いドレスの女性、手袋、イヤリング、髪留めを外し、何かに悩み、疲れたように椅子に座る。踊り出し、黒子風の男性二人が彼女を支え、椅子を動かす。女性、ワインを飲んで暗転。何かドラマを感じさせるが、それは未消化に終わり、3人のコンタクトの妙に目が行く。
 23人の女性が徐々に登場し、皆同じ動きを繰り返す。テンポがアップし、赤い靴を残して暗転。リズミカルではあるものの……。
 男性一人、靴と戯れる。
 男性7人、早くて激しい踊り。
 女性8人、ユニゾンで踊る。順番に交代しながら一人は別の動きをする。身体をコンタクトしながら連鎖反応的に踊る。

第二部
 アイリッシュダンス風の曲でオープン。ピンクの衣装の女性群舞。これは桜でしょう。一人、黄緑色の女性は春の動物か。モダンダンスっぽい第一部とは一転してバレエの世界。
 JOEYの、バランスが安定した踊りに絡む、桑名和也のスカーフが、遠目には唐草模様の風呂敷に見える。
 アイリッシュ風の曲で早いダンス。
 女性群舞、疲れたように寝る。
 上半身裸のJOEYと桑名のパ・ド・ドゥ。
 コンチェルトによる女性群舞。
 能美建志、青いシートを抱えて登場。7人の女性がそれを広げ、彼は花見の席取りか。手持ち無沙汰のように踊り出す。その所作に反応する女性達。彼にはそれらは見えていない。動きと場の展開が興味を引く。
 5人の男性がそれぞれの足に絡む女性を引きずって登場。やがてミュージカル風の踊り。
 男性、武術風の踊り、女性が出て来るがほとんど相手にせず。
 加賀谷香、飽きさせない踊り。長い髪が少々邪魔に思える。
 最初の男性4人の踊り。

「MUSICAL SPECIAL LIVE」 (3月8日掲載)
 3月2日(日)17:30-、文京シビックホール大ホール、出演:東京ミュージック&メディアアーツ尚美ミュージカル学科、文京区民ミュージカル・スペシャル・ライブ講習会受講生、入場料:3000円、企画・構成:東京ミュージック&メディアアーツ尚美、総合演出:野口アキラ、主催:文京区の文化を推進する会

第一部
 まずは40人ほどによる10分間4曲の「文京区民講座ミュージカル」。と言っても歌はあるものの、芝居は何人かが交代で一言台詞を喋り、ほとんどが並んだままでリズムをとる程度で、踊っているとは言い難い。台詞がたどたどしいのはともかく、これでミュージカルとは言えないでしょう。折角9月から練習しているなら、もう少し何とかならなかったのかなと思う。
 続いて「SHOBIオリジナルミュージカル スクラップ・ブルース」の歌とダンス。ポンコツカー、中古車が並ぶ店で、争いや恋が芽生える。車を擬人化しているのだが、設定が子供っぽい。しかし最後には自己を犠牲にして他者を生かすというクサイ展開に、不覚にも感動してしまった。
 営業マン役の若泉亮が、オーバーアクションながらも好演。
第二部
 「SONG&DANCE」と題して、歌って踊る。帽子を被ったり脱いだりが、中々上手い。各自の正面を微妙に変えた3グループの立ち位置では、バラバラな感じ。タップダンスは、床がリノリウムのままの為に音が鈍い。やや場違いな感じの「白鳥の湖」からの「マズルカ」。振りはオリジナル。帽子を落とした後の処理が上手い。
 続いて「BRING ON TOMORROW」。卒業公演を控えた芸能学校6人の、焦りや葛藤と友情、というよくあるパターン。でも、歌も踊りも良かったからOK。
 最後の「WEST SIDE STORY」は、歌と踊りだけで構成されているので、展開がブツ切れの感じ。しかし、十分な声量の綺麗な歌が聞け、今日の演目の中で最も聞き惚れた。しかしこの感動の切っ掛けは目前で繰り広げられる作品であるにもかかわらず、オリジナルが優れていれば優れているほどオリジナルを思い出してしまう、という皮肉な運命を迎えるのだった。
 フィナーレは「THERE'S NO BUSINESS LIKE SHOW BUSINESS」。
 ミュージカル科と言うだけあって、歌もダンスも芝居も上手い。ピルエット2回転も楽々という感じ。特に歌は、2年間でこれほど上手く歌えるのか、と思うくらいだ(入学時の実力は不明だが)。いずれにせよ、予想以上にハイレベルな内容で、満足。

