燃えよエンタテイメント 辛口放談2000年版
2001/3/1 (木) 22:59:02更新
2箇月の掲載期間が過ぎた、2000年の「辛口放談」記事の保存版です。
★バレエ「くるみ割り人形」 (12月30日掲載)
12月24日(日)18:30-21:00、五反田ゆうぽうと、C席4000円、主催:松山バレエ団
冒頭は客の来訪だが、クララ家もお出迎え。ドロッセルマイヤーはトナカイに引かれて橇で到着。
パーティダンス・シーンは、ダンスとしては楽しめるがパーティとしては動きが激しすぎる。
また、男児が女児をからかって大騒ぎをするのが定番だが、いたずらっ子は一人というのも異色。その子が自動人形芝居を壊すシーンは唐突な感じ。
鼠の衣裳がだぶだぶなので蛙に見えてしまう。
鼠と兵隊の戦闘シーンはごちゃごちゃせず、綺麗なフォーメーションなので見易い。
鼠と戦う人形(鈴木正彦)を救う為に、クララ(倉田浩子)はスリッパを投げつけるのが普通だが、ここでは我が身を盾に人形の前に立つ。ひ弱な少女ではなく、悪に立ち向かう強い姿だ。
くるみ割り人形の面が一瞬にして左右に飛んで王子に変身する場面は、中々劇的。その後の王子とクララの踊りは見応え十分。
「雪の精」は衣裳も美術も振りも雪のイメージで良かった。
センターでキャラクターが踊っている時は、周囲のダンサーはあまり動かない方が良い。
グラン・パ・ド・ドゥは曲調と良く合っておりドラマチック。
クララが王子と別れる際のパ・ド・ドゥは、これだけを独立させて小作品としてもよい位に見応えがあった。
終了後、例年通りにクリスマスにちなんで「クリスマス組曲」が披露された。
★バレエ「くるみ割り人形」 (12月30日掲載)
12月24日(日)14:00-16:10、新国立劇場オペラ劇場、Z席1500円、改訂振付:ワシリー・ワイノーネン、演出:ガブリエラ・コームレワ
こちらの主役はクララではなくマーシャで宮内真理子。王子(小嶋直也)と踊るのもマーシャ。
冒頭、客の来訪場面は照明による降雪がリアルに表現されていた。
くるみ割り人形はへなへなで、これじゃあくるみは割れないだろうという気がする。
第2幕「雪の精」のシーンはチュチュが薄いブルーで光っており、氷の精という感じだ。
巨大なスカート姿のギゴーニュおばさんは登場しない。
グラン・パ・ド・ドゥは男性二人が加わった4人で、これは初めて見た。
王子と踊る宮内はクラシック・チュチュ、その直後にマーシャとして目覚めるシーンは寝巻き、その直後の挨拶では再びクラシック・チュチュと、目まぐるしい衣裳替えである。
3幕構成で、各幕間に20分間の休憩は多過ぎると思う。第2幕は20分で終わって休憩なのだ。
全体的によくまとまってはいるのだが、何となく物足りない。それは席の関係かもしれない。初めてのZ席(3階)で、行儀良く座ると舞台がほとんど見えないので乗り出さざるを得ない。1列のバルコニー席なので、後方の客の邪魔にはならないからいいのだが、ほとんど天井裏から覗くという感じだ。上昇志向のバレエなのに、その浮遊感が感じられない。それでも小嶋の跳躍は感じられた。
★バレエ「くるみ割り人形」 (12月30日掲載)
12月23日(土)18:00-20:00、板橋区立文化会館、3500円、構成・演出・振付・指導:長瀬信夫、梶田やすこ、主催:東京バレエクリエーション
act1の第一場はクリスマスイブの朝。クララの家の前庭で遊ぶ子供達だ。これは今回のオリジナル場面で、普通は客人達の来訪場面である。更に原作者のホフマンが登場し、ドロッセルマイヤーにくるみ割り人形を手渡す。
その後の展開は概ね通常通り。くるみ割り人形はドロッセルマイヤーのマンとの陰で王子に変身する。そしてクララと王子は船に乗ってお菓子の国へ。子供のクララは踊りを見ており、王子(高岸直樹)と踊るのは金平糖の精(増嶋あゆみ)。いずれも安定した踊りで、安心して見ていられる。
巨大なスカート姿のギゴーニュおばさんは登場しない。
録音による音楽は、音質があまり良くない。
有料とは言え、開場を待つ列は親子連れが多く、発表会という雰囲気だったが、全体的にレベルが高く、相応な料金だと思った。
★映画「恋の骨折り損」 (12月28日掲載)
監督・脚色・主演:ケネス・ブラナー、原戯曲:ウィリアム・シェイクスピア、配給:アスミック・エース、93分
1939年、ナヴァール王国の王子(アレッサンドラ・ニヴォラ)は学友3人と共に、女人禁制で3年間を学問に専念する誓いを立てた。その直後、病床の国王の代理でフランスの王女(アリシア・シルヴァーストン)がお付きの美女3人を従えて外交にやって来た。王子達は彼女達を見て一目惚れ、誓いはあっさり放棄され、あの手この手で口説きにかかる。しかし女性陣は本気にしないで軽く受け流す。そこへ国王の訃報が届き、王女達は帰国の途に着くが、諦めようとしない王子達に課題を出すのだった。
はっきり言って期待外れだった。キャラクターが漫画的過ぎてストーリも陳腐。男性陣の浮かれた姿は微笑ましいが、男女共に恋愛感情が平板。歌と踊りが唐突で、あまり効果的ではない。音楽は「チーク・トゥ・チーク」「誰も奪えぬこの想い」等、往年の名曲が使用されている為、気分は見ているスクリーンを離れ、昔に見た映画に飛んで行ってしまう。ストーリー展開を説明する“ニュース映画”もコミカル過ぎる。それでも、男女8人で歌って踊る「ショウほど素敵な商売はない」では結構楽しめた。
わざわざ前売り券を買い、数少ない上映館に出掛けて見たのに“骨折り損”だった、とは言わないが、演技をもう少し“真面目”にし、オリジナルの曲で歌って踊れば、久し振りのミュージカル映画になったと思う。(12月25日鑑賞)
★映画「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」 (12月23日掲載)
監督:手塚昌明、脚本:柏原寛司・三村 渉、音楽:大島ミチル、製作:東宝映画、配給:東宝
ゴジラに原子力発電所を襲われた日本は、首都を大阪に移し、電力不足を補う為にプラズマ発電を開発した。しかしそれもゴジラは嗅ぎつけ、大阪は破壊された。2001年、対ゴジラ戦闘部隊「Gグラスパー」はゴジラを消滅させる為の新兵器「ディメンション・タイド」を開発し、宇宙からゴジラ目掛けて「マイクロ・ブラックホール」が発射された。一方、その兵器の実験で時空が歪み、古代の昆虫が甦り、巨大化してメガギラスとなって東京を襲い出した。
自衛隊員12名がバズーカ砲でゴジラと戦うオープニングにずっこけた。蟷螂の斧とはこの事だ。今更何故? 大阪城と大阪ビジネスパークの間に国会議事堂を置いて首都大阪移転でございというのは、あまりにも安易。G対策本部のようすが、いかにも映画用セットという感じ。ゴジラ消滅策として人工衛星からブラックホールを発射?するよりも、物理的に捕獲する方がずっと現実的ではないだろうか。大体、ゴジラは生物なのだから何らかの殺し方はある筈だ。古代昆虫が甦ったのはいいとして、その卵が下水道に棄てられた事と渋谷の洪水との関連性がわからない。(水中生活の為の地下水脈破壊の説明がわかりにくい)
幼虫・メガヌロンは目などに不気味さは出ているが、まるで忍者の如くマジシャンの如く人を襲う設定には無理がある。メガギラスの目は作り物っぽく、いかにも吊られている感じで飛翔しているようには見えない。(モスラも同様だったが、あちらはまだ浮遊感がある)
ゴジラは従来より背鰭が巨大化しており、表情も怪獣としての不気味さが出ていた。
街並みや破壊シーンは結構リアルだったし、映像の合成も良く出来ていた。しかし、これは昔から思っている事だが、ビルには鉄筋鉄骨が入っているので、あんなに土壁が崩れるようには壊れないと思う。
今回の主役は、ゴジラに隊長を殺された桐子(田中美里)。敵討ちという訳だが、華奢ながらも健気に頑張っていた。
音楽は大島ミチルだが、例の“自衛隊行進曲”が聞けなかったのは残念。
結局今回も子供騙しに終わり、初代「ゴジラ」程の感動は得られなかった。(12月20日鑑賞)
★コンテンポラリダンス「ラジ パケ−エブリシング バット ラヴィ」 (12月23日掲載)
12月16日(土)、17日(日)15:00-17:00 新国立劇場中ホール、出演:J・ゴダーニ、U・アランブル、R・V・ベンケル、KARAS、他。構成・美術・衣裳・照明・出演:勅使河原三郎。主催:新国立劇場
チケットはとっくに売り切れていたが、当日、キャンセル待ちで45分も並ぶ努力と、開演3分前で絶望的な所に余りチケットを売りに来たという偶然の賜物で入場できた。見た結果は、そこまでしなくても良かったのではないか、という感じだ。
舞台最前部は金網で囲まれ、中には7羽の兎が放たれている。時折左右に横切るが、習性なのかほとんどは上手または下手の隅に縮こまったまま。やがて開演。舞台奥にトロンボーン、ギター、コンピュータ操作?の3名が演奏する中、舞台上手寄りに一人の男が佇む。そのまま5分、10分と経過し、退屈した頃、下手から女性がぎくしゃくした、しかし速い動きで登場し、上手に入る。そして4人の、太極拳を連想させるようなスローなユニゾン。兎はというと、女性が上手から出て、兎を抱え、中央で降ろして撫でてそのまま下手に入るという、ほとんど野放し状態。途中、下手袖の内側で黒ずくめのダンサー10名ほどが縦列でユニゾンで踊ったが、これって観客の四分の一は見えていなさそう。何故か関取がちょこまかと横切ったりもする。
休憩を挟んで第2部。照明が点くと、第1部からあった4本の柱に、それぞれ2頭の乳牛、雄山羊、仔連れの雌山羊が繋がれている。上手の乳牛にはギターが、下手にはダンサーが近付き、そうこうする内に上手から、トロンボーンで鶏を下手に追って入る。10名ほどのダンサーが一列のユニゾンで奥から登場。舞台で輪になり、また一列で奥にはける。その間、非常に速い動きの何人かのダンスがあったり、関取がテノールを歌ったりし、最後は勅使河原のスローな踊りが延々と続いて終了。
シーンを細々と書いたのは、全体を通してのストーリーが無く、シーンの関連性も不明な為だ。
と言う訳で部分的にはいいなと思う踊りがあったリ、意表を突く展開があったりで面白かったりするのだが、全体としては、だから何なの?という感じ。動物達もオブジェとして居るだけ。もっとも、勅使河原が踊っている後ろで仔山羊が2頭の山羊の間を元気良く走り回るので、ついついそちらを見てしまうという誤算?(計算通り?)もあった。トロンボーンで鶏を追いやる所では、動物愛護団体から抗議が来そうだが、家畜だからいいのかな。
事情通に寄れば今回の作品はやっつけだったそうだが、それが本当なら、破綻企業に投入するのとは規模が違うにしても国民の税金をそういう風に使ってもらっては困りますね、というのは冗談だが、もっと楽しみたかった。(17日鑑賞)
★ホテル 009「大津プリンスホテル」 (12月22日掲載)
住所:滋賀県大津市におの浜 (077)521-1111
http://www.princehotels.co.jp/otsu/
宿泊日:2000年12月16日(土)
宿泊室:34階、ツイン(客室数:540室)
室料:不明(S:不明、T:22000-30000円、D:27000-35000円、和室:43000-50000円、スイート:45000-54000円)
チェックイン:15:00(14:00) チェックアウト:10:00(11:00)
琵琶湖の南湖の西側に位置しており、全ての部屋は琵琶湖に面している。建物は円筒を垂直に割った形(蒲鉾を立てた形)をしており、エレベータホールを要に部屋が扇状に並んでいる。つまり、各部屋もドアから窓に向かって広がっている訳だが、室内の形状はそれほど気にならない。
部屋に入って驚いたのは、トイレ、洗面所、浴室がマンション並に独立しており広い事だ。ホテルとしては初めての経験。広くて同室よりも、多少狭くても独立していた方が快適である。トイレはウォシュレット付き。洗面所の鏡は大きく、浴室は約2.1平米で、桶と椅子がある。つまり、普通の家庭風呂と同じだ。
鍵はカードで、ドア内側にキーケースがある。
部屋は約11.2平米。机、椅子2脚、テーブル、身長ほどのソファ、テレビ、ビデオ再生デッキ(これも初体験)、冷蔵庫。テレビの有料放送は1500円。冷蔵庫は空っぽで、24時間営業のホテル内コンビニストアで買った物を入れる仕組み。ビール320円、ジュース150円。
朝食は37階の「ニューヨーク」のバイキングか、36階の「清水」の和定食。今回は36階で、琵琶湖を見下ろしながら食べる。温泉卵、ほうれん草のお浸し、鮭、海苔、野菜煮、香物、ご飯、味噌汁。程好い量で程好い味付けだ。店員が多いのは良いが、終始監視されているようで、箸の上げ下ろしにも気を使ってしまう。
ホテル周辺は埋立地で、体育館、パチンコ店、ガソリンスタンド程度とびわ湖畔しかない。10分ほど歩くと西武百貨店やパルコなどがあるが、商店街は更に歩いてJR膳所駅寄りになる。
JR大津駅から路線バスで200円。
★芝居「ああ、大地に頭から」 (12月21日掲載)
12月14日(木)-20日(水)、下北沢駅前劇場、作・演出:政岡泰志、出演:動物電気、制作:MeguMi、製作:×2.5(nibaihan) http://www.nibaihan.com
プロローグとして、今年は何かと「17歳」が話題になったので、主な出演者達の17歳はどんなだったか、という紹介があった。
さて、舞台は1960年代後半。場所はオンボロアパート。四つの部屋にはそれぞれ学生運動家、フォークシンガー・デュオ、アングラ劇の“アベック”そして人見知りする男・山本(辻脩人)が住んでいた。彼らは彼らなりに頑張っていたが、次第にそれぞれの目指す道が変わって行く。そこに流行作家・若松欲望(小林健一)や“三島由紀夫”が絡まり、この劇団独自の世界が展開して行く。
一応ストーリーはあり、当時の風俗がよく描かれている。私の記憶では更に、グループサウンズ、ラジオの深夜放送などがあるが、どこまで再現するかは登場人物の限界があるので、取捨選択せざるを得ないだろう。
それぞれの住人は転向(?成長?)して行く訳だが、それは“歴史”をステレオタイプとしてなぞっているだけで、住人同志の人間関係があまり感じられない。個々の登場人物は個性的に描けても、それだけでは作品としてはまとまらないのではないか。しかし、終盤、若松が肉体を駆使した熱演をするに及んで、これは芝居の細かい点をあれこれ気にするより楽しんだ方が勝ちだな、ああ面白かったと言えるからいいのかな、と思った。
出演者の演技力はある程度の水準にあり、特に辻と小林のキャラクターが生きている。
舞台はアパートの廊下という設定で、戸が四つ並んでいるが、小道具を使った転換で、そのままその内の一部屋の内部をうまく表現していた。
初日だったが140名位の満席。(14日鑑賞)
★ホテル 008「羽田東急ホテル」 (12月20日掲載)