蒲田演劇工場プロデュース 現代舞踊公演「LUNATIC-佐藤一哉アーノルド・シェーンベルクを見る」 (3月5日掲載)
 3月2日(日)14:00-15:10 品川区立総合区民会館きゅりあん1F小ホール 演出・振付:佐藤一哉 作舞:石川陽子、清藤美智子、和田久美子 前売当日共 一般3000円
 もう少しユーモラスな作品を期待していたのだが、結構難解な感じだった。プログラムのシーンタイトルとコメントが無ければ、展開が理解できなかったと思う。多少ずれがあるかもしれないが、シーンごとに一言。
 1.一人が寄りかかっているのは、初めは街灯かと思ったが、大きな絵筆だった。これで何をするのかと思ったが、画家としての象徴だけだったようだ。いや、シェーンベルクの中でのゲルストルの存在の大きさを、あの巨大な筆で表したのだろうか。
 2.限界に挑戦しているかのような激しい群舞。
 3.ソロ(沼口賢一?)。BGMも無く、ひたすらバレエ風に踊るのは、ダンステクニックとしては見応えがあるが、作品の中の位置付けとしてはわかりにくい。
 4.再び群舞。軍隊風の雰囲気はあったが、ムンクの叫びのような顔は、コミカルでもあり、文字通りの叫びのようでもあり、どっちつかずの感じ。凝縮された動きとしては見応えがあった。
 6.ソロ(小出顕太郎?)。これもモダンさをうまく取り入れたバレエ。
 10.3人の白い衣装の女性(後半更に二人)。私としては最も好みの動きだが、何故パンツの丈が左右違うのか、つまらない理由を詮索してしまう。 
 さて、「狂気に満ちたように肉体を動かす」姿はよく表現されていたが、それで何を言いたいのかがよくわかりません。ひどい仕打ちとか狂気……。ラスト近くで降って来たのは、札ビラか枯葉か。
 今回の曲の中には知っている曲は無かったし、シェーンベルクの曲というのも、思い浮かんで来ない。これを切っ掛けに少しは彼に気をとめ、ある程度触れた後に、またこの作品を振り返ってみよう。
 舞台上・下手に立派な町並み(壁)が作られていたが、それほど生かされていないように思った。
 劇場の大きさの割にはスタッフが多く、サービスが行き届いていたが、だ慣れていない人もおり、勉強中という感じ。
 今更ながらに気付いたが、音楽構成の佐藤二三哉は佐藤一哉の弟とか。

「Flying Dancing 2003」 (2月18日掲載)
 2月16日(日)第一部=11:30-、第二部=16:30-(入れ替え制)。港区・メルパルクホール。前売2100円、当日2500円。主催:池袋コミュニティ・カレッジ
 池袋コミュニティ・カレッジのダンスクラス生徒による合同公演。I部の開場後10分頃に着くと、雨の中で入場待ちの行列が出来ていたが、列の流れは速かった。しかし既に1階は満席。2階はまだ余裕があったが最終的には階段通路まで埋め尽くされる混みよう。ところがII部が開場するとすぐに列は消えて、席は半分も埋まっていなかった。最終的にはI部の7、8割程度の入りか。
 発表会と言うのは普段の練習の成果を発表する訳だから、最初から最後まで見るような私にとっては、出演する知人の割合も少ないので楽しみも半減である。それでも見に行くのは、単純にダンスが好きだから。
 それにしても色んなダンスが見られると同時に、内情も様々。発表会用の練習を10月から始める教室もあれば1月半ばという教室も。出来るだけ多くの出演時間を確保したがる先生もいれば10分で十分という先生も。
 本番の写真撮影はOKなのだが、何度警告されてもストロボ撮影が無くならない。舞台まで遠過ぎてストロボを発光させる意味が無いんだけどねえ。また、煌々と照らされるデジタルカメラの液晶モニターも迷惑である。が、親心を考えると……。しかし、そういう大人を見て子は育つから。
 さて、記憶に残っている幾つかの舞台について一筆。