住所:東京都大田区羽田空港2-8-6 (03)3747-0311
http://www.tokyuhotel.co.jp
宿泊日:2000年12月2日(土)
宿泊室:5階、シングル(客室数:306室)
料金:不明(S16000-20800円、D22500-29500円、T22800-33300円。いずれも室料)
チェックイン:21:30(14:00) チェックアウト:9:00(11:00)
モノレールで羽田空港に向かう途中、いつも見ていたホテルである。周辺にはこれといった商業施設が無く、飛行機に乗る為だけのホテルのようだ。しかし、結婚式場やガーデンプール、約7000平米の中庭がある。建物は見るからに古めかしく、聞くと1960年頃の創業とか。
チェックインすると、すぐに荷物を預かって部屋まで案内してくれ、そこで鍵を渡された。サービスは中々良い。が、部屋に入るとクローゼットが少しかび臭い。窓を開けたが鉄製のスライド式で重く、女性には無理だろう。
部屋は約8平米。備品は机、椅子、テーブル、肘掛椅子、TV(FMラジオ付き。有料TV1500円)、冷蔵庫(ビール500円、コーラ300円、ミネラル水150円、摘み300円)。常備の便箋はエンボス紙で固く、書き味があまり良くない。
浴室は約3平米。壁はタイル張り、床は人造大理石張り、天井・扉はペンキ塗り。
朝食は飛行機の出発に合わせてあるのだろう、5:30からと早い。1階のレストラン・バルーンは普通のレストランで和洋のバイキング。夜は23時まで営業。
ホテルからは羽田空港と、最寄の天空橋駅間にシャトルバスが出ている。
★中央大学ミュージカルカンパニー第31回公演「青春ジェットコースター」 (12月14日掲載)
12月10日(日)17:10-18:30、豊島区・大塚ジェルスホール、脚本演出:桑山幸子、制作:中央大学ミュージカルカンパニー
このカンパニーは数年前にたまたま見て気に入っていた。主役は物静かで頼り無さそうだが、意外に存在感があり、芝居の内容もたわいないがほのぼのとした感じだった。しかも生演奏。
今回、数年振りに見た訳だが、バンドは無く、メンバーも当然ながら大きく入れ替わっていて、微かに記憶があるのは2、3名だった。
これと言った成果も無いまま3年生になってしまった大学生の六花と、浪人してやっと入った大学で恋人に振られた悟、不倫相手の上司と別れた七海達と、その家族を中心に展開する。
偶然出会った3人はお互いの近況を報告し合うが、お互いに良い話は出ない。悟は借金返済に迫られており、六花と七海を誘ってコンビニ・ストアで強盗を働く。しかし、奪った物はおでんばかり。やけになって鞄を近くの川に投げ捨てるが、借り物だった事を思い出して、鞄を追って3人は川に飛び込む。すると全員、小学生に戻ってしまった。
目線が踊っていたり演技力が今一なのはともかく、テーマが絞り切れていないように思う。やりたい事に向かって進もう、過去は振り返るな、どんな家族であっても子供は愛されている、という事なのだろうが、それらを台詞で説明し過ぎたようだ。
ダンスは、ロックなどHIPHOP系でちょっと珍しかったが、踊ったと言えるのは初めと終わりだけ。ミュージカルと言うには少なかったし、歌も唐突に出て来る感じ。別にミュージカルにしなくても良かったのではないか、と思えた。
魚屋のおかみさん(佐藤智恵子)が好演。その旦那(木村郁)は、二役の為だろうが、喉を押し潰したような喋り方に無理を感じた。
チラシとプログラムのタイトルロゴは同じ書体の方が良い。
椅子席だったが座面が前方に傾斜していた為か、予想以上に疲れ、首筋が痛くなってしまった。
★キーロフ・バレエ「眠れる森の美女」 (12月13日掲載)
12月6日(水)18:00-22:00、東京文化会館大ホール、学生割引A席:5000円、振付:マリウス・プティパ、復元監修:セルゲイ・ヴィーハレフ、作曲:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー、企画・招聘・製作:ジャパン・アーツ
初演1890年版の復元という事なので是非見てみたかった。前奏が始まると、珍しくわくわくして来た。すぐに緞帳が開いたので早いなと思ったら、その向こうに復元された緞帳があった。ここまでしているとは思わなかった。
さていよいよプロローグ。袖や後方の幕には「バヤデルカ」以上に遠近感があり、細かく描かれ、一瞬、舞台装置かと見まがうほどだ(この感じは下方階でないと味わえない)。衣裳も何となく“時代”を感じさせる豪華さ。クラシックチュチュは、ピンと張らずに周辺が少し垂れ下がった感じ。復元と言っても、テクニックまで100年前に遡った訳では無い。逆にそれは不可能だろう。改版版に比べると、話の説明をするマイムが多いと思われる。但しそれだけで展開を推測するのは困難だ。
ストーリーは承知しているものの、途中までは集中して見られた。王女が眠りにつく場面では、蔦が徐々に伸びて来て舞台全体が眠りに入る雰囲気が良く出ていた。チャイコフスキーの音楽、台本の完成度の高さ故だろう。しかし、第3幕、一堂が勢揃いするまでは良かったが、順番に踊り出すと徐々に退屈して来た。長靴を履いた猫や赤頭巾ちゃんが何で出て来るのか、とは言わないが、シンデレラがろくに踊りもしないで靴を探し回っていたりすると、もう3時間以上経っているのだからそういうものは遠慮したくなって来る。
しかも周りで見ている貴族達も結構お疲れの様子で、あまり緊張感が見られない。
最後の王子と王女のポーズは、割りとあっさりしており、代わりにバックに妖精達がポーズで決めてくれた。
王女役のヴィショニョーワは小柄で、正確、安定した踊りでお見事。
★ミュージカル「COLOR-FULL」 (12月10日掲載)
12月1日(金)14:00-15:30、港区・六本木アトリエフォンテーヌ、早稲田大学ミュージカル研究会、作・演出:浅井さやか、前売1000円。
大学の本郷教授(鹿渡直之)は、ゼミの学生の資質をコンピュータにインプットし、CGで邪馬台国の人間を再現していた。そこで頂点に立つ卑弥呼は、何故か、事故で病院に寝たきりの彼の妻に似ていた。しかし彼は妻の看病はしていなかった。ある時、朝を告げる役目の榊が役目を果たす事が出来ず、邪馬台国は闇の世界となってしまう。榊のモデルは村上(天野誠)だったが、彼には中学生の頃、親友を自分のせいで亡くしてしまったという負い目があり、かつて親友と再会を約束した日時が近付いて来る従って、それが高まって行った。
教授、学生、店のオーナー達の心の痛みやわだかまりの為に、人間関係がどんどん壊れて行く。物であれば修理や買い換えが出来るが、人間の心はそうは行かない。結局はいろんな切っ掛けによって本人自身が変わらなければ、事態の改善は進まないのだ。
使用曲が26と多いがダンスが少ない。また、台詞とダンスと芝居が分離してしまっている。
村上は中々の熱演。ムツコ(羽賀祥衣)は元気な女子中学生を好演。教授は大人の雰囲気が良く出ていた。その娘(蜂須賀由希)は小柄でいかにも少女っぽく演じていたが、実は作曲編曲もこなす音楽監督というのだから、人は見掛けによらないものだ。
★アラン・プラテル・バレエ団「バッハと憂き世」 (12月7日掲載)
11月30日(木)19:00-20:40 東京国際フォーラム ホールC、C席3000円、振付:アラン・プラテル、ライブ演奏:アンサンブル・エクスプラシオン、主催:日本文化財団、朝日新聞社
ステージ奥、上手の“家”には室内楽団と歌手、下手にはコンプレッサーのような機械が陣取っている。ステージ前方は、ちょうど家の前庭のような雰囲気。そこに男女6名ずつの普段着風衣裳のダンサーが、大家族、あるいは“共同体”のように出入りする。
「バレエ団」の公演にしては舞台装置も衣裳も芝居風だ。踊りはと言えば、非常に速い動きのユニゾン・ダンスがあるかと思えば、女性が“半ケツ”で踊ったり、いきなり叩いたり、叫んだり歌ったり、果てしなく悪態をついたり……。驚いたのは“地面”に火を放ってその上方に横たわり、腹の上にボウリング・ボールを次々に落としたり、女性が白いスカートを“生理”の血で染めながら踊ったりする事である。
バレエというイメージとは程遠い内容で、好みが別れると思うが、それにしては結構な入場者数だった。
ちなみにホールCの内部空間は、新国立劇場のオペラ劇場とよく似ていたがホールCの方が見易い感じがした。
★ユニークバレエシアター「春の祭典」他 (12月5日掲載)
11月28日(火)18:30-20:30 東京都・簡易保険ホール、B席4000円、芸術監督:堀内充、主催・企画制作:ユニークバレエシアター
1「Bach to The future for 2000」これがバッハかと思うくらいにジャズ化された音楽に合わせ、幾何学的なフォーメーションで踊られる。ユニゾンだが、歩幅や回転時の顔の向きまでは合わせられないのは仕方なかろう。音楽にはとても良く乗った振り付けである。
2「パウル・クレーの1枚の絵」朝靄が掛かったような森の中。ギターの調べに乗って一人の老人が踊る。やがて3人の女性が奥から現れて、次々に幻想的に踊って行く。老人は陰で覗き見する。老人としての堀内完は、時間も動きも踊り過ぎたと思う。散歩で十分とは言わないが、もっと軽い雰囲気で良かったのではないか。舞台美術は、P・クレーの絵の趣が良く出ていた。
3「Moly Sonata」オブジェの凹に女性、凸に男性がスタンバイ、というのはわかり易い。しかし、両性具有を表現しているとの事。男女の何か、というように見えたが、もっとストーリー性が欲しかった。
4.「春の祭典」春の訪れと共に男女が集い、やがて一人の女性がいけにえにされる。以前見た東京バレエ団の作品は、もっと動物的だったが、こちらは人間的。ステージ上方にレーザー光線が描く模様と、ストラビンスキーの音楽が的確に合っていた。この曲がこんなに宇宙的だったと初めて気付いた。直進のレーザー光線と舞台の鏡は無くても良かったのでは?
堀内充が八面六臂の大活躍。プログラム掲載の支援者名に複数の重複が見られる。内容が内容だけにしっかり校閲校正して欲しい。
★キーロフ・バレエ「バヤデルカ」 (12月5日掲載)
12月4日(月)18:35-21:20 東京文化会館大ホール、学生割引A席:5000円、振付:マリウス・プティパ、振付改訂:U・パノマリョフ、作曲:レオン・ミンクス、企画・招聘・製作:ジャパン・アーツ
「バヤデルカ」は11月21日鑑賞の「ラ・バヤデール」のロシア語読み。従って粗筋は同じなので省略する。但し、ソロルがニキヤの幻と出会う「影の王国」で終了し、寺院崩壊場面は無い。
ストーリが同じで、振りにも劇的な違いは無いので前回同様に展開が平板な感じ。群舞の衣裳はインドっぽいが、主役のクラシック・チュチュにはやはり違和感があるし、幕による舞台装置・建物は西洋っぽい。しかしこの描かれた風景は、遠近感が見事で立体感十分。黄金の仏像の踊りは新国立より人形的。色はややくすんでいる。作り物だが、ソロル(ルジマートフ)が象に乗って出てきた時には小さな拍手が起こった。どう見てもインディアンに見える群舞があったが、この解釈で良いのかどうか。インコの作り物を持っての群舞があるが、本物だったら動物虐待ものである。第三幕が白いクラシック・チュチュ32名によるコールドで、曲も美しいが故に、前幕と切り離された印象が強いのも同前。
今更ながらであるがF・ルジマートフは初見。細やかな動きは見事だが、柔軟過ぎて隊長の雰囲気は乏しい。ニキヤのS・ザハーロワは、細身でこれぞ八頭身という身体。毒蛇に噛まれるシーンが迫真。大僧正のU・ポノマリョフが、報われない恋心の苛立ちを好演。
★フリル(ミニ) (11月28日掲載)
11月27日(月)20:15-2015 東京都港区・DELUXE 振付・構成・演出:伊藤千枝、出演:珍しいキノコ舞踊団(山下美味子、井出雅子、樋田佳美、山田郷美、佐藤昌代、飯田佳代子、伊藤千枝、他)
ダンスや芝居の会場室内は黒色が多いが、ここの床は白で、壁にはカラフルなパネルや布が配置されている。構造としては簡易倉庫の趣。
次々と客が着席する中、出演者らしき女性達(普段着にしては派手過ぎる服装からの想像)が、客の中から知人を見つけては話し込んでいる。開演前に姿を見せるのはタブーではないのか。
そのうち、ステージ(客席と同じ平面)に7名が集まり、ぺちゃくちゃお喋りに興じている。定刻を10分も過ぎているぞ。いつ始めるんだ。それとも既に始まっているのか。
っしてBGMが大きくなると同時に一人が踊り出した。しかし他の連中は相変わらずお喋り中。曲が変わると別の一人が踊り出す。しかしどうも真剣さが足りない。全体的にだらけた雰囲気だ。これが延々続くようなら、2度と来ないと言わないまでも2度は見たくない。
が、やっとユニゾンできっちり踊り出した。今までは“序奏”だったのか。それにしては意義が感じられない。
踊りは曲とよくマッチしてはいるが、何かを主張しているという感じではない。一応、タイトルが付けられた30のシーンが展開されているのだが、判然としない。
やがて、あまりダンサーっぽくない人も加わっての賑やかな踊りとなり、メンバーはコートを羽織って退場。帰ったという設定か。ところが、吊り下がっていた布が幕のように上がると、そこには大きな窓があり、はけたメンバーが外で踊っているのだ。意表を突く展開だ。スケボーやマウンテンバイクが通りすぎた時には笑ってしまった。
冒頭はうんざりだったが、途中からは色々工夫された展開が楽しめた。それほど高度なダンステクニックは見られなかったが、“見せる”ダンスにはなっていたと思う。
★バレエ・カクテル vol.4 (11月28日掲載)
11月24日(金)20:00-21:15 東京都新宿区・セッションハウス地下スタジオ 主催:BalletTheater NELOMOTO★PA
「Native Song」玉木 桃:何かのオーディションで、私が審査員であれば合格を下していただろう。が、作品としては可も無く不可も無し、という感じ。曲が変わって後半が始まったかと思ったら、あっ気無く終わってしまった。1曲だけで終わっても良かったのではないか。
「Shoot The Day」田村ひろ子:活動的な音楽に合わせ、アクション・ドラマ風の動き。「指鉄砲」が子供っぽいが、雰囲気は伝わって来る。前作よりは集中できるが、やはり曲が変わってほどなくして終わる。
「闇の輝き」江頭愛子:使用曲が現代音楽にもかかわらず、動きはバレエ・メソッドそのまま。逆にそのアンバランスさが飽きさせない。アテールのアラベスクからプリエ無しでルルべになる動きが何度もあるが、実に安定している。ピルエットその他もバランスが良く“模範的”なテクニックである。冒頭から息遣いが荒かったのが気になる。健康状態が良くないのか、鼻が詰まっているのか、あらぬ想像をしてしまった。
「秘密の花園」橋本亮子:衣裳や身体が最もバレエっぽかったが、衣裳は音楽には合っていなかったと思う。頭部を大きく見せるヘヤスタイルも、アンバランスに感じた。踊りは、多少バランスが崩れたのは良いとして、手・腕の動きがやや無神経に思われる。特に指先が曲がったままなのは残念。終盤、影絵で男との何かを思わせたが、結末は割りとあっ気無かった。
「EXIST - W」前半のジャンベとギターの演奏は、つまらないのではなく心地良さで、ついつい眠くなってしまった。後半のダンスは、ソロが長く、何で4人で踊っているのか、と痺れを切らしてしまったが、その後のユニゾンは、軽快なジャズに合わせた踊りで良かった。
★第35回全国中学校高等学校ダンスコンクール(11月28日掲載)
11月23日(木)10:00-21:00 東京都港区・メルパルクホール 主催:日本女子体育大学
中学校37作品、高等学校86作品のうち、高等学校の41作品を鑑賞。その中から幾つかの感想を記す。
「聖なる大地の祈り」尚絅女学院:動きがハイテクニックなモダン・ソロ。
「F-BEST」神奈川県立新城高等学校:普段着のような衣裳で、HIPHOP。明るい。
「プップス・ポップコーン」貞静学園高等学校:カラフルな衣裳でラップ。ユーモラスだが中途半端な感じ。
「万華鏡」京都女子高等学校:ラメ入りの煌びやかな衣裳で、文字通り万華鏡を表現。
「初恋」国際基督教大学高等学校:実は胸の大きな赤いハートは手袋。それを使ったときめきの表現が秀逸。
「私にひそむ善と悪」淑徳巣鴨高等学校:白と黒の衣裳で善悪を表わし、いじめを題材にしているが、結末がわかりにくい。
「サイゴンの空」神奈川県立西湘:とても高校生とは思えない位にうまいソロ。
「空虚な自己…シンドローム」日本女子体育大学体育学部附属二階堂高等学校:綺麗の一言。
「色・いろいろ」富士見丘高等学校:カラフルな衣裳で、帽子や腕カバー等の素材を交換し合うわかり易い作品。
「受けつがれしもの 〜秩父夜祭〜」秋草学園高等学校:特に感動はないものの、こういうものはあった方が良い、と思わせる作品。
「狐火」富士見高等学校:動き、フォーメーション共に良く出来た作品。
「ファイト!! 〜頑張るあなたを応援します〜」女子学院高等学校:文字通り、チアガールの応援。
「向日葵のように」東洋大学附属牛久高等学校:技術は高いが、音楽が合わない感じがする。
「狂葬花」日本大学豊山女子高等学校:中々良かったが、最後の絶叫は蛇足。
「変わりゆく世紀の中で……−絆−」光塩女子学院高等科:青いワンピースで綺麗に踊っていたが、下履きの膝丈黒スパッツは興醒め。
「竹のように」武蔵野高等学校:緑色の衣裳でいかにも竹という感じだが、動きが綺麗で、踊りと言うよりも身体表現という感じ。
「A!?」学習院女子高等科:アメリカン・ジャズで軽快な踊り。高一にしては上手い。
「永遠の翼 〜朱鷺よ未来へ羽ばたけ〜」聖望学園高等学校:衣裳が綺麗で動きも良いが、曲を次々に替え過ぎ。
「青春よ」東京文化中学高等学校:全員おばあさんの格好で、ラテン音楽に合わせて老人風の踊り。アイデアもの。
「MONKEY (ハート) DANCE」千葉県立木更津東高等学校:猿の縫着包みを着ての、モンキーダンス。あまりにもそのまま。
「バケツのうた」神奈川県立弥生東高等学校:バケツを使っての、ピアノ曲とマッチした踊り。
★バレエ「ラ・バヤデール」 (11月22日掲載)
11月21日(火)18:35-21:30 新国立劇場オペラ劇場、当日学生B席:3150円、芸術監督・演出・改訂振付:牧阿佐美、作曲:レオン・ミンクス、振付:マリウス・プティパ、主催:新国立劇場、共催:(財)橘秋子記念財団
古代インドの寺院の舞姫ニキヤ(A・アントーニチェワ)は王に仕えるソロル(C・アコスタ)と恋仲。しかし王は、ソロルに娘のガムザッティ(田中裕子)との結婚を命ずる。彼は承諾してしまい、その経緯を知ったニキヤは、絶望しながらも婚約の宴で祝いの舞を踊る。そして受け取った花篭にし込まれていた毒蛇に噛まれて命を落とす。後悔と絶望の中、ソロルはニキヤの幻と出会い……。
コンテストや発表会ではバリエーションとしては何度も見ていたが、全幕は未見なので見てみる。その結果、これはあまりリクエストが無いだろうと思った。恋仲の男が、女性を裏切って上司の美女と結婚する、という悲話は、今も昔も変わらないという事だろうが、とにかくストーリ展開が平板で盛り上がりに欠けるのだ。
舞台装置や群舞の衣裳はインドっぽいが、主役のクラシック・チュチュには違和感がある。寺院が崩壊するシーンは、バレエとしては適度なスペクタクルだろう。稲光が良く出来ていた。黄金の仏像が舞台を横切るシーンは、思わず笑いそうになったが、後で一踊り(小嶋直也)。踊り自体は良かったが、文字通り金粉ショーの如し。
アントーニチェワは安定したしなやかな踊り。アコスタもダイナミックで拍手喝采だった。田中も良かったが、ピルエットの回数を勘違いしたのか、決めのアチチュードのバランスが崩れてしまった。
第三幕は、「白鳥の湖」を連想させる白いクラシック・チュチュ32名によるコールドで、曲も美しいが故に、前幕と切り離された印象が強い。(17日−23日)
★「現代舞踊公演」 (11月22日掲載)
11月17日(金)18:30-21:00 東京都港区・メルパルクホール、当日券:4500円、主催:現代舞踊協会、共催:文化庁
「聖母の泉」本間祥公作品。出演:小原孝司、豊川美恵子、原田公司、門柳久代、長谷川秀介、本間祥公、他。
若い男女がスペインの泉の前で再来を約束して別れ、20年後に再会する。
舞台下手に5人の生演奏。曲も踊りも美しいが、感情はあまり伝わって来ない。綺麗にまとまり過ぎたという感じ。背広やワイシャツという男性の衣裳と内容から、バレエ調よりもソシアル系の振りの方が良かったと思う。
「からだの中に…」17歳の軌跡 古賀豊作品。出演:内田香、中村友紀、吉原有紀、市橋佳奈、6名の高校生、古賀豊、他。
賑やかなパラパラで始まり、一転、高校生の詩の朗読の繰り返しで展開する。何かと話題になった「17歳」を題材にし、何となく重苦しい雰囲気。動きやフォーメーションは良かったが、テーマがわかりにくい。後半、大量の新聞紙が落ちて来たが、意外に綺麗だった。
「無言の風景」真船さち子作品。出演:能美健志、佐藤昌枝、山下三昧子、清水典人、矢嶋千恵、矢作聡子、他。
白いバスケットと黒いバスケットを巡って生と死を表現しているが、めりはりが無いので鑑賞が少々辛い。ピアノとバンドネオンの演奏は良いとしても、カップルによるあまりにも正当なタンゴは“場違い”という感じ。約40分の長過ぎる作品を見続ける事が出来たのは、狂言回しの宇宙猫のおかげ。
★Music Revolution Dance Renaissance vol.2 (11月13日掲載)
11月10日11日(土)15:00-17:00。青山円形劇場(東京都渋谷区神宮前5-53-1 03-3797-578)。出演:岡 巨全、古川 卓、酒井典子、かわさきえつこ、他28名。料金:前売=4000円(全席自由)。企画・演出・振付・問合せ:Dance Factory Power Bomb(http://www.ny.airnet.ne.jp/p-b/) 045-580-2071
ジャズやHIPHOPと共に、アクロバットやバトンを取り入れたエキサイティングまたはコミカルな作品。特にJ.B.を真似た「J.Bはお好き?」は笑わせながらも彼らしさを堪能出来た。マットを利用した宙返りシリーズは、ダンス公演としては長過ぎた。ロックダンス等、決めの甘い箇所もあるが、総合的には楽しめた。
★ダンス「チコ・マンボ・ショー“メリ・メロ”」(11月13日掲載)
11月9日(木)19:15-20:30、新宿・シアターアプル、料金:全席指定5000円、出演:P・ラフィーユ、P・タリド、J・エストラーダ、A・バルベロ、企画制作:ミュージック リーグ、シティ・ライツ・エンタテイメント、UK
チラシによれば男性バレエだけではなく、他のダンスもあるとの事で期待したが、裏切られなかった。上演は約1時間余りだが、中身は濃い内容だった。
オープニングは幕が下りたままで、往年のミュージカル序曲。
「オブジェ」は、舞台袖から放り込まれる小物を、1列に並んだ4人の男性ダンサーがリズムに合わせて順々に受け取り、それぞれがポーズで決める。小物が無くなるとダンサー自身が隣のダンサーに飛びついての人間オブジェ。
「フレッド&ジンジャー」はアステアとロジャース風のソシアル。
「コンペティション」は、ボールやリングやリボンを使った新体操。女性っぽく演じているのでグロテスクではあるが、雰囲気は良く出ていた。
「湖」は「白鳥の湖」をベースにしており、王子が白鳥より小さいのはよくあるパターンだが、嫌味は無かった。
その他、ダンスの基本を修得した上でのパフォーマンスを見せてくれた。
千秋楽の為か満席で、通路にも壁際にも客は溢れた。カーテンコールは鳴り止まず、スタンディング・オベイションから遂には客が舞台に上がって一緒に踊り出す始末。次の来日公演が楽しみである。
★演劇「ザ・スターダスト」(11月13日掲載)
11月8日(水)14:30-16:00?、東京芸術劇場中ホール、料金:全席指定5250円(この日時以外は6300円)、出演:劇団スーパー・エキセントリック・シアター(第38回本公演)、作:旗野修二、大沢直行、三宅裕司、演出:三宅裕司、制作:潟Xーパーエキセントリックシアター
終戦後にも拘わらず、アメリカ音楽がある所は明るかった。藤田(三宅裕司)は日本のポップスを広めようと一大決心し、やがて「セブン・レインボー」というバンドのドラマーとなる。ある日、前座として来日した女性黒人歌手(NICOLE)の余りの上手さにメンバーは自信を失い、藤田はミュージシャンを諦めてプロデューサーとなるが……。
日本のポップス界の歴史を垣間見させてくれる内容である。
時々混じるアドリブに加え、三宅と小倉久寛のやり取りが漫才のようで大いに笑わせる。久し振りに顔の筋肉が疲れる位に笑った。特に、三宅の、力身の無いとぼけた感じの演技が笑いを誘う。これは映画「サラリーマン専科」でも発揮されていた。
ラストに歌われる「くちづけ」が聞かせる。
★オペラ「エウゲニ・オネーギン」(11月13日掲載)
11月7日(火)18:30-22:00、新国立劇場オペラ劇場、原作:アレキサンドル・プーシキン、台本:コンスタンチン・シロフスキー、P・チャイコフスキー、作曲:P・チャイコフスキー、指揮:S・ランザーニ、管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団、主催:新国立劇場、日本オペラ振興会、藤原歌劇団
聞いた事も無いオペラだったが、チャイコフスキー作曲の11作品の中で最も成功し、世界各国で上演されているとの事なので足を運んだ。
レンスキー(持木弘)は親友のオネーギン(大島幾雄)を、婚約者オリガ(永田直美)とその妹タチヤーナ(小濱妙美)に紹介する。タチヤーナはオネーギンに一目惚れし、彼にラブレターを出すが、冷たく振られてしまう。彼女の命名記念日のパーティーで、オネーギンは自分がプレーボーイであるとの陰口が流れている事に気付き、ここに連れて来たレンスキーへの宛てつけにオリガを誘って踊る。レンスキーはオネーギンに抗議し、とうとう決闘する羽目になる。
19世紀初頭の貴族社会での恋愛騒動だが、ストーリー展開は、今一つ説得力に欠ける。例えば、あの程度のからかいで決闘にまでなるのだろうか(まあ、歌が目的だから良いのだが)。親友を殺してしまったオネーギンは、外国を放浪した後、帰国して、美しく成長したタチヤーナと偶然出会い、かつて冷たくあしらったにもかかわらず求愛してしまう。その気もわかるが、やはり虫の良い話である。
それにしても舞台装置や衣裳が豪華で、S席が21000円というのも致し方ないと思えてしまう。が、やっぱり高いよね。
大島の朗々とした歌いっぷりが良かった。
この曲は初めて聞いた筈なのに、第三幕が始まった途端、記憶が蘇って来た。グレーミン公爵のパーティー場面だが、メロディーや雰囲気はグランド・バレエそのもので、「眠れる森の美女」が連想された。
★ホテル 007「プラザホテルプルミエ」(11月13日掲載)
住所:福岡県福岡市中央大名1-14-13 (092)734-7600
宿泊日:2000年11月3日(金)
客室:4階、シングル(100?室)
料金:不明(間違って姉妹ホテルのプラザホテル天神の資料を持ち帰ったので、参考料金です。S6800円、DS8600円、T9600円)
チェックイン:22:45(15:00) チェックアウト:9:00(11:00)
小ぢんまりした感じのホテル。インテリアはダークブラウンで、一見重厚なデザインだが、素材はそれほど高級ではなさそう。
室内は約6平米。テーブルやソファは無く、机と椅子と、野外で大名が座るような折り畳み式荷物置き。テレビも14型で、必要最小限の設備。冷蔵庫は取り出し自由でビール300円、ジュース150円。別階の自販機も同じ値段。そこには乾燥機付きコインランドリーもある。ドア横にキーを置く窪みがあり、便利だが、外出時には換気扇もエアコンも止まってしまうようだ。
浴室は約2.2平米。シャンプー類は詰め替え式だが、固形石鹸は置いてある。
周囲は商店街と言うよりは飲み屋街で、深夜は若い人が多い。
1階の「Bal Musette」は、オープンカフェ形式の洒落たレストラン。但し、外の眺めはそれほど良いわけではない。朝食は洋食バイキングで840円。内容的にはちょっと物足りない。
宿泊料金100円毎に1ポイント、300ポイントから5%キャッシュバックされるポイントカード制あり。
地下鉄天神駅より徒歩7分。西鉄福岡駅より徒歩5分。
★映画「ホワイトアウト」(11月8日掲載)
監督:若松節朗、脚本:真保裕一、原作:真保裕一、配給:東宝。2000年。2時間9分
邦画にしては、珍しく3個月にわたるロングランという事で見てみた。なるほど、例によってご都合主義はあるものの、中々良く出来ており、集中出来た。
吹雪の中、日本最大の貯水量を誇る新潟県奥遠和ダムが、周辺のダムと共にテロリストに占拠された。犯人は運転員や見学者を人質に、またダムの爆破や放水を脅しに50億円の要求を突きつけて来た。たまたま別行動を取っていた運転員の富樫(織田裕二)は、人質とダムを救うべく孤軍奮闘する。
富樫は雪山で死んだ同僚(石黒賢)の婚約者(松嶋菜々子)に遺品を渡すべく、事故から3箇月後に東京?のオフィスを訪れるが、渡す機会はそれまでにもあった筈。 富樫はあまりにもタフでスーパーマンである。普通の人なら、夏山でもあれだけの移動すら不可能だろう。放水路から脱出した後、河原で気付くシーンはあまりにも安易。
ヘリが雪崩で墜落しているのに、傍らの富樫が健在なのは何故?