【第I部】
 柳ジャズ/シアターダンス=「ラ・マンチャの男」のテーマ曲でオープニング。華やかで綺麗な作品。
 牧阿佐美チャイルド ジュニア バレエ=近くの女性客が「カワイイッ!」を連発。確かに可愛いが静かにして欲しい。
 新体操ジュニア=リボンの演技が綺麗。
 YUKO DANCE DEARS=動きはプロ並みだが何となくエアロビックダンスのようにスポーツっぽい。
 千田ダンス・フリーウィンド=良かったです。
 西川・踊るダンシングワールド&バレエ=クラシックバレエで始まりHIPHOP、ハワイアンと文字通りのダンシングワールド。入門しようと思ってもジャンルに迷いそう。
 BROADWAY DANCE CENTERジャズダンス、BDC SUNDAYジャズダンス、BDCジュニア・ストリートジャズ=後半、エネルギッシュで良かった。
 Street Free Style=全体的に決めが緩いが、3人(講師?)は抜群でした。
 夏貴陽子ダンス・ファクトリー=フォーメーションもよく大人のダンスという感じ。
 SATOMI JAZZ DANCE=しっかり踊っている感じ。
 シニアのヒップホップ=シニア限定ということでレベルが平均的。全体的に決めが緩い感じ。
 名倉ジャズダンス=スカートの生地が厚過ぎると思われる。光の使い方が良い。
 FUNKY JAZZ=「ミッション・インポシブル」の曲で始まるが、あとは和ポップスばかりなのは珍しい。手品を使ってリボンをステッキに変えたりして趣向を凝らしているが、ダンスそのものを見逃がしてしまいそう。

【第II部】
 斎田タップダンス=ステップや立ち位置が佐々木の発表会に似ている。皆さん緊張しているようすだが、最後の長丁場は感心。
 ストリートタップ入門=街角や広場の雰囲気。ちょっとしたストーリー性があり、楽しめた。
 アルゼンチンタンゴ入門=ダンスフロアのあるレストランバー、という設定か。これも大人のダンスですな。
 スコティッシュナショナルダンス=後半はダンスバトル風。
 モダンバレエジュニア・コンテンポラリィ加藤=ボールやリングを使用。男児が秀逸。
 森嘉子東京アフロダンス舞踊団=国際フォーラムの作品と似た感じ。プロ出演が多い印象。
 山川バレエ/山川バレエジュニア=全体的に爪先、膝、並び、バランス等が気になった。全幕もののダイジェスト版ながら、この発表会では50分の大作。全体的には程好くまとまっていた気がする。
 井上バレエ=そのように人選しているのか、レベルは平均的な感じで、ミスをしても全体的にリラックスしているにように見えた。初々しい緊張感も良いが、こちらもリラックスして見たい。
 小林紀子バレエシアター=チュチュの動きが綺麗。
 松山バレエ=オープニングはいつものように一塊かと思ったら三群で、ポーズも照明も綺麗だった。同じ演目の井上バレエと比べると、出演者のレベルに幅があったように思う。最近の教室では最多出演者数のようだ。山川が終わると1割くらいの客が帰り、その後も少しずつ帰って行った感じ。最後の出演と言うのはメリットもあるだろうが、集客の点では不利と思われる。出演者にとってはあまり関係無いか。