犯人の一部が、かつて救った遭難者だった、という落ちは出来過ぎている。
いずれにせよ、寒い中、水と汗にまみれて走り続けた織田の頑張りはねぎらいたい。音楽が良かった。(11月1日鑑賞)
OFFICIAL SITE:http://www.whiteout-movie.com/
★ホテル 006「ホテルニューシルク」(11月3日掲載)
住所:長野県飯田錦町1 (0265)23-8383
http://www.silkhotel.co.jp
宿泊日:2000年10月22日(日)
客室:4階、シングル(99室)
料金:不明(S8000円、D12500円、T14000円)
チェックイン:19:45(15:00) チェックアウト:11:00(11:00)
室内は約8.5平米。小さな丸テーブルと肱掛椅子。机と椅子にTV。浴室は約3.5平米。浴槽は脚を伸ばして入れるが、浴槽も洗面の床も材質が薄いのか、ブカブカしている。ドライヤーは壁に据え付けられている。
入室早々、トイレを使おうと電灯スイッチを入れたが点かなかった。フロントを呼び出すとすぐに駆けつけて電球を取り替えてくれたが、これは大きな失点だ。
2階の「まりえーじゅ」での中華ディナー・バイキングは2500円、朝食バイキングは1200円。フィットネス・クラブ「ザ・メンバー」が併設されており、宿泊者はマシンやプールが無料で利用できる。
道路を隔てて、教会のある「シルクホテル」があるが、他には大きなホテル、旅館は見当たらない。いずれにせよ観光客というよりも、冠婚葬祭関係での利用が中心のようだ。
JR飯田駅から徒歩5分。
★Super Dance Performance「RASTA」(11月3日掲載)
10月31日(火)19:05-21:15、東京厚生年金会館、B席5500円、製作:関西テレビ
「たけしの誰でもピカソ」でラスタ・トーマスを見て、これは見ておかねばと思ったものの、売り切れかなと思いつつ、前日にキョードー東京に電話したら空いてました。詳しい配置はわからないが、2階席の三分の二を使用し、B席の最後列の2列はほぼ満席。その前方のA席はガラ隙だった。ちなみに上野水香も来ていた。
2幕構成で、17曲中トーマスが出たのは5曲。30%で名前を公演名にするのはいかがなものか。と言うのも、いずれもしなやかでバネもキレもあるのだが、今一つ彼の印象が薄いのだ。モダンにしろバレエにしろ、テクニックは十分なのだが個性・キャラが薄かったと言おうか。
トーマス&佐々木の「SHOGUN」は“将軍”なのだろう、上半身裸の袴姿だが、脚の動きが見えず、曲も中近東風で、妙な印象だ。
ダンス・ブラジルは、アフリカ民族の武術・カポエィラを取り入れたアクロバチックなダンスで魅了した。
佐々木大は、トーマスに勝るとも劣らぬ奮闘振り。下村由理恵は確実で安定した動きで安心して見られた。他のF・タバレス=ディニス、D・ティドウェル、R・パヴァム、N・ミュザンも良かった。
いずれにせよ、トーマスの今後には注目である。
★映画「薔薇の眠り」(PASSION OF MIND)(11月3日掲載)
監督:アラン・ベルリネール、脚本:ロン・バス、配給:松竹。2000年、105分。
プロヴァンスの文芸評論家マリー(D・ムーア)は、二人の娘と幸せに暮らしていた。が、一つの悩みがあった。夜、眠りに着くと、朝、ニューヨークの文学エージェント・マーティとして目覚めるのだ。そしてマリーもマーティも精神科医にかかっており、いずれも片方の自分は夢として片付けられていた。やがてそれぞれの世界に別々の恋人が出来、彼女の混乱は拡大して行く。
意識は一つなのに肉体は二つ、というのはそれほど抵抗無く受け入れられたが、舞台がフランスとアメリカでは(地球の裏側でも同じだが)、同じ時刻に同一人物が二箇所に存在する事になる。従って就寝起床による変わり身は崩れてしまう。いずれが本当の自分なのか確かめたければ、精神科にかかる前に、片方の街に行ってみれば一目瞭然だろう。
そういう疑問を抱きつつも見て行くと、フランスの高級ホテルの灰皿をニューヨークに持って来てしまった。こうなると精神世界ではなくSFである。
結局種明かしはされるのだが、十分には納得出来ない。それにしては「夢」がリアル過ぎるのである。そこに登場する人物達の一生懸命さが空しい。
ムーアの美しさとしわがれ声を再確認した映画であった。(10月30日鑑賞)
OFFICIAL SITE:http://www.passionofmind.com/
★UZUME vol.4 人でなしレビュー!「黒と影」(10月30日掲載)
お手てつないで乱歩乱歩、エロスグロテスクグラマラス。
10月27日(金)18:30-20:00。高円寺会館(東京都杉並区高円寺北2-1-2 03-3338-2150)。出演:鵜飼“V”彩子、生田“I.K.U”奈緒美、松崎“L”ルリコ、田中“H”浩子、中野“J”珠奈、今村“I”智香、九谷“Q”由美子、溝上“M”多映子。 http://www2.odn.ne.jp/uzume 料金:前売2000円。
「エロス、グロテスク、グラマラス」と銘打って、江戸川乱歩の作品をモチーフにした芝居とダンス。と言ってもミュージカルではなく、オムニバス形式の芝居と言えよう。
まずは美輪明宏を連想させる有近真澄のボーカル。「黒蜥蜴」「人間椅子」「怪人80面相」「鏡地獄」「虫」「人でなしの恋」「芋虫」「エンディング」の8場、約90分、宇受売(うずめ。女性)8名、男性ゲスト2名。
V(鵜飼):長い台詞で幕をつなぐ案内役(江戸川乱歩役)。台詞を覚えるだけでも大変そうなのに踊りもあり。「他人事」は「人事」と言って欲しかった。
H(田中):「四十八手」を研究中?とあって大人の色気あり。プリンセス・オブ・エロス。
柾木(有近):不気味なガリ勉タイプを好演。歌手だと言うが、演技なのか活舌が少々気になる。
オープニングの両婦人の会話は、ちょっと声がでか過ぎたと思う。それが「いやなおばさん」を強調しているとも言えるが。
主旨通りだろうが、グロテスクな題材であった。いわゆる差別用語もポンポン出て来たので、来ている観客の反応が少々気になった(その手の関係者が居ないとも限らないので)。反面、適度なユーモアとお色気も混ぜ、飽きる事無く過ごせた。
踊りの質や衣裳や作品全体を考えると、2000円は安過ぎると思う。
★ダンス「The word is “SEX”U」(10月30日掲載)
10月26日(木)21:00-5:00、club CORE(東京都港区六本木3-8-18 MTビルB2F 03-3470-5944)。ショータイム=22:00(メイン)、24:00(大人向け)、1:30。料金:3000円(1ドリンク)。出演:Team Amadera(http://team_amadera.tripod.co.jp/)。
21時過ぎに入ったが、客は20名ほど。開演時間の22時前には100名を超えていたとは思うが、結局、フロアで踊る人は居なかった。クラブへはあまり来ないが経験からすると賑わうのは24時を過ぎてからのようだ。
予定を5分過ぎてのスタート。ラップに続いてバラード。ボーカルのLa Pearlは中々聞かせるが、後で歌った日本語の歌はちょっと聞き取りにくかった。歌っている途中で男性が出て来て佇むが、彼女の方はコンタクトを取っているのに彼の方は独りの世界に終始。何らかの関係を見たかった。
次にようやく(?)セクシーダンス。チャールストン調の衣裳にパンツチラチラ(勿論これも衣裳)で、勢いよく腰が振られる(伊藤、宮崎、井口)。男(役)が加わり、男女の絡みも入る。中野の男装がカッコイイ。
意表を突いたのはボクササイズ風の衣裳の二人(田中浩美、中野)。激しい動きだがキレがあって、結構色気もある。早い動きには色黒が似合うようだ。
段上でポールを使ったセクシーダンスが2曲(REI、中野)。映画では何回か見たが生は初めて。同じソロでも1本のポールがあるだけで色んな動きが出来るものだ。
最後は着物姿でのHIPHOP(小西教之、鶴丸、田中英輔)。これも動きにキレがあり、それだけでも楽しめるが、番傘を使ったユーモラスなシーンもある。
約45分間、15名、12曲。ダンステクニックは上級で飽きさせない内容だった。中野の銀髪ヘヤはいかにもカツラっぽく取って着けたよう。赤味がかったヘヤで良かったのではないか。
コンセプトは「「性器」を見せずにエンターティメントとして「性」を表現していきたい。いかに見せずに、視覚で男女を感じさせられるか。それが私達、Team Amaderaのテーマ、SEXY,COOL,WILD。それをレベルの高いダンスで見せたい。」衣裳や振りは、確かにSEXYでCOOLでWILDでダンスのレベルも高かったが、一つのイベントとしての統一性に欠けたような気がする。
それから、ダンスによる「性」の表現と言うが、外では着られないような衣裳や肉体を誇示するような振りは、逆効果のような気がする。それはそれで使い道はあるが、例えば、普段着っぽい衣裳で静かに動くだけで出せる色っぽさを期待したい。
いずれにせよ、自分もしっかり練習っしなくっちゃ、という励みにはなった。
★映画「パトリオット」(10月30日掲載)
監督:ローランド・エメリッヒ、製作総指揮:ウィリアム・フェイ、脚本:ロバート・ローダット、配給:ソニー・ピクチャーズ、エンタテイメント、2000年、164分
18世紀、議会が召集され、アメリカはイギリスとの開戦を決議した。開戦に反対した父親ベンジャミン(M・ギブソン)に失望した長男のガブリエル(H・レジャー)は、父親に相談も無く入隊してしまった。戦場は徐々に広がり、やがてベンジャミンの家の近くまで迫って来た。彼らは米英の区別する事無く負傷者の手当てをしたが、そこへ冷酷な英国軍のダビントン大佐(J・アイザックス)が現れ、一家は戦争の渦に飲み込まれて行く。
文字通り大作である。おびただしい兵士による戦闘場面を始め、よくぞ作れたと思う。
現代から見れば滑稽な、隊列を組んでの一斉射撃や、平和に暮らそうとしても否応無く兵士以外の人間が犠牲になって行く戦争というものが、いかに残酷であるか事か。そしてそういう犠牲を払って作られた国がアメリカ合衆国である事がよくわかる。
家族を守る為に立ち上がる父親は、一種のヒーローであるが、映画では実にわかり易い姿で描かれている。家族への愛が、喋れなかった幼いスーザンの口を開かせる。そのシーンでは熱いものが込み上げて来た。翻って現代における父親の戦いは会社勤めという事になろうが、その姿は家族には見えていない。(10月25日鑑賞)
★映画「オーロラの彼方へ」(10月30日掲載)
製作監督:グレゴリー・ホブリット、脚本:トビー・エメリッヒ、配給:ギャガ・ヒューマックス、2000年、117分
1999年、ニューヨークにオーロラが発生していた。ジョン(J・カヴィーゼル)の家に遊びに来ていた友人の子供が、納戸から古びた無線機を見つけた。スイッチを入れるとどこかの男と交信が出来た。それは、30年前のジョンの父親(D・クエイド)であった。しかもその日は父親が火災で焼死する前日だった。ジョンは父親を救うべく災いを回避するアドバイスを送り、父親は命拾いをする。しかし、歴史を変えてしまった為に、彼らに別の危機が訪れてしまう。
何の予備知識も無く見たら、冒頭が火災救助のシーンだったのでアクション映画だと思ったが、家族愛の話だった。
私の考える時間の観念は、例えば無限大に広いジグソーパズルが無限に重なって行くような感じで、過去のある事柄を変えるという事は、遥か下方のパズルの一つのピースの形を変えるという事であり、その結果それ以降の全てのピースが変わってしまう、というイメージである。この映画のように、ある部分だけが変わってしまうという事は矛盾していると思う。
いずれにせよ非現実的な話なのだが、この映画のストーリー展開にはある程度の説得力があり、その非現実性をクリアしている。つまり、あり得ない事ではあるが、主人公の、家族や犠牲者を救おうという必死の姿を、ついつい応援してしまうのである。多少の“無理・無茶”には目をつぶれる。(10月24日鑑賞)
★バレエ「松崎すみ子バレエ公演」 (10月23日掲載)
10月17日(火)18:30-20:30。東京芸術劇場中ホール(東京都豊島区)。A席5000円。演出・振付:松崎すみ子。主催:バレエ団ピッコロ
1.One Moment/Day/Life
戦争が終わった日本?、荒廃の中、進駐軍?の軽快な音楽で人々は踊り出す。ジャズ、ミュージカル、007……。モダンバレエとジャズダンス、途中でモダンダンスも入る。戦後の音楽史を辿っているのかと思ったが、それほど厳密ではない。あれこれあります、という感じ。
2.旅芸人
砂漠を歩く旅芸人一座。興行地に着き、テントを立ち上げるが、座長(小原孝司)が膝を傷めてしまい、仕切り役をある男(篠原聖一)に託す。彼は座長の妻(下村由理恵)に心を寄せているが、彼を慕う女性(佐野明子)が座の中にいた。一時は彼らの仲が気まずくなるが、妻は座長の元に戻り、一座は次の興行先に向かう。
仕切り役を目指しての腕自慢、男女関係の確執がアクロバチックなバレエで展開される。ストーリ展開が平板なのでドラマ性が薄いのが残念。
プログラムには大まかな出演者紹介があるが、詳しい配役表が欲しい。
★ダンス「ハーレムで見た夢」 (10月23日掲載)
10月15日(日)13:30-15:45。東京グローブ座(東京都新宿区)。A席3500円。出演:ONNA組2000。演出・構成:和 眞衣香。振付指導:江川マヤ
ハーレムのアポロシアター出演を夢見ながらダンスに励む日本の若者達。彼らの心配の種は、恋人ai(北岡沙紀)が流れ弾で死んでから、酒と薬に溺れるAkira(和 真衣香)だった。彼を励まそうとパーティーを開くが、彼は心を開かない。そしてとうとう……。
歌あり踊りあり芝居あり、となればミュージカルとなろうが、それにしてはそれらが分離していたように思う。つまり、私のイメージするミュージカルは、台詞がいつの間にか歌となる、芝居の所作がいつの間にか踊りとなる、という展開なのだがそうではなく、それぞれが独立していたのである。例えば、台詞が終わってから前奏が始まるので、歌い出すまでの間が空き過ぎて、ぶつ切れの感じがするし、踊りも、ダンサーと他の出演者が別々で、独立したダンスショーになっていた。
また、ストーリ展開が平板な感じで、いわゆる起承転結のような“波”が少なく、しかも結末があっ気無い。人物像もHiroshi(山川直美)以外は、あまり描けなかった。
デュエットの場面で踊られる白い衣裳のロングスカートは、あの振付であれば膝丈位で、材質ももう少し軽い方が良かったのではないか。
踊りの質は高く、見取れてしまった。動きの切れも良く群舞の動きもよく合っていた。HIPHOP系もあったが、全体の印象としてはジャズダンスという気がする。歌はキャストの中では北岡が良かった。Festaの歌は踊った直後、或いは踊りながらにしては良く歌えていたと思う。主な出演者とは面識があったのだが、踊りをちゃんと見たのは初めてに近く、そのハイレベルに驚いた次第である。
ゲストの天方直美や船木淳は、ダンサー同志のパーティーシーンに登場するには豪華過ぎたと思う。アポロシアターの場面を設けた方が良かったのではないか。それにしても船木淳の歌唱力には驚いた。
ハーレムの雰囲気を出す為に、ゲストに井上佳代子や数十名の西村あきこ&Ako'sFamiliyがゴスペルを歌い、中々大掛かりだった。(開場前に、近所のコンビに白装束の若者が群がっていたが、出演者とは知らなかったので、ちょっと不気味な光景だった。)
約2時間、見応えはあったのだが、私としては構成にやや不満が残った。
★ダンス「タップダンスを踊りませんか? VOLUME2」 (10月13日掲載)
10月9日(月)17:00-18:55。武蔵野スイングホール(東京都武蔵野市)。2000円(全席自由)。出演:AB-TAP'S、RZU!、他。振付:MAYOU、鈴木厚子、ASAKI、他
第一幕の冒頭は、AB-TAP'Sメンバーの登場。ステップ自体はそれほど高度ではないが、皆さん身体全体で踊れているので、群舞としては良かった。
海老原誠、柏木聡、照井寛らは、雰囲気が少し硬い。もっとリラックス感があれば良かった。
アフリカの太鼓とタップを組み合わせたDJAPPは独創的。だが、タップ自体が一種のパーカッションだから、音が被って勿体無い気がしないでもない。
P.P.LADYは、これって、無くてもいいんじゃないかと思うくらいに単純だったが、後で登場するB.B.LADYとセットになっており、この一連の作品は、定番として使えそう。P.P.LADYの佐田美奈子、B.B.LADYのASAKIが場慣れしている感じで、安心して見ていられる。
HIPHOPのRZU!は、もう少しキレがあれば良かった。
ASAKI、MAYOU、波多つなみはハイレベルだが、ファンク系がほとんどなので、ちょっと飽きてしまう。
みなみえのきの芝居は、ちょっとぎこちない感じ。荒木朝美は、一見素人ぽいがいい味が出ている。小鍛冶さおりは、演技もダンスも良かった。
第一幕の最後のAB-TAP'Sメンバーは、スタンプが強過ぎた気がする。
全体的に、料金の割りには見応えがあったが、ゲストが多かったからかな、という気もする。AB-TAP'Sだけでどこまで出来るか……。しかし、タップを始めて1,2年、というのは信じられないくらいに良く動けていた。次回が楽しみである。
★映画「ダンサー」 (10月13日掲載)
監督:フレッド・ギャルソン、脚本:ジェシカ・キャプラン、リュック・ベンソン、製作:リールー・プロダクションズ、配給:日本ヘラルド映画、1時間34分
毎週末、DJとのバトルで勝ち続けるインディア(M・フライア)はブロードウェイの舞台を目指す、口のきけないダンサーだ。彼女のマネージメントは兄のジャスパー(G・ウィット)が務める。妹思いだが一本気な所がたまに傷で、職場ではトラブルメイカー。
ある日彼女はオーディションを受けて合格するが、障害の為に失格となる。二人は落ち込むが、たまたまクラブでインディアのダンスを見た科学者のアイザック(R・イーストマン)が、自分の研究に彼女の協力を求め、新しいダンスへの展開が始まる。
何の予備知識も無いまま、タイトルに引かれて見た。確かにインディアのダンスは上手いが、それだけに何で今更オーディション?という気がする。クラブにくすぶっているのは何故? 使われなくなった調理工場?で寝起きする二人だが、生活感が全く無い。二人の悲しさもステレオタイプ化された感じ。起死回生策となるアイザックの研究も、斬新さが無く、インディア自身のダンスを超えているとは思えない。全体的に中途半端な印象である。(10月7日鑑賞)
★オペラ「マクベス」 (10月13日掲載)
10月7日(土)18:00-21:00。新宿文化センター(東京都新宿区)。3000円(全席自由)。出演:山口邦明、日隈典子、小田川哲也、絹川文仁、山川高風、遊告オペラバレエ団、新宿オペラ合唱団、新宿オペラ管弦楽団、他
1997年に続く再演。合唱団はアマチュアである。
日本語上演という事で安心していたが、半分以上は聞き取れなかった。声は勿論出ているのだが、日本語として理解できなかったのである。粗筋は大体知っており、プログラムにも書かれていたので進行は把握できたものの、歌の内容を聞き取ろうという努力が大きく、歌自体を楽しむ余裕が無かった。
マクベス婦人のしたたかさ、マクベスの憔悴振りの表現が今一つ。
冒頭で、同じ衣裳の魔女が何十人も登場したので、あとで登場する6人の魔女の不気味さが薄まってしまった。しかも、カツラの髪型がオペラよりもダンスショーに似合いそうだった。若さを隠すべく付けたであろう振りが動物を連想させた。
バンコーの霊や煮立った大釜の照明は効果的だった。
相当な練習量で、区民としての手作り経験としては収穫があった事と察するが、部外者としては少々物足りない内容だった。
★ダンス「Can't Stop Dancin' 2000」(10月7日掲載)
10月5日(木)19:00-21:20。青山劇場(東京都渋谷区)。S席7000円。ゲスト出演:須山邦明、裕幸二、平山高良、大澄賢也、ギャリー・エイヴィス、清水典人、雪村いづみ、世良譲トリオ、コンボイ
名倉ジャズダンススタジオ第14回公演だが、今回は名倉加代子舞踊生活40周年記念公演でもある。
仕事が入らないと判明したのは公演当日。チケット販売状況を問い合わせると4日間6回公演は全て完売。当日券は前日にならないと分からないとの事で、この日は立ち見を4000円で30枚ほど売ると言う。
窓口で30分ほど並んだが、二人前で売り切れ。あとはキャンセルが出れば座席券が買えると言うので更に20分ほど待つと補助席で7000円也。今一つ仕組みがわからない。が、とにかく1曲目の終わり近くに着席。
いつもながらの完成された舞台だ。約50人が踊っても、止めるべき所はビシッと止まる。踊っている最中は手の位置や角度、動きのズレなどは多少あるものの許容範囲である。コンピュータ制御によるフロアの上げ下げや、背景造作物の上げ下げとダンスもマッチしている。
第1部はG・ガーシュインとA・ピアソラ、第2部はジャズという定番の曲で、正統派ジャズダンスが踊られるが、何となく古い感じがしてしまうのは、パラパラはともかく、流行のHIPHOP系のダンスが無い為だろう。しかし、ジャズダンススタジオ主催なんだからこれでいいのだ。
名倉の踊りはとても還暦とは思えない。大澄賢也が健闘。
各界57名が寄せたコメントが読みたくて1500円のプログラムを購入。結構売れていた。メンバーの顔写真に比べてベテランのポーズ写真があまり良くない。
★バレエ「ジゼル」ミラノ・スカラ座バレエ団 (10月7日掲載)
9月27日(水)18:35-20:50。東京文化会館(4階)
バレエ公演鑑賞自体が久し振りである。当日券の最低料金は8000円。思い切って入場したら、もっと低価格の席ががらすきではないか。何故販売しないのだろうか。
出演が予定されていたジゼル役のアレッサンドラ・フェリは懐妊の為、オレリー・デュポンが出演。伸びた足の甲が綺麗である。アルブレヒトの実態を知って気が振れる所は、もう少し異変を感じさせて欲しかった。
ヒラリオン(B・タンボーネ)は、第一部でのたたずまいが余りバレエダンサーぽくなかった。
アルブレヒト(M・グエラ)も含め、技術的には全体的に良かった。
ステージから袖にはけた後の足音が、ちょっとうるさかったのが残念。
配役表が無料で配られたのは有り難い。
★ダンス「Galili Dance+銀鼓(GINKO)」日蘭ダンスコラボレーションプロジェクト(10月7日掲載)
9月30日(土)13:00-14:30?。東京都港区・国際交流基金フォーラム。当日4300円(全席自由)
オランダを代表する振付家イツィク・ガリリがカンパニー「ガリリダンス」と共に来日。
1.「...Enter」振付:イツィク・ガリリ、ダンサー。出演:J・ヌーシャイネン他3名。
男が一人、曲に合わせて痺れるような動き。パントマイム風。やがてもう一人、そして二人が近付き、4人の群舞となる。何を表現しているのかはよく分からないが、ロックダンスとは異なる身体の“決め”の動きが楽しめた。
2.「B-SIDE」振付:イツィク・ガリリ。出演:藤里照子、池内新子、ジュンキョウヤ、若松美黄
いろんな曲に合わせて4人が踊る。それぞれの関係はよく分からないが、何となく楽しそうに踊っている。平均年齢64歳の為、技術的には“おとなしい”が、それなりの年輪を感じる。
3.「The Drunken Garden」振付:イツィク・ガリリ、ダンサー。出演:J・ヌーシャイネン他6名。
「肉布団」のような厚手の大き目の衣裳を着た7人。手拍子や身体でリズムを取りながら、曲無しでスタート。踊ると言うよりも身体表現と言う感じ。叫びもある。やがて曲が付き、主にカノンで踊られる。ちょっとコントじみた動きもあり、全体的にリズミカルで飽きない。一人の女の上方から薔薇?の花が落ちて来る。男がそれを衣裳の中に詰め込み、移動して衣裳を脱ぎ出すと、女も脱いでオールヌードとなる。初めはちょっと驚いたが、暗闇の中で一条の淡い照明でほの明るく踊る姿は決して猥褻ではなく、嵩張った衣裳によるそれまでの雰囲気と異なる、稀少な舞台だった。
★映画「マルコビッチの穴」 (9月30日掲載)
監督:スパイク・ジョーンズ。脚本:チャーリー・カウフマン。配給:アスミック・エース。1時間52分。1999年。アメリカ。
人形使いとして相当なテクニックを持つクレイグ(J・キューザック)だが、仕事に恵まれず、子供を欲しがる妻ロッテ(C・ディアス)に経済的理由で応えられない。意を決して求職に訪れた会社は、階高の低い妙なフロアにあった。採用され、仕事に励んでいると、ふとした事からキャビネット裏の壁に穴を見つける。そこに入ってみると、15分間だけ、俳優マルコビッチの“中”に入る事が出来た。
彼は一目惚れした、同じ階のOLマキシン(C・キーナー)と一緒に、変身願望を持つ客を相手に商売を始める。それを知った妻もマルコビッチを体験するが……。
他人の中に入る、しかもビルの壁の穴から、という荒唐無稽な話だが、妙に真実味がある。制限時間が終了すると高速道路脇に“落ちて”来たり、他人の身体を使ってセックスしたり、実はその方式で長寿を保っている人々が居たり、常識でも論理的にも考えられない脚本だが、白けずに見られる不思議な映画だ。ケチを付けようと思えば幾らでも付けられるが、その気は不思議に萎えてしまう。
7 1/2という、これまた考えられない階数を設定する独創性。現実には半分の階高のフロアを造ると却って割高になるだろうが、天井が低いから賃貸料が安いという話も説得力を感じてしまう。
SFと言うには非科学的過ぎるのだが、自分とは別の性を望んだり、手の届かない人物に身近な人物を装って近付いたり、その他、人が持っているであろう色んな変身願望について考えさせてくれる。
人形使いが実に妙技である。(9月29日鑑賞)
★Tango des Quarantans vol.2 Carmen 2000(9月30日掲載)
9月23日(土)19:00-21:00。青山円形劇場(東京都港区)。構成・演出・振付:上田遥。主催:オフィス・ダム、上田遥ダンスファクトリー。制作:オフィス・ダム。5000円(全席自由)
PART-1「カルメン2000」 熊本工場から東京の総務部に単身赴任してきたサラリーマン。慣れない仕事に疲れて帰り、たまたま見たフラメンコ教習のテレビ番組に勇気付けられるが、夜の繁華街で……。
芝居仕立てで、オーバーなアクションが笑える。円形劇場の特性を生かし、周囲の壁にその場その場に相応しいシーンが映し出される。
サラリーマン(足川欽也)はもっとおじさんぽく踊って欲しかった。家族と離れて暮らす侘しさが欲しいから。カルメン教師(原田公司)はダンディーに決まっていた。マダム(佐々木想美)はもう少し怪しさ、妖艶さが欲しい。その他、踊りの技術面は言う事無し。
PART-2「タンゴ2000」 8曲、8種類のタンゴ。ソシアルとは異なる、ジャズぽい、バレエぽい感じの踊りだ。いずれも踊りは言う事無し。こちらはバンドネオン、ヴァイオリン、ピアノ、コントラバス、ギターの生演奏。
これだけダンステクニックが揃いも揃って上級だと、通常ならPART-2で満足出来るのだが、ストーリー性のあるPART-1の方がどうしても印象に残ってしまう。
いずれにせよ、ダンスの楽しさを満喫させてくれた。
★第4回シアターX インターナショナル・ダンスフェスティバル2000(9月27日掲載)
9月23日(土)14:00-16:20。シアターX(カイ)(墨田区両国2-10-14)。本公演(メインテーマ「中国の不思議な役人」)のDプログラムを鑑賞。各3000円(全席自由)
1.心と身体の分裂と統一、そして解体:山田浩子
正直に、テーマである「中国の不思議な役人」がどのように表現されているかと考えたが、帽子が中国風なだけで、あとは音楽に合わせて身体を動かしているだけ、という感じ。ソロにしては、時間と空間を使えていた。
2.その欲望、触れて詠んでみて食べて。:康本雅子+山崎美千代
これは中国らしさが微塵も無い。音楽は中南米風、ハワイ風だし、動きは日本女性的仕草が出て来る。駆け足と機械的動作を繰り返す山崎と、芝居風ダンスを展開する康本との関係がわかりにくい。終盤の暗転が終了かと思わせるし、最後の“決め”が曖昧なまま終わって挨拶に移るのは、ちょっとすっきりしない。康本の動きは良かった。
3.宦官:張春祥+新潮劇院
これぞ中国、と言うべき京劇。冒頭の音楽が非常に不気味で、子供が泣き出すほど。あのいでたちでアクロバット的な動きが出たのには驚いた。良かったが、本公演には突飛な印象。
4.宴:公募選抜出演者
男性3名、女性8名による舞踏風ダンス。それぞれが時に独自に、時に関連を持って、踊るというよりは動く感じ。飽きる事は無かったが、やはりテーマは感じなかった。
★ダンスプラネットNo.7「ピノッキオ」(9月27日掲載)
9月22日(金)19:00-20:35。新国立劇場小劇場(1階S席、5250円の半額にて鑑賞)。演出・振付:中村しんじ
てっきり席は余っているだろうと思い、開場時間前に行ったら売り切れだった。幸い、招待席のキャンセルが出たので当日券が買えた。
開演前から、白衣を着た出演者(患者1:石塚智二)がホワイエや客席を回り、辻褄の合わない台詞を喋っている。舞台奥には鉋屑が雪のように舞い降りている。舞台上手には、椅子に座ってひたすら人形を撫で付ける白衣の人物。始まると、その人形が彼の手を離れ、フロアを鉋屑の方に向かって歩いて行く(糸で操られているようだ)。やがて鉋屑に辿り着くと、その中からピノッキオ・患者P(川野眞子)が出て来た。
ここは精神病院。医師も患者もピノッキオの仮面を着けている。どうやら婦長(キツネ:本多麻理)と看護士(ネコ:栗原宏之)が取りし切っているようだ。医師ゼペット(坂本登喜彦)はその気迫に飲まれながら、惰性で治療を続けている。が、人間に生まれ変わった患者Pは、他の患者を快方に向かわせる何かを持っていた。ゼペットは彼女に興味を示すが……。
描かれる世界は病院というより収容所だ。婦長と看護士が独裁者で、マゾとサドのような関係。患者は奴隷か。全員が被っているピノッキオの仮面が不気味さを誘う。そういうネガティブな世界に光明を照らし、希望の星として登場するのが患者Pだが、化粧のせいか貧相で、余り明るい期待が持てない。患者1は出演と共に小道具の操作役も務めるので、立場が中途半端な感じがする。
童話の「ピノッキオ」とは内容が全く異なる。彼が現代に人間として生まれたなら本当に幸せになれただろうか、という疑問から生まれた作品だと言う。管理社会の中での本当の人間らしさとは何か。しかし作品からそれを読み取るのは難しい。
ステージに作った抜け穴による患者Pの脱出は、それまでに穴を使用しているのでネタバレだった。影絵による注射シーンも余り効果的ではなかった。板を背負って重苦しく歩くシーンはテーマを象徴している。ダンスはいずれも秀逸。
★芝居「ジジイ ワズ ラストダンシング」 (9月24日掲載)
9月18日(月)17:00-20:00?。早稲田ドラマ館。作・演出:里吉哲太、舞台監督:仁藤智浩、総合振付:古賀豊、ダンス指導:吉田学、制作:桜庭祐輔、宮脇美生、下北青春涙劇場
ゴビ砂漠を駱駝に乗ってさ迷う2組のカップル。その内の一人が砂の波に飲まれ、そしてまた一人……。
場面変わって、砂漠に倒れている一人の日本兵。そこへモンゴルの娘が通り掛かり、水筒の水を口移しで含ませて介抱する。彼は娘の村で暮らし、やがて奥義の拳法を修得し、旅に出る。
再び場面は変わり、とある病院。そこでは奇妙な診察が行なわれていたが、やがて遺伝子組替えと、ダンスに目覚めた不死身の老日本兵が絡んで……。
ジジイがどんなダンスをするのか、タイトルに引かれて見てみた。結局、彼はダンスの企画振付者であって、彼ががんがん踊る訳ではなかった。群舞は独創性のある振りで楽しめたが、それよりも拳法修行の立ち回りが、間合いも良く迫力もあって見応えがあった。モンゴルの衣裳も、どこまで正確かは不明だがそれらしい雰囲気があった。
それに比べると後半の病院シーンはギャグで一転。全体のストーリ展開もややこしく、不死身の拳法の達人が一転してダンスに熱を入れる姿に説得力が欠ける。話が凝り過ぎた感じがする。人物像も余り印象に残らない。
冒頭シーンで、縫い包みの駱駝の首が股間から“生えて”、ポッコンポッコン動かしているので、これは際物かと思ったが、そうでもなかった。
ジジイの島村比呂樹、医師の石井崇、絹江の奥村愛が好演。
★ホテル 005「ホテルニューオータニ熊本」 (9月18日掲載)
住所:熊本県熊本市春日1-13-1 (096)326-1111
http://www.kys-newotani.co.jp/ja/kumamoto/
宿泊日:2000年9月8日(金)
客室:1125(11階、ツイン)(130室、シングル、ダブル、ツイン、デラックスダブル・ツイン、和室、スイート)
料金:不明(S11000円-/人、DT15000円-/人、DDT32000円-/人、和36000円-/人)
チェックイン:15:00(原則14:00) チェックアウト:11:00(原則12:00)
ベルボーイ、案内係、フロント、いずれも柔和な表情で親しみが持てる。
ルームキーに付いているホルダーは勾玉。部屋に入ると広くてビックリ。またまた写真を撮ってしまった。ベッド、TV、机、ソファ、丸テーブルのある部屋が約14平米。ドレッサー、クロゼット、浴室のある部屋が約3.6平米(両者はドアとロールスクリーンで仕切る事が可能)。
ドレッサーは三面鏡になっており、綿が準備されている。
浴室は約3平米。居室とは段差が無く換気は良好。浴槽が広く、脚を伸ばして湯に浸かれる。備品にヘチマ束子とは珍しい。壁掛け電話あり。床は人造大理石。
窓は開かない。洒落たロールスクリーンカーテンだが、周囲から明かりが漏れてしまう。
ドア脇にはルームキー置きを兼ねた省エネスイッチ。冷暖房は0.5度単位で設定可能。
お茶は、ティーバッグと共に、茶葉も用意されている。
BGM、ラジオが無いのが残念。
エレベータは金色を上手く配色して豪華な感じだが、鏡が無いのが惜しい。エレベータ前の灰皿には白砂が入っているが、ホテルのマークが浮き彫りにされているのがお洒落。
朝刊は袋詰めで各部屋の外に配達される。
朝食は1階の「フォンタナ デイ オータニ」。和洋バイキングだが、水とコーヒーはテーブル・サービスあり。品数がちょっと少なく感じた。
JR熊本駅から徒歩1分(この駅の外観がお洒落だ)。熊本空港から車で約40分。周辺は再開発中で、空き地、老朽家屋、閉店店舗、発掘中の遺跡等が混在しており、ごちゃ混ぜ状態。繁華街は車で10分ほど離れた上通・下通オーニング街。
★映画「TAXi2」 (9月15日掲載)
監督:ジェラール・クラヴジック。脚本:リュック・ベッソン。製作:リュック・ベッソン、ミッシェル&ローラン・ペタン。配給:日本ヘラルド映画。(9月12日鑑賞)
ラリー中の車を1台のタクシーが追い抜いて行く。産気付いた女性を乗せて病院に急ぐダニエル(サミー・ナセリ)だ。彼女は無事に出産し、彼は恋人リリー(マリオン・コティヤール)の家に駆け付ける。彼女の両親に会う為だ。彼女の父親ベルティノー将軍(ジャン=クリストフ・ブーヴェ)は、幸いダニエルを気に入り、戦争話に夢中になってしまい、来仏する日本の官房長官出迎えを忘れてしまう。そこでダニエルの出番、将軍を空港まで送る。そしてダニエルはひょんな事から官房長官を乗せた特別警護車を運転する事になるが、一行の行く手には怪しい黒装束の集団が現れる。
本作は今年の3月29日にフランス全土の830館で公開され、公開1週間の動員新記録がフランス映画史上No.1だったらしいが、フランス人と日本人の好みは異なるようだ。
アクション映画を期待したがコメディーだった。その積りで見ればもっと楽しめたかもしれない。車の運転に関しては、レースやスピンしての停車等、それなりの高度な技術が使われているようだが、街中のカーチェイスはカット編集が多く、迫力は余り感じない。クラッシュシーンも割りとあっさりしている。パトカーが団子状にクラッシュして行くシーンは、余りにも不自然で、ただただ無駄という気がする。
特別警護車がいかに安全であるか、をシュミレーションで見せるが、馬鹿馬鹿しくあるものの、面白く見てしまう。
プログラムには、タクシーがプジョー406の改造車である事や悪漢の車が三菱ランサーである事が何度も書かれているが、映画だけでは、一般人にはそこまでは理解しにくい。が映画を楽しむには特に関係無いだろう。
日本人というのは、やはり“東洋の神秘”なのか、ゲイシャ、キモノ、ニンジャで描かれている。冒頭の柔道場面は、空手が混在しているようだ。しかし、ニンジャの逃走シーンや、刑事ペトラ(エマ・シューベルイ)と官房長官のSPユリが、ニンジャと戦うシーンは迫力があった。この映画の売りである、特撮の不使用は、こういう所で効果が発揮されよう。
マルセイユもパリも、フランスの警察はおっちょこちょいで当てに出来ない、タクシー運転手のダニエルの方がまともで頼り甲斐があるように描かれているが、実際はどうなんでしょう。間抜けでも、“臭い物に蓋”よりはまし?