生きる力を見せる! ドリームプラネッツ ライブ (2月12日掲載)
 2月9日(日)14:00-16:00 大人2000円(中学生以上)子ども1000円 主催:ドリームプラネットプロジェクト 会場:横浜市教育会館
 第一部 沖縄アクターズスクールから生まれた10代後半の子たちのエネルギッシュなダンス&ソングライブ。歌と踊りは申し分ない。英語の歌詞の発音もよく、ヒップホップ系の踊りもメリハリがあり、力強く、揃っている。表面的な動きではなく、心の底から楽しんでいる様子が伝わって来る。舞台用の笑顔ではなく、生きることの楽しさが自然に出ている感じである。
 第二部 彼らが学ぶ学校の様子のビデオ紹介。母についての作文の朗読や歌っている様子。泣いているシーンが多いが、第三者としてはちょっと演出っぽい気がしてしまう。
 第三部 沖縄アクターズスクール主宰のマキノ正幸氏の公演。今の大人、日本のだらしなさ、知性ではなく感性の大切さ、など本気で生きることの大切さを力説。

太田寸世里(ペコちゃん)「ひとりコント新作集vol.17」 (2月12日掲載)
 2月6日(木)〜9日(日) 前売2300、当日2500。下北沢OFFOFFシアター(7日19:00鑑賞)
 まずは定番の「ラジオ体操」でオープン。体操をしながらの勘違い路線を守りながら、最近の時事題材を取り入れて面白おかしく見られる。
 「お局OLのお遊戯会」子供向けミュージカルの練習の悪戦苦闘振り。厳しくリーダーシップを取りながらも、好意を寄せる男子社員には弱い。他のダメ社員の描写もよくできている。
 「死体のあるお部屋」珍しくしんみりとした、思い出に浸る女性。ショートショート風。落ちが今一つ。
 「フォークデュオもみの木」結婚披露宴で反戦歌を歌うナンセンス振り。
 「?(子供の留守番)」夫婦や北朝鮮事情を題材に、ヒヤッとさせられる子供の訳知り振り。子供を演じるには身体的にどうかな、と感じる一方、大人びた生意気な点を笑いの対象とするには現実的過ぎる題材だと思った。
 「ひとりっきりのラジオドラマ」冬の山小屋に閉じ込められたのか、いろんな妄想で楽しい空間を作り出す。だからどうなの?という感じ。
 「アヒルのOLバレンタインチョコ騒動」恒例のOLもの。例によって残業に疲れて帰宅した、一人暮らしのOLは、バレンタイン用の義理チョコの予算を立てているうちに、いつの間にか本命チョコに変わり、都合の良い妄想がエスカレートして行く。一人だからよいようなものの、身近に居ると傍迷惑なOL。
 定番のOLものは、いつもながらの勘違い、妄想OLの悲しくもおかしい有様を、最近の出来事をうまく盛り込みながら楽しませてくれた。他の作品は、それなりにリアリティが感じられるし独特の面白さもあるのだが、もうひとつこなれていない感じ。
 いずれにせよ、1時間半を飽きさせないのは大したものだと実感。

「LA COMBINAISON」 (1月26日掲載)
 1月25日(日)18:30-20:15 東京都府中の森芸術劇場・ふるさとホール 3000円(全席自由) 主催:LA COMBINAISON企画室
 三団体による、ダンスのコラボレーションである。が、全体を通してのテーマがある訳でもなく、次々にダンスが踊られるという構成はダンス好きには楽しい反面、もう一工夫欲しい気もする。三団体を三部に分けるというのも難しいし。まあ、そういう会だと言われればそれまで。とは言え次回も見たいとは思っている。実は細川、柳下の作品は、今まで小さいステージで、また近くで見たことはあるが、今回のような舞台はどうなのかと興味津々だったが、久し振リに興奮した。
 全体的にハイレベルで見応えがあった。一部、発表会っぽい部分もあったが、ダンスが好きで楽しんで踊っているようすが伝わって来た。
 ダンス公演は年間60前後は見ているが、定刻で始まるのは稀なのでびっくり。ちょうど席に着いた直後にスタートしたのでプログラムを見る余裕も無かった。
 さて、それぞれの作品について一言。(空白は、思い出せないか、良かったか)