★映画「伝説の舞姫 崔承喜(チェ スンヒ)」 (9月15日掲載)
監督・脚本:藤原智子。出演:金梅子、創舞会、他。製作:崔承喜の映画をつくる会、日本映画新社。配給:岩波ホール。日本/2000年/90分。(9月6日鑑賞)
今は亡き舞踊家・崔承喜の足跡を舞踊家・金梅子が辿る。一流の画家に描かれた姿、舞踊評論家、演劇評論家、同級生の証言や、数少ない映像によって、崔の業績を洗い出している。
1944年、帝劇での20日間公演が連日満員だったというのは、驚異である。その彼女が何故「伝説の舞姫」なのか、何故こんなに資料が少ないのか。何故、1960年代以降の消息は不明なのか。映画で語られる彼女の偉大さを思えば思うほど、乏しい「記録」が歯痒く、残念である。
一人の舞踊家の再評価に留まらず、朝鮮・韓国、日本の歴史、文化を考えさせてくれる。
韓国舞踊の証言者の中に、以前、同じタップダンス教室に通っていた女性が居たのにはびっくり。その後はフラメンコに傾倒していたはずが……。いずれにせよ、舞踊を続けている姿を見て嬉しく思った。
★オペレッタ「チャールダーシュの女王」 (9月15日掲載)
9月5日(火)18:30-21:00。東京都豊島区・東京芸術劇場小ホール1。料金:2500円(全席自由)。指揮:米崎栄和。台本・演出:池上誓一、振付:堤紫歩。問合せ:グレース・ファイブ・オフィス 042-328-8848 byron@jupiter.interq.or.jp
第12回池袋演劇祭参加の、グレース・ファイブ第5回公演。初見。
「チャールダーシュの女王」と呼ばれる歌姫・シルヴァ(中島佳代子)はアメリカ公演に発とうとするが、恋人のエドウィン伯爵(武田夏也)はそれを阻止する為に結婚を誓う。しかし、彼には召集礼状が届き、自宅に帰る。実はそれは、彼と従姉妹のスタージ(小松加奈)を婚約させようとする両親の策略だった。婚約発表の日、シルヴァはパトロンのボニー(華山賢治)の妻と偽って、エドウィンに近付く。彼はスタージとの婚約を破棄するが……。
オペラやオペレッタで歌うのは恰幅の良い人というイメージがあるが、この公演の出演者は全てスマートだ。だからかもしれないが声量は少な目。しかも、声が出ているのは主役級の6名ほどで、他は声も小さいし、芝居もうつむき加減で動きも小さい。舞台経験が少ないのだろうが、恥ずかしがらずに堂々とやって欲しかった。
中島は歌もスタイルも良く、歌姫に適役。武田は歌も演技も良いが、落ち着き過ぎ。もっと感情を表わした方が良かった。小松は立場的には可哀想な役だが、陽気な可憐さが漂う。少々違和感はあるが、雰囲気が湿っぽくならなくて良かった。華山の体格ならば、もう少し朗々と声が出そうな気がする。フェリ(池上誓一)は歌は良いが演技に多少のぎこちなさがある。
踊子達の衣装が、学芸会風で野暮ったい。もう少し大人の雰囲気が欲しい。靴もバレエシューズではなく、ハイヒールにして欲しい。
改めて感じたのは、オペラやオペレッタ、バレエなどは、ストーリーは大体承知であり、その展開よりも歌や踊りを楽しむものだという事だ。技術レベルの高さも期待するが、楽しさが最も大切である。そういう意味では、料金と照らし合わせて、中々楽しめる公演だった。
★「イスラエル・キブツ・コンテンポラリー・ダンス・カンパニー日本公演2000」 (9月15日掲載)
9月2日(土)19:00-20:30。東京都北区・北とぴあ さくらホール。料金:B席3000円(2階H列29番)。主催:アルファ芸術協会。振付:ラミ・ベール。問合せ:べアート音楽事務所 03-3331-4461
全く予備知識の無いまま、イスラエルのダンスとはいかなるものか、という興味で見てみた。
第1部「WING'D DREAMS」:一人の女性ダンサーが、畳の1.5倍位の長さの反り返った2枚の板を使ってのパフォーマンス。板の湾曲とそれを利用した揺れと、ダンサーのしなやかな動きが調和して静かな世界を生み出していた。約10分間。
第2部「AIDE MEMOIRE」:舞台奥に、畳より一回り大きな板が9枚、垂直に並んで壁を作っている。その隙間に、白いパンタロン風の衣裳の女性ダンサーが佇み、それぞれに四角いスポットライトが当たる。まず、この構成、色、照明を見ただけで、今まで見た事の無い舞台への期待が高まった。
この板には大小三つのスリットがあり、時折そこに板が差し込まれて足場となる。“壁”の背面も使った空間で、壁沿いにパフォーマンスが展開される。フロアでの踊りは比較的大きく、ゆっくり目が多いが、どうしても「壁」の方が気になってしまう。約1時間10分間。
いずれも、異国性というよりは斬新さ、独創性を感じる作品だった。
★ホテル 004「金沢ワシントンホテルプラザ」 (9月15日掲載)
住所:石川県金沢市片町一丁目10-18 (076)224-0111
http://www.washingtonhotel.co.jp/hotelchain/g_hotel/p_kanazawa.html
宿泊日:2000年9月1日(金)
客室:711(7階、シングル)(約200室、シングル、ダブル、ツイン)
料金:不明(6500円-/シングル、15000円-/ツイン)
チェックイン:13:30(14:00) チェックアウト:10:00
チェックインの祭、歯ブラシ、髭剃りは要るかどうか聞かれた。常備されていないとは、どういうホテルなんだと思った。見掛けは結構小奇麗なのに、今時、民宿以下ではないか、と。
が、室内に入って「環境実践ホテル宣言」という案内書を見て理解した。年間で167万本の歯ブラシと38万本の剃刀の使い捨てを防ぐ為に常設を廃止したという訳だ。なるほど、そう言われてみると、宿泊費に含まれているのだから使わなきゃ損損と、当たり前のように使っていた。勿論、使い捨てではなく持ち帰っても使用していたが、当然溜まる一方であった。歯ブラシ1本、それほど荷物になる訳でもなし。これ以来、常設歯ブラシの使用は控える事にした。
他にも、茶殻の出ない粉茶、洗えるスリッパ、再生紙トイレットペーパー、リサイクル磁器タイル、エコクロス、ソープ・シャンプーディスペンサー、ルームキー置きを兼ねた省エネスイッチなどが使用されている。不便を感じるようでは本末転倒だが、快適さを損なわない範囲内なら、大いに結構な事である。
部屋は約5.5平米、浴室は約3平米。
冷蔵庫内の飲物は申告制。ビール450円、オロナミンC250円、ジュース類250円。自販機のビールは400円、発泡酒250円、ジュース類150円。
廊下にレンタル・ズボンプレッサーが用意されている。
朝食は1階の「チャイナテーブル」。朝から中華か、と少々憂鬱だったが、普通の和洋のバイキングだった。
JR金沢駅から車で約10分、バスで約15分。小松空港からバスで約50分。ホテル近くの片町交差点が、市内で最も大きな繁華街だが、反対方向はすぐに閑静になる好立地。
★芝居「東京林檎物語」 (9月10日掲載)
9月4日(月)18:30-20:50。東京都新宿区・アイピット目白。料金:3500円(全席自由)。作・演出:鈴木道弘。舞台監督:佐々木央。企画・制作:SO-TO最高DELUXE(S.S.D)
兄の峰岸長春(津本泰雄)は金儲けの為、弟の長秋(小山敬)は芸能界のスター目指して、長野から上京した。3年後、長春は職にもつかず、妊娠中のあゆみ(岡元あつこ)と同棲し、元気だけが取り柄の長秋が居候している。長秋はぶりっ子アイドル愛香(荻野季美子)主演映画の相手男優のオーディションを受けるが、それは出来レースだった。ショックを受ける長秋に、故郷の幼馴染・さゆり(小石川園美)は見合いを告げる。失意の内に帰宅した長秋が目にしたのは、元恋人であるヤクザの純一(藤原正和)に抱かれるあゆみと、傍で怯える長春だった。
開幕直後の兄弟の口を開けた馬鹿っ面(夢を追っている姿?)や、愛香のはしゃぎ振り、監督のドタバタ振りで、これはコメディーかと思ったが、後半、何とかシリアス路線になった。題名から推測される主題は、兄弟の、東京での頑張りや挫折を乗り越えようとする姿だろう(故郷の林檎を噛み締めながら)。割合からすると長秋が主で長春が副か。
長秋はやる気だけは十分であるが、伝わって来るのは意気込みばかりで、“若いだけが取り柄”という感じ。でも、それが若さの特権であり、若い時はそれでいいのだろう。
長春の非力さ、情けなさは救い難く、あゆみとの同棲がとっても不自然。彼女が暴力に懲りた反動と考えても、選りによって……という感じ。「いい人ね。でも、それだけ」と言われてしまうタイプ。この種の男性が増えつつあるようだが……。
あゆみは、長春の相手としてはもっと地味であるべきだったが、その違和感が後半の“秘密”を納得させるのだろう。しかし、一度はヤクザの情婦だった女が、あのような地味な生活・男に満足できるのだろうか。とは言え、演技は熱を帯び、彼女の知られざる部分を発見した気分だ。
トオル(木下貴仁)の自己陶酔的役者振りが秀逸。全員がこの調子だと疲れてしまうが、コテコテの演技が面白い。
愛香の能天気ぶりっ子演技は、見ているこちらが恥ずかしくなる位なので成功だろう。
一平(瀧田剛)はお人好し過ぎる。「いい人」の部類。脚のハンデに拘わらず明るく生きているのは好感が持てるが、かと言って一転して映画の主役となる展開は安易。
あゆみに未練を持って見え隠れする純一は不気味な陰があって良いが、会ってあゆみを襲う姿はお粗末。ヤクザの風上にも置けない。
“幽霊”ハナエ(国武亜紀)のダンスも、不思議な存在の演技も良かった。
東京タワーを蝋燭に喩えるのは子供っぽい感じ。
林檎をエピソードとして使うには冬が良かろうが、晩夏に冬の設定は、観客も中々入り込めないだろうし、演じる方も大変だと思う。
全体的に、個々の演技は、それぞれキャリアがありそうで、それなりの役が演じられていたと思う。が、人間関係としてはやや不自然さを感じる部分がある。旗揚げ公演故か、作品として練れていない感じ。笑わせ所、泣かせ所が中途半端。陵辱的場面は極力控えて欲しい。
プログラムに配役と相関図があり、鑑賞に便利。
整理券配布を知らずに列に並んでいる人がいたので、チケットに明記しておいた方が良い。
招待席の表示は、椅子の背の後ろだと気付かずに座ってしまう客がいるので背の前の方が良い。
★ホテル 003「ホテルサンルート岐阜」 (9月10日掲載)
住所:岐阜県岐阜市神田町9-23 (058)266-8111
http://sunroute.aska.or.jp
宿泊日:2000年8月23日(水)
客室:803(8階、シングル)(135室、シングル、ダブル、ツイン)
料金:不明(6300円、6600円、6800円/人)
チェックイン:21:00 チェックアウト:11:45(11:00以降は超過料金)
JR岐阜駅、名鉄新岐阜駅から徒歩2分という便利さだが、いかにも駅前のビジネスホテルという感じ。部屋に入ると場違いな感じの2mのソファがある。これが「ソファー付きシングル」という部屋なのだろう。ベッドにもなるソファだ。もう一つ驚いたのは、隣室との壁に鉄扉がある事。勿論、鍵は掛かっていたが、隙間からシャワー音が漏れ聞こえて来た。更に時計は今時珍しく、目覚ましの置き時計。却って使い易くて良いかもしれないが、ベル音がでかい。
部屋は約8平米。ホテル案内書の上が埃でザラザラだ。「ホテルサンルートチェーン30周年記念キャンペーンクイズ実施中」のチラシが入っていたが、応募は2箇月前に締切られている。朝方、飛行機、電車、警笛音が微かだが聞こえて来る。浴室は1ルームマンション並の約1.6平米。換気は弱い。トイレはウォシュレット無し。湯沸し機は壁掛け式。冷蔵庫や自販機の缶ビールは350円と安い。
「Families」というサンルートクラブ会員誌が置いてあり、「読者の声」欄に苦情が載っているのは正直で好感が持てるが、苦情そのものを無くして欲しいものである。
朝食は2階の「みやま」で和食弁当。上方料理とは言え、赤出汁は濃かった。
サラリーマンが続々とチェックアウトして行った。やはり、ビジネスホテルである。
★「第21回現代舞踊フェスティバル」 (9月3日掲載)
8月29日(水)18:30-20:30。東京都港区・メルパルクホール。料金:3500円(全席自由)。作者:下記( )内。問合せ:現代舞踊協会 03-3400-4544
14作品全てが首都圏外からの出品。かと言って出演者全員がその地域からの上京者でも無さそう。いずれにせよ観客の入りは3割程度か。東京で演じる事に意義があるのだろうが、経費を考えると他人事ながら気になる。
1.The Silent Storm(ユリ ワケ・東北) 青タイツの女性を茶色コートの女性7人が襲い掛かるように踊る。時折、直立姿勢でひたすら頷く振りが異色。
2.dual mind(沼田眞理子・関西) 一人に真上からピンスポット、と思ったら、二人が二人羽織のように重なっていた。衣裳が白と黒の対照的な二人。前半はオルゴールのような音色、後半はアフリカン・リズムで争うような踊り。
3.繰り返す空白のライム(平多浩子・東北) 頭巾付きのコートで、何やら押さえ込んだものが徐々に盛り上がってくるようなオープニング。戦争からの解放か、歓喜の曲で終了。バックの、山脈のように置かれた布が、照明の色によって氷山のようでもあり、火山のようでもある。
4.Amaranth(立石美智子・四国) 紫がかった衣裳で、音楽(アダージェット)通りに静かで綺麗なソロ。
5.故郷(中村裕子・北陸) ヤマンバ風化粧にエアロビ風オールタイツの3人。夏休みの戯れっぽい構成。
6.不器用な関係(倉知外子・中部) 中央のソファに女性が一人。上手の椅子から男性が立ち上がり、彼女に近付くが、彼女は拒んで下手の椅子に座り直す。そんなマイムが何回か繰り返される。嫌いなら離れれば良いのにそれが出来ない男女の仲、という感じ。
7.山の陰影(江口満典・関西) 真紅のドレスの女性ダンサー6人。
8.Memento Mori(横山真理・東北) 9人が、それぞれ小さな箱の上に立つ。やがてそこから降りて、緊迫した曲調で何かの犯人探し風。リズム体操風の動き。
9.さまよえる日本人 ジャパニーズビジネスマン編(古川隆一) 内容が最も予測しやすかったタイトルだけに、期待が大きかった。拳法風の動きはしっかりしており力強いが、ビジネスマン像としては何となく古めかしい。そろばん時代というイメージ。
10.夢ひらく(益田加奈子・九州) 中間色の衣裳で、動きもバレエっぽくひたすら綺麗。夢というイメージにぴったりだが、表情が今一つ物足りない。
11.I'll be Here(今岡頌子・関西) オープニングがとても幻想的で綺麗だが、単調で少々退屈。
12.言葉がポトリポトリと落ちていく(丸岡有子・九州) 上半身裸の5人の男性は背を向けて立つ。その周りで6人の女性が激しく動き出すが、男性は背を向けたまま。いずれも衣裳はベージュで全体がモノトーン。最後に男性があちら向きのまま倒れる。
まず、男性比率が高いので、それだけで他作品より印象深い。彫像のような男達はこの先どういう動きをするのか、注目せざるを得ない。女性の“ショーツ”が黒なので、配色的にはワンポイントで良いが、舞踊鑑賞には少々目障り。膝丈のスパッツではなかったのは幸い。男性の一人の髪が、グリースか何かで濡れていたが、他と同じく乾いた感じの方が良かった。
13.ふたたびの刻(棚橋鮎子・東北) 真っ青な背景に、白糸の如く落ちる砂がとても美しい。その前で、普段着風の男性と白い衣裳の6人の女性が踊る。
14.奇妙な安堵(ささき みつあき・北海道) 墨衣風の衣裳も動きも独創的。最後は上手に置かれた鉄製の台に9人のダンサーが群がる。
★芝居「アクターズ ロック」 (9月3日掲載)
8月26日(土)19:00-20:50。東京都中野区・WESTEND SUTUDIO。出演:森雅紀、小山涼、吉見匡雄、小島幸子、鈴木規純。脚本協力:故林広志、長井秀和。プロデューサー:MeguMi。制作:×2.5 TEL&FAX:03-3950-0550
12のコント集。背もたれのない椅子、または座布団で2時間は辛い。芝居は演技も大切だが、コメディーの場合は脚本命である。その段階で笑えなければ、演技が良くても“寒い”だけ。最後に35人も登場させる意図がわからない。観客数を上回る出演者、という可笑しさはあるが、質の良い笑いではなかろう。私の好みとしては、社会風刺による笑いを期待したい。
各作品に勝手にタイトルをつけて、覚えている範囲で紹介と感想を述べる。
1.スネーク・タイガー
パーカッション、ギター、ベースの3人が出て来て演奏を始める。蝶ネクタイ姿の森雅紀(本名。以下同)が観客に挨拶するが演奏の音で聞き取れない。やがて、彼らは2階の音楽スタジオに行くべき所、地下の劇場に間違って来た事に気付き、去る。が、バンド目当てのファンや出前等が次々に訪れ、森は応対に疲れるが、文化助成金寄付の手続きに来た女性に対してはバンドに成りすます。
落ちはよくあるパターンだが、全体的にリアリティがあり、森の演技も良い。個人的にはこれが最も面白かった。
2.振付家
ダンサーを待たせながらも、遅々として進まない振付に苦悩する小山涼。
踊りを振り付けるというより、ミュージカルの歌を練習している感じなので、ちょっと説得力に欠ける。
3.夢
森の夢を映像化。自分のカツラが飛んで行って犬に被さり、彼と犬との戦いが始まる。
グロテスクなシーンもあるが、ヘタウマなアニメが理屈抜きで面白い。
4.劇団浄土真宗
観客は森一人。そこに鈴木規純が一人芝居で登場。英国軍人の筈なのに、踊りながらロシアを礼賛する。
“臭い”演技・ダンスが笑わせる。客が一人でも舞台を務めるのは、現実的でもある。
5.家族
不良息子(吉見匡雄)に手を焼く母親がカウンセリングを受けるが、父親は無関心。医師(小島幸子)はアドバイスを授ける。
6.家族2
続き。馬鹿な兄を“雇い”、母親が彼をいじめる事によって息子は立ち直り、家族旅行の計画を立てる。
7.来来軒
皆が旅行に出掛けた後、一人、自宅に帰った父はラーメンを出前。来たのは劇団浄土真宗の役者・鈴木だった。「売れればいいんでしょう。売れてやるよ」という言葉も現実味がある。
8.トイレ
仕事の外回り中、便意を催した森は公衆トイレに入ろうとするが使用中。待ちきれずに使用者と話をし出すが、中でも会話をしている様子。無理矢理開けると、劇団浄土真宗の役者・鈴木が男女二役で芝居の稽古中だった。こんな所で……。
9.披露宴
結婚披露宴で、新郎の友人が次々に挨拶に立つが、劇団浄土真宗の役者・鈴木もその一人だった。
10.契約社員
家族で隠し事は良くない、と母親や息子が告白し出すが、父親の告白は、実は契約社員だった、というもの。
11.エレベータ
森と劇団浄土真宗の役者・鈴木が乗ったエレベータが突然停止。焦る森に、のん気な鈴木。やがて二人は酸素不足で倒れる。
12.遅れた卒業式
卒業式に出られなかった鈴木の為に、20年後、森は卒業証書授与を行ない、形見や生首や、“彼女”のラブレターを贈る。鈴木は鍵っ子でいじめられッ子だったが、実は森は“歯磨きッ子”だった。ところが鈴木も“歯磨きッ子”だった。
エキストラ35人(?)がそれまでの出演者達と一緒に踊って幕。
全体的には、森の演技が光る。鈴木のとぼけた味も良い。老婆心ながら「劇団浄土真宗」という名称は、浄土真宗の方が聞くといかがなものか。
★BLU-NAZI第5回公演「真昼の真夜中」 (9月3日掲載)
8月26日(土)13:00−15:00。北沢タウンホール(東京都世田谷区北沢2−1−8 03-5478-8006)。出演:吉田はるき、目崎暁子、曽我部智子、竹内静香、長谷川恵子、門柳久代、日下部紀久子、佐々木麗子、鈴木魅穂子、柴田恵美、西村晴子、根布有希恵、MILLA、山崎裕子、tov(6名)。チケット:前売・当日=3000円。問合せ:BLU-NAZI TEL&FAX:03-3427-4582
暇に任せて、あったのかどうか、はっきりとした記憶も無い骨董屋に入った「あんた」(女。吉田はるき)は、商売っ気の無い店主・月子(長谷川恵子)に不思議な世界に導かれる。望み通りの世界が体験できるのだ。男性会社員、バイオリニスト……。買う気の無い客と売る気の無い店主のやりとり、そして唐突に始まるバーチャルゲーム。それはゲームとは言え、「あんた」の一方的な仮想体験で、それがダンスとして展開される。それは現実の世界ではない筈なのに、「あんた」は徐々に現実との区別がつかなくなって来る。
まず、おびただしく並べられた骨董品の数に圧倒された。これだけ揃えて、運んで並べるのは大変だったろうと思う。それだけにリアリティが感じられるが、その後の展開を考えると、ここまでしなくても良かったのではないか、とも思う。「月子」の店なら、もっとまばらでも良かった、と。
「あんた」と「月子」の進行が芝居で、仮想世界である「あんた」の望みがダンスで表現され、それらが交互に展開される。その位置付けがわかるまでの導入部の芝居の展開が、まだるっこしくて少々退屈。
現実と仮想世界を行き来する猫「よる」(門柳久代。飼い主は月子)が、「あんた」の混乱の原因の一つとなっているが、月子の仕掛けた仮想世界に、その飼い猫が登場するのは自然な気がする。また、月子とダンサーの衣裳が同じなので、初めは違和感があったが、同じ理由で納得も出来る。
「あんた」のプロフィールを探るには材料不足で、ひたすらミルを回し続ける月子には"魔女性"が乏しく、「あんた」が体験する夢の世界の"感動"は、あまり伝わって来ない。男性会社員に憧れる「あんた」には、もっと女性らしさが欲しかった。
「よる」のダンスは、軽く柔軟で、十分に猫を感じさせる。男性サラリーマン群舞は、せこく慌しい会社人間が良く描かれていた。針金細工のバイオリンを持っての群舞は、独創的で印象深い。ジャングルで悪戦苦闘する蜘蛛の糸は、もう少し細い方が良かった。指の細かい動きなど、振りにもオリジナリティーを感じる。「あんた」の、"脱出イリュージョン"並の出はけ、早替えには脱帽。
3人の祖母の衣装は、とても日本とは思えない(国は未設定?)。また、長袖であれだけ着込んで「今日も暑いねえ」は変。
映像を映す、傘の下に帯状の布を垂らしたスクリーンは、意外に効果的だったが、フィナーレのダンスシーンでの上映は不要だったと思う。
作・演出・振付者(竹内静香)の意図はわかるが、小道具や台詞はもっとシンプルで良かったのではないかと思う。
王真紀、佐々木朝美、木下泰子のアカペラが綺麗だった。8頁建てのプログラムには、スタッフやキャストの配役やコメント、ストーリの概要などが書かれており、鑑賞の際に有り難い(ノンブルは誤植?)。
★ホテル 002「リーガグランドホテル」大阪・中之島 (9月3日掲載)
住所:大阪府大阪市中之島2-3-18 (06)6202-1212 http://www.rihga-grand.co.jp
宿泊日:2000年8月18日(土)
客室:914(9階、ダブル)
料金:不明(17000円、18000円、23000円/人)
チェックイン:23:20頃 チェックアウト:10:20
打ち上げ後、タクシーでホテルに着くと玄関の内外には若い女性がたむろしていた。「まさか」と思いつつ降りると誰も近寄って来ない。聞くと某芸能人が宿泊しているとの事。ロビー横にはベルボーイの詰め所があったが、荷物を運ぼうとする気配無し。ロビーにも女子達が陣取っている(深夜12時過ぎには外に出されていた)。
客室は約14平米。サッシではなく窓が2重構造。騒音は気にならないがこれでは眺望は良くない。外観も古い庁舎のようで、新婚旅行としてはいかがなものか。屋上には朝日新聞社の電波塔が建ち、ビルの半分はフェスティバルホールである。
冷蔵庫内は有料だが、外から持ち込んだ食品が入れられる。
テレビをつけると、ホテルの写真画面の上に挨拶文が現れる。テレビの有料放送テスト時間が5秒位で切れてしまったが、一旦別のチャンネルに変えて戻ると続きが見られた。これは……と思って繰り返すと、4回目位で終了した。淡い期待は夢とついえた。
クロゼット内の照明は、扉の開閉によって点消灯し、一見便利だが、湿った衣裳を干したかったので点灯し放しになってしまう。扉上下には隙間があったので扉は閉める事にした。貧乏性なもので。
縦置きのズボンプレッサーあり。
浴室の換気はあまり効いていないよう。
フロントには周辺地図の用意がある。
周辺のコンビニエンスストアは1軒。
徒歩ではJR東西線・北新地駅5分。地下鉄四ツ橋線・肥後橋駅2分。地下鉄御堂筋線・淀屋橋駅5分。車では関西国際空港より60分、大阪空港より20分、新大阪駅より15分、大阪駅より5分。
朝刊配達あり。
朝食は2店から選べ、1階のコーヒーラウンジ「アルメニア」に入る。パン、ハム、オムレツ、ポテト、ジュース、コーヒーで1600円は高い気がする。
10時20分にホテルを出たが、十数名の若い女性がいた。恐るべし。
★ダンス 笠井叡版、チャイコフスキー作曲、白鳥の湖 「青空vol.U」 (8月27日掲載)
8月25日(金)19:00-20:30。シアタートラム(世田谷区太子堂4-1-1 03-5432-1526)。料金:当日3300円。振付・構成・テキスト:笠井叡。出演:上村なおか、横山愛、石井良枝、藤木恵子、吉田恵。
舞台を牢獄に見立て、5人のダンサーは魔法にかけられた白鳥。この魔法を解くにはダンスしか無い。詩の朗読の後、白鳥の元曲と無メロディーの抽象音楽が交互に流れる中、一人或いは二人が交替で激しく踊る。白鳥の優雅さは無い。動きは速く、テクニックは十分。やや重い感じがするが、モダンダンサーとしては普通だろう。曲順は大体元曲通り。王子とオデッタのパドドゥの曲では、パドブレを使ったスローな動きで、初めて白鳥らしさを感じる。が、バレエではないので中途半端な感じ。終盤、元曲でのラストから、再びクライマックスの曲になる群舞が最も良く、「作品」としてまとまった感じがする。それまではひたすら踊ると言うより動き続けるばかりで、やや退屈な箇所もあった。
舞台上下(かみしも)の壁際は、舞台なのか、“退避場所、休憩場所”なのか。
振付者も出演者も初めてだったが、「白鳥の湖」がどのように“料理”されているのかを見たかった。結果的には「白鳥の湖」という曲の完成度に振りが追いついていない、と言うか溶け込んでいないという感じだ。バレエでは、魔法を解く鍵は男女の愛だが、そこにドラマチックさがある。踊る事による解放は“その時”の劇的さの表現が難しい。
この会場に来たのも初めてだが、北沢タウンホールより一回り小さな感じ。スライド式の席はしっかりしていて座り心地は良い。壁が黒い石張りで、舞台奥に真赤な鉄扉がある。質感や配色を考えると作品によっては使用しづらかろう。
★ホテル 001「リーガロイヤルホテル」大阪・中之島 (8月27日掲載)
−はじめに−
この所、おやじダンサーズがあちこちのイベントからお呼びが掛かり、宿泊にホテルを利用する機会が増えている。既に10軒は超えているが、今回「リーガロイヤルホテル」という豪華なホテルに泊まった際に、折角このような機会があるのだから、宿泊した感想を書いてみたいと思った。ホテル利用は初心者ではあるが、初心者なりに「成人が一人で、仕事前後に通常の宿泊を目的として利用した場合」の感想を綴って行きたい。
住 所:大阪府大阪市中之島5-3-68 (06)6448-1121 http://www.rihga.co.jp/index.htm
宿泊日:2000年8月15日(火)
客 室:10919(10階、ツイン)
料 金:不明(27000円、33000円、36000円/人)
チェックイン:深夜0:30頃 チェックアウト:8:10
深夜の到着にも拘わらず、ベルボーイはすぐに荷物を取りに来てくれた(チェックアウト時も同様)。ロビーはイベントが出来る位に広いが、椅子が四脚と言うのは少な過ぎやしないか。エレベータの天井にはシャンデリア。
客室に入るなり、余りの豪華さに思わず足を止め、すぐにカメラを取り出してしまった。調度品に格調があり、広くゆったりした室内だ(約18平米)。鏡の周囲は額縁が施され、その下のデスクは広い。デスク用の椅子はやや大きく高過ぎ、座面の木枠が少し痛い。ツインのベッドはセミダブルで、掛け布団は羽毛。普通は引出の中の浴衣が枕元に置いてある。クロゼットにはバスローブ。これも初体験。ティーバッグは、2,3個が普通だが、煎茶・ほうじ茶・昆布茶など10パック。冷蔵庫内は有料だが、ミネラルウォーター2本は無料。若干なら外から持ち込んだ食品が入れられる。入室前から冷房が作動しているのも初体験だ。湯沸ポットも湧いている。
テレビをつけると「いらっしゃいませ パパイヤスズキトオ(ヤジダンサーズ)様」という文面が現れ、続いてホテルの利用案内が流れる。
浴室に入ってまたビックリ。洗面台の上には備品がズラリ。シャンプー、リンス、石鹸、歯ブラシなどは勿論、芳香石鹸、ソーイングセット、リキッド、トニック、アフターシェーブローションもある。このような品の充実に驚くのは初心者の証拠ですな。シャワーの水流が強弱切り替えられるのは便利だが、フックの位置が高過ぎる。洗面鏡は壁一面の大きさで、人によっては入浴時や小用時が落ち着かないかも。
冷暖房とは別に常に空調が作動しており、就寝時には冷暖房を止める私としては音がやや気になる。浴室の換気は完璧で、うっかりすると身体が乾いてしまいそうな位。
朝刊が各部屋に配達される。
テレビの有料放送テスト時間が10秒程度(普通は30秒位。せこい)。
フロントには周辺地図の用意がある。
周辺のコンビニエンスストアは3軒、いずれも5,6分。JR大阪駅、淀屋橋間でシャトルバスバスあり。徒歩では、JR東西線「新福島」駅、阪神「福島」駅より8分。地下鉄四ツ橋線「肥後橋」駅より12分。
夜食と朝食その他、ルームサービスあり。朝食は4店から選べるが「なだ万」に入る。白米とお粥が選べ、白味噌椀に8種のおかず。これで2300円は高い気がする。
いずれにせよ、私が自分のお金で泊まれるようなホテルではない事だけは確かだ。
★映画「M:i-2」 (8月21日掲載)
監督:ジョン・ウー、脚本:ロバート・タウン、製作:トム・クルーズ、ポーラ・ワグナー、配給:UIP、1時間40分
イーサン(トム・クルーズ)への今回の指令は、殺人ウィルス「キメラ」とその治療ウィルスを奪回する事。その相棒として、凄腕の女流泥棒と組むが、実は彼女は悪漢の元恋人。情報を得る為に、よりを戻したと見せかけて彼の元に送るが……。
このシリーズは、縁もゆかりも無い悪漢を、私憤や色恋沙汰を抜きにして指令通りに逮捕する話だった筈だ。映画を見ていて「これって、007だった?」と疑ってしまった。
病原菌をばら撒き、その治療薬を売って儲けよう、という単純な発想と、それを横取りして儲けようとする悪漢達と、それを阻止しようとする正義のハンサムの話。
またまた文句で申し訳ない。行き先を告げずにロッククライミング(軽装過ぎて現実味が無いが)をする彼の所在を、どうして知ったのか。会った事も無い女性を2日間でどのようにして見つけたのか。緊迫した銃撃戦の最中に、お互いの顔に変装マスクを施して入れ替わる余裕はあり得ない。後半の波しぶき場面は何?(心理描写?)