 1.紫の衣装に紫の照明も悪くはないが、同系色は時間的に勿体無い気がする。C.S.T.(代表:細川知里。以下C)
 2.折角男性が出ているのだから、女性と同じ振りではなく別のキャラクターにして欲しかった。この団体、以下同様。JAZZ SITE(代表:栗原麻里子。以下K)
 3.たんと・たんつYagishitaプロジェクト(代表:柳下久美子。以下Y)
 4.アースの「ブギー・ワンダーランド」をヒップホップで踊るのは新鮮。後半、これほど綺麗にそろうロックダンスは珍しい。C
 5.水中メガネ、水泳帽子、マント姿のレスキュウ隊。へえ、こうい作品も作るんだ、と女性群舞でこの種の作品は珍しい意欲作。私的には救助される側も欲しかった。Y
 6.このあとから暗転せずに作品が変わるので拍手のタイミングを逃がす。このような展開の方が好きではあるが。K
 7.C
 8.Y
 9.K
 10.Y
 11.あれほどのロックダンサーがMISIAの「眠れぬ夜は君のせい」も踊れるとは驚異。細川の口紅の色が赤過ぎてちよっと怖い感じ。C
 12.柳下、全体的に皆より遅れているが、それが正解に見える。Y
 13.赤いミニのワンピースによる色っぽいダンス「キャバレー」。いつもながら、この手のシーンに男がいないのが寂しい。(それにしても、日本のキャバレーでは踊りにならないようで)C
 14.K
 15.群舞の手がばらついて見えるのが惜しい(そこまで言うな)。が、表情は良い。Y
 16.群舞の後半、柳下が出ずっぱりで、次々に交代で出てくるダンサーとペアで踊る。二人ずつ順番に踊るというのは新鮮。下手をすると出演者紹介風に終わってしまう恐れがあるが、今回はそれぞれの振りが楽しめた。Y
 17.黒いスーツ姿で、これまた綺麗にそろっている。HIPHOPといえば普段着っぽい衣装に、基本は踏まえていても個人的な踊りが多いが、これだけそろうと気持ちいい。が、人によっては物足りないかも。「キャバレー」と組み合わせても面白そう。C
 18.綺麗だがあまりにも音に合わせ過ぎており、後半飽きる。K
 19.代表である3人の共演。同じような振りだが三人三様。それぞれの個性が出ている。
 20.今までの踊りとは違ってロックンロールは苦手?という感じ。まあ、フィナーレだから賑やかでよろしいのでは?

東京アナウンス学院 2002年度 長野ゼミ 卒業公演「パンドラの鐘」 (1月20日掲載)
 1月19日(日)14:20-16:30 練馬文化センター 作:野田秀樹 演出:長野和文

 アナウンス学院というから朗読でもやるのか、とよくわからないまま出掛てみたら、ストレートプレイだった。卒業公演は全部で9筒所で行なわれるが、六つがストレートプレイ、映像演技とミュージカルとお笑いが一つずつである。
 専門学校の卒演だからどうかな?と不安もあったが、結論的には予想以上に見応えがあった。
 長崎の発掘現場から釘が出土した。更に人骨も。ここから古代王朝の女王の物語が展開される。研究論文の盗作、ころころ変わる恋人の心、そして古代への空想……。
 時代設定が現代と古代を往き来するが、その展開は割りとスムーズに行なわれた感じ。但し、古代の王や王女の立場や権力がわかりにくく、ラストの犠牲シーンは音楽で盛り上がったが、ストーリー的には無理を感じる。
 許婚・タマキ:稲垣泉紀=語尾が少し聞き取りにくいところがあるが、能天気な女性がよく表現できていた。
 死体屋・ミズヲ:旦裕之=熱演。
 カナクギ教授:高橋優太=変人振りがよく発揮されていた。

2003都民芸術フェスティバル参加「現代舞踊公演」 (1月18日掲載)
 1月14日(火)19:00-21:30、東京国際フォーラム ホールC、主催:(社)現代舞踊協会、B席(自由席) \3,000

◎坂木眞司『移行する破線』
 床に這わせた何本もの白いゴム紐を各ダンサーが踏んでいる。一人がそれらを弾くたびにダンサーが徐々に踊りだす。やがて彼らは、新しく持ち込まれた色鮮やかな紐と戯れる。紐は去り、16名の男女が、舞台袖へ出入りしながら交互に踊る。
 前半はダンサーと紐の絡みや動きが面白かったが、後半、紐が無くなってからは、いずれもテクニシャンではあるものの、面白さは薄れた。

◎森嘉子『遠い道』
 一転して重い舞台。放牧民ようの群れ。その向うを影絵のように奴隷らしき列が横切る。ゴスペルをバックに切々と何かを訴えながら踊る感じ。前作のように跳んだり跳ねたりはせず、物語るような振りだ。少々重苦しいが、これはこれで味がある。

◎田中泯『イノセント・チェーホフ』
 クラシックの静かな曲に合わせて、客席から徐々に「市井の人々」といった趣の人々が舞台に上がり、思い思いの動きをする。街の雑踏のようでもあり、旅行者のようでも近所の賑わいのようでもある。白い幕が上がって舞台が奥に広がると、今度は無機質な曲で踊り出す。前二作とはまた違った動きだ。これがほぼ1時間も続き、正直な所、退屈してしまった。20名の関連性がよくわからない。
 チェーホフの作品を題材にしているとのことだが、読んだことが無いので……。

演劇「前略、幕野内家の人々」 (1月13日掲載)
 作・演出:トクナガヒデカツ、企画製作:X-QUEST、1月11日(土)、中野ザ・ポケット、3000円
 正月、東京で学生生活をおくっているカズオ(伊勢直弘)が幕野内家に帰省した。ところがガールフレンドのカズミ(村山なおこ)が勝手についてきてしまった。カズオは大慌てで彼女を追い帰そうとするが、隣りに住む外国人(市川雅之)に見つかってしまい、やがて家族に知られてしまう。何故カズオは彼女を家族と会わせたくなかったのか。それは実は、父は抜け忍、母は多重人格者、兄はニューハーフ、妹はおたく系コスプレイヤー、祖父は国際的スナイパー、祖母はサイボーグ!?という変わった家族だったからだ。
 東京に戻ったカズオを待っていたのは、父の追っ手から逃れて来た家族+隣人だった。そんな家族を紹介しつつ、そこに、追っ手や妹の学級参観や祖母の秘密がからんで騒動が展開される。
 狭い舞台にもかかららず、ダンスとアクション、殺陣の大きな動きが良かった。階段状の舞台以外大道具は使っていないが、十分に場所が想定できた。小道具は工夫されていて、コスプレは勿論、逃避用のヘリコプターなどアイデア賞ものである。
 祖母(若原幸)の演技は、前半は本物の老婆のようで、後半は一転してアクションダンサーでお見事。ちょっとした登場シーンも効果的。
 反面、祖父(船渡慎士)はあまり年齢を感じなかった。
 父(トクナガヒデカツ)も、前半の頼りなさが後半、ヒーローっぽくなる変身振りが面白い。
 兄(小代恵子)はニューハーフにしてはアクが薄いが、健康的なお色気が良い。
 細々と駄洒落やギャグを盛り込み、それはそれで面白いが「数打ちゃ当たる」的な感じもあり、もう少し取捨選択が欲しい。
 家族が上京してからのストーリーの時代的前後関係がわかりにくい。その場その場は楽しめるが、一見ばらばらな家族が、いざという時には結束する姿をもう少し明確にして欲しかった。
 DMの500円割引券が嬉しい。

映画「ウェスト・サイド物語」 (1月5日掲載)
 1月3日(木)、ル テアトル銀座。監督:R・ワイズ、J・ロビンス、振付:J・ロビンス、音楽:L・バーンスタイン
 不毛な争いと出任せの嘘が引き起こす悲恋。
 ニュープリント・デジタルマスターバージョンとのことで、古い映画の割には綺麗な画質だったが、何となく古めかしい色合いである。
 幾らリアリティのあるアメリカ映画とは言え、ミュージカルではそうも行かない。小さなナイフの一刺しでは、人間はそう簡単には死なないだろうし、2枚のフェンスを通して急所を撃ち抜くのは名スナイパーでも難しかろう。
 と言っても、いちゃもんはこのくらい。歌と踊りと芝居が絶妙に絡み合い、不自然さが無い。踊りにも古さを感じない。中でも「トゥナイト」は何度聞いても良い曲である。
 公道でこんな行動?という疑問は野暮。逆に、ダンス好きなら公道でこれくらい踊っちゃえば?である。こんなにビシッと決まる踊りは、これくらい若くないと無理なのかなあ、とぼやきが出るが、これはチンピラの物語だからねえ。不良中年ならそれなりの振付をしてくれたかも。
 シャーク団のリーダー・ベルナルド(J・チャキリス)が主演女優・マリア(N・ウッド)の弟なんだから、もう少し道理を知っていても良さそうなのだが、話の通じない頑固者で血気盛んな若者。それが却ってマリアの恋人・トニー(R・ベイマー)の人柄を際立たせているのだろう。
 さて、映画館のル テアトル銀座だが、場内飲食禁止にはショックだった。持ち込んだサンドイッチが食べられず、空腹のままの鑑賞。しかも、椅子の折り畳み式座面の角が腿を微妙に圧迫するので、リラックスできなかった。それでも151分間は辛くなかった。

「ゴールデンライオン」 (1月4日掲載)
 出演:大連雑技団、他5団体。東京国際フォーラム・ホールC 1月2日(木)19:00-21:15 B席5000円
 少女が、母親に買ってもらった金色の靴の片方を橋の上から落としてしまい、それが夢見鳥の卵の世話をする役人の頭上に落ちて来る。驚く役人の隙をついて妖魔がその卵と靴を持ち去った。夢見鳥の両親は自分達で卵を探し出す。そこに少女も加わって……。
 まずは柔軟な身体を駆使した「現代的男女軟功」。衣装が銀色の全身タイツなので鯖のようだ。
 吊り下げられたロープを使ったアクロバット「堅縄」。
 金色と赤色の夢見鳥登場。白衣装によるダンス。
 片手に5本ずつの「皿廻」。皿を回すだけでも大変なのに自分も回ってしまう。
 大きなリングを自由に操る「青春的旋律」
 インラインスケート、ダンス。夢見鳥の卵を少女と飼育役人が客席で取り合う(時間稼ぎ的)
 パンダの着ぐるみによる「綱渡」。
 反動で人間が次々に飛び出し、4人が繋がる「ベンチブランコ」
 ダンス、15分間の休憩。マスクダンス
 両端にガラス容器をつけた紐をぐるぐる回して放り投げて受け取る「流星」。回すだけでも大変なのに自分も回り、しかも足で撥ね上げるに至っては、現実に目の前で行われているにもかかわらず信じられない芸当である。バトントワリングよりも難しそう。ダンス。
 吊り下げられた帯を使って、二組の男女が優雅に踊る「吊紐」。音楽や動きは優雅ではあるが、女性も筋肉隆々だ。ダンス。
 男女によるマッスル・バランス・アクロバット「頂碗」。ダンス。
 被った面を次々に変えて行く「変面」。手品っぽい。
 自転車によるアクロバット「車技」。
 少女が無くした靴が彼女の足に戻される。めでたしめでたし。
 上昇し、回転するクレーンの上で、片手を支柱に様々なポーズを作る「宇宙遊泳/単手項」
 ストーリーがあるとは言え、舞台の展開とはほとんど関係無い。要は雑技の披露である。サーカスのように技を見せるだけではなく、趣向を凝らしたのだろうが、あまり効果は無かった。合間に行われるダンスも、振忖が今一つで、休憩的要素が強い。
 それはともかく、雑技自体には目を見張り、思わず嘆息が漏れてしまう。信じられない光景である。日本語なら雑技ではなく神技と言ってもよいだろう。人間の可能性が無限に思えて来る。


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