オートバイ・アクションやスローモーション・アクションは見応えがあったが、ナイヤ(サンディ・ニュートン)のプロ振りはお膳立てが出来過ぎているし、“万能解決策”として変装マスクの多用はストーリー展開を甘くし、緊張感を無くしてしまった。「暇だからこの映画でも見て、時間を潰そうか」的娯楽作品。(8月15日鑑賞)
★DANCE VENUS「石のHA・NA」 (8月9日掲載)
8月3日(木)16:00−17:30、北沢タウンホール(世田谷区北沢)、公開ゲネプロ:1500円。企画・制作:武元賀寿子 DANCE VENUS
今回は公開ゲネプロ(通し稽古)と本公演だったが、その前の通常のリハーサルを見る機会に恵まれた。舞台撮影と私自身の予定により、通常リハを見て公開ゲネを撮った。通常リハはほとんど場当たりとダンスの振りの確認という感じで、音楽が無いので概要が掴めないまま公開ゲネになる。
舞台奥に1m程度の幅の黄色い布が敷かれ、その下にダンサー達が“隠れて”いる。舞台には二人のダンサーが歩き回る。床にはスポットライトが4箇所。これが一つずつ消えて行き、全て消えた所で開演。入場して来た客は、どうも様子が変だ、ととりあえず身近な席に座るので、入口と反対側は空席が目立つ。普通は、まず席を確保し、トイレや飲み物や所用を済ませ、一息ついた所で鑑賞、となるので意表を突いた始まり方だ。客の動きやざわつきも念頭に置いた開幕準備ではあろうが、私としては、準備不足のまま鑑賞を“強制”させられるので賛成しかねる。
第1部「flower」は提灯ブルマー風スカートから衣裳が展開し、リズミカルな音楽と統一された衣裳で楽しめる。モノトーンという印象だが、退屈する事無く展開が追えた。
第2部「流・流・流」はダンサーによってバラバラの私服風衣裳で、場面によっては曲調が大きく変わり、途中には3人によるマイムもある。サングラスを掛けてビーチパラソルを持ったダンサーが歩くなど、第1部と比べると芝居風。後半は人工芝を担ぎ、放り投げ、敷き、寝転がり、引きずる。色んな場面展開があり、美的、展開的に注目すべき所があったものの、あれこれあり過ぎて全体的には散漫な印象だった。
今回の撮影は、ある個人を追うのではなく作品全体を撮ろうと心掛けたが、舞台のそこかしこでシャッターチャンスが見られ、非常に撮り辛かった。これは客としての鑑賞にも言える事で、一体どこを見ればよいのだろうか。「好きな所を」と言われても、そこかしこでいい動きをされるので焦点が定まらない。芝居で喩えると、あちこちで役者が台詞を喋っているようなものだ。たまたま私は客席最後部に居て舞台全体が見渡せたので、舞台上におけるダンサーの配置や動き、バランスなどが“群れ”として楽しめたが、舞台寄りの席ではどう見ても“見切れない”部分が生じてしまう。折角の構成・演出・振付がどの程度、観客に伝わっているのか、気になる点である。
★アクロバティック ミュージカル ニュー雑技「ムービング」 (7月28日掲載)
7月28日(金)18:30−20:00、東京芸術劇場中ホール、A席3000円(7月26日−30日)。ゼネラル・プロデューサー:山崎靖明、振付:佐々木絢子、企画・製作・招聘:鰹ホう猫
美しい地球?に暮らすプリンセス達に邪悪な軍団が襲い掛かり、聖者が連れ去られた。それぞれが「雑技」で技を競い合うが、プリンスは戦いを諌める。
「ミュージカルと雑技の融合」という意気込みは買いたいが、融合し切れていない。まずストーリー性が薄い。音楽や歌(日本語)は非常に美しく壮大であり、これぞミュージカルの世界という感じだし、衣裳も、少々子供っぽいが工夫されている。しかし歌や踊りと雑技が交互に出て来るだけで、筋書きというものが無い。グランドバレエのように、芝居は芝居で進め、踊りや技は短めにして色々競い合う場面を集中させた方が良かったのではないか。とは言え、新形式の雑技ショーにはなっていたと思う。
さてその雑技だが、もう勘弁してという位に精巧である。ほとんどは一度は目にした事があるが、実際に目前で行なわれると改めて手に汗握り、思わずウォーと唸ってしまう。特に、垂直に平行に立てられた2本の棒を猿の如く移動する技は、股間は大丈夫かと心配するし、鼓のような特殊独楽を回し投げする技は、よくこんな事をやろうとしたとアイデアからして感心する。その他のアクロバット技、バランス技もよくここまで出来るものだと、呆れる位に感心する。ここに来るまでの血と涙は想像の域を越えているだろう。我々OYJの踊りも頑張らなくちゃ、と心新たな気分になった次第。
★映画「仮面学園」 (7月23日掲載)
監督:小松隆志、脚本:橋本裕志、製作:アスミック・エースエンタテイメント、配給:東映、1時間40分
登校拒否を続けていた光陽館高校生・段田徹が突然登校して来た。しかも仮面を着けて。仮面を着けることにより今までの自分を消して新しい自分になれるのだ。その仮面登校が徐々に広まり、社会現象にまでなってしまった。一方、同じ高校の河村有希(黒須麻耶)と芦原貢(石垣佑磨)は、中学時代の同級生・殿村秀治から仮面パーティーに招待される。そこの怪しい雰囲気は、有希を仮面造りの青年・堂島暁(藤原竜也)引き合わせた。やがて殿村は死体で発見される。
日本のテレビドラマや映画にはリアリティが欠けるので見ないのだが、今回は藤原目当てで見た。作品としては、漫画を実写にしたような感じで、照明や音響でいかにもおどろどろしい雰囲気を出して興醒めさせる。仮面と登校拒否を結びつけた所は時宜に叶い、かつ生徒の心理面についても考えさせられるのだが、いつの間にかそのテーマはそっちのけとなり、仮面を殺人事件の単なる小道具にしてしまった。有希が警察を出し抜いて「少年探偵団」よろしく活躍するのが“おじさん”としては見ていて楽しめる。さて、肝心の藤原だが、彫師としても謎の青年としても歳が若過ぎて荷が重い。が、遠くを見つめる涼しい目が、作品とは別に、良かったと思います。
GENOME −STAGE 1−ベビーズライン公演「分泌 secretion」−ベビーズライン:演劇・映像・ダンス・舞踏・音楽等各界パフォーマーからなるトータルグループ。今回は演劇を中心とした作品。
日時:2000.7.15(土)15:00−、19:00−、7.16(日)14:00−(鑑賞は7月15日19:00)
会場:西荻WENDZスタジオ(JR西荻窪駅北口から徒歩一分。杉並区西荻北2−5−11 ひかり平方ビル) 03(3399)4558(FAX:03(3390)6444)
出演:橋田泰雄/ゴールデン鈴木/真田千華子/Gunn俊子/RAY/池田真弓/安倍花恵/石原直奈/伊藤虹/水野真由子/若林泉/若狭ひろみ
チケット:\3000(当日\3500)
素直に理解できない詩文の始まりは、難解な作品を予感させ、案の定、現実と幻想が入り混じり、場面の把握に手間取った。演技は中々良かったが、間が空き過ぎと思われる所が多くて展開がゆっくりで、2時間弱はちょっと疲れた。結局、何が言いたいのかわからぬまま終わり、しかし退屈する事無く最後まで見られた。
3人の「魔女」(池田・安倍・石原)のダンスは、無表情で不気味な雰囲気が出ていたが、魔女と言うよりは「男の心の闇」の表現の方が的確。踊りには程好いキレがあり、3人の踊りだけでも小作品として通用するだろう。「うさぎ」(RAY)は、兎・「男の幻想が作り出した物」と言うよりは、衣裳や動きからして「昆虫の精」と言う感じで、男をもてあそんでいる印象。幕間に見え隠れする所を始め、中々キュートだった。
GENOME −STAGE 2− RAY+オービタルリンク公演「集積 accumulation」−オービタルリンク:ダンサーRAYが主催するアーティスト・ミーティング。今回はRAYと名古屋オービタルリンクのメンバー長谷川哲士のデュエット作品。(見ていない)
★映画「アメリカン・ビューティー」 (7月16日掲載)
監督:サム・メンデス、脚本:アラン・ポール、製作:ブルース・コーエン&ダン・ジンクス、配給:UIP、2時間2分
レスター(ケビン・スペイシー)は雑誌社に勤める42歳の会社員でリストラ寸前。高校生の娘ジェーン(ソーラ・バーチ)には嫌われている。妻キャロリン(アネット・ベニング)は不動産業を営み、こちらも娘には疎まれている。ある日、キャロリンは気の進まないレスターを引っ張って娘がチアガールとして出演するバスケット試合を見に行く。そこでレスターは娘の友人であるアンジェラ(ミーナ・スバーリ)に一目惚れ。ジェーンは、チームメイトに色目を使う父を益々軽蔑する。そんな彼らの隣に引っ越してきたのは、片時もビデオカメラを放さない青年と厳格な退役軍人の父、存在感の無い母だった。
アカデミー賞5部門受賞作品という事は余り念頭に無いまま鑑賞した。第一印象は、この映画には主人公がいないという事。作り方としては自らナレーションをするレスターという事になろうが、その周辺の家族や友人知人も等しく描かれている。ある人物を中心に何らかの問題が発生し、その人物に何人かが絡んでその事件が展開する、という形ではなく、登場人物それぞれが、いわゆる長所や欠点を持ち、それぞれが絡み合いながら、それぞれの人生を歩んでいるのだ。言わば、普通の人々の日常なのだが、それはしかし退屈ではなく、それぞれがどのように展開して行くのかが気になるのである。色んな切っ掛けがあって、あれこれ展開するのだが、誤解を生じてトラブルが起こったり、何となく空虚である……見ている自分の世界もそうなんじゃないかな、と思ってしまう作品である。(7月7日鑑賞)
★DANCE NUTS' 1st LIVE「Everybody, Grove!!」 (7月2日掲載)
7月2日(日)13:45−15:15。会場:DR.JEEKAIN'S(東京都渋谷区円山町2-4)出演:DANCE NUTS'(12名)、鈴木成彦、時津由紀子 料金:前売=2800円、当日=3000円。(1D付き) エグゼクティブプロデューサー:パパイヤ鈴木 主催:西田プロジェクト
中学生以下のダンスチーム「DANCE NUTS'」結成一周年記念のダンスイベント。下は幼稚園から上は中2までの12名。開場が20分程遅れ、ほとんどが出演者の家族・知人らしき親子連れの客と一緒に並んでいて思った。こういうイベントはホテル街のクラブでやらなくてもいいんじゃないかと。場内は150位の椅子席と立ち見が数十名。どうにか座って、何か飲もうと思った所で、注意事項を盛り込んだ前説。漫才風だが、待たされた身にはあまり面白くない。簡潔に告知するだけで良かったのではないか。
その後は歌と踊りが、若いエネルギーで噴出。年齢層が幅広いので明確なダンス・ジャンルは分類し難いが、HIPHOP+エアロビ+ディスコという感じ。ダンスはハイ・テクニックと言うよりは若さ爆発的。動きはしなやかな人、ちょっとぎこちない人様々だが、最年少の服部は、私ここに何しに来たのかな、という表情ながらも回転等が素早く、将来が楽しみ。小2の蔵立も、ポカンと開けた口が気になるが声出しのタイミングやノリが良い。歌は音程やリズムは良いものの、まだ子供の声という感じ。あれだけ踊り回っても大して汗をかいていないのは、若さ故か、羨ましい。開場前の会場についての疑問は、消え去った。
マイクの調子が悪くて、ラップの歌詞やメンバー紹介が聞き辛かったのが残念。ビデオ上映は気分転換に良かったが、鮮明さに欠けたので進行役のスポットライトは不要だった。メンバーのはしゃぐ黄色い声は、個人的にはうるさかったが、内容的には盛り上げ効果はあった。“恋愛寸劇”も、やや臭い芝居だったが良かった。「Kiss Me」を作詞した藤村の、父親の戸惑うエピソードが、チームのアットホームなイメージを醸成。ゲストの成彦氏は、汗みどろで頑張っていたがちょっと浮いた感じ。外部の者には料金が割高かもしれないが、変に大人びていなくて楽しめた。
★「兄ィよ銃を取れ!U」〜爺刺す暗い人スーパースター〜 (7月2日掲載)
7月1日(土)19:00−。会場:TACCS1179 俳協ホール(東京都新宿区上落合1-17-9 03-3950-5705)西武新宿線下落合駅下車、徒歩2分。出演:劇団鴎座(役者27名、声5名。ドカンは「松浦洋一」の声で出演)。作・演出:木津修。チケット:一般3000円、学生:2500円(日時指定、全席自由)
金子組組長・金子は、怪傑ハリマオやキリストのような任侠道を説く山岡系倉田組組長・倉田に惚れて傘下に入る。しかし倉田が、外国人ダンサーのマネジメントのトラブルで、山岡系高中組員に殺害された為、金子組と高中組は一触即発状態になる。そんな中でも、金子は倉田の教えを守って「人を殺さぬヤクザ道」を貫くが、経営するショーパブが繁盛するに連れて次第に敵視され、ついに高中組の手に掛かって死んでしまう。本作はその7年後の話である。金子組は辛うじて存続していたが、ほとんど崩壊寸前だった。店の女達も呆れかえる惨状の中、池袋で金子そっくりの姿が目撃された。
男と女の間に繰り広げられる愉快な人間模様、「愛と涙と笑いと感動」をテーマに活動を続ける当劇団の人間ドラマに乞うご期待!、との謳い文句に嘘は無かった。見終わると、映画を見た後のような充足感と疲れを感じた。何故映画かと言うと、小劇場での芝居は、中々、舞台にのめり込めないという経験上、今回は集中できたからである。程好いシリアスさで進行しつつ、時にギャグで笑わせてくれる。ダンスの振付も良く、立ち回りもリアルだ。休憩前後の展開も面白い。これなら商業公演として、もっと大きな劇場でも成り立つだろう。
但し、10分間の休憩を挟みつつも2時間半は疲れた。もう少し展開を早められただろう。例えば、松浦(ドカン)やデジキャラ(真田アサミ)の声は不要だった。ホステス達の古いギャグも、個人的には懐かしい面白さがあったが冗長。敵だった河野(マー坊)が身内にいる理由が説明不足。死んだと思わせた麗子(桑原)と鳩おじさん(木津)が生きていたのは展開が安易。低年齢の客も居たの、内容的にやや“不適切”なシーンがあり、気になったが難しい所。演技は、市川(松島)、河野、咲子(たに)、高中(井上)、君島(加瀬)が特に良かった。
★ミュージカル「ヴィヨンの妻」−昭和の女とは…− (7月2日掲載)
6月29日(木)14:00−、中央区・築地ブディストホール。前売4000円。出演:史桜(さち)、篠原功(大谷)、他。脚色:スミダガワミドリ(原作:太宰治)。音楽・演出:神尾憲一。主催:ライトリンク・ミュージック
終戦直後。詩人・大谷は酒におぼれる毎日だった。付けを回収に来た酒屋の夫婦は、大谷の内縁の妻・さちに事情を話すと、彼女は酒屋で働き出す。すると店は大繁盛。しかし大谷は、相変わらずの酒浸りだった。
ロック・オペラという事で、台詞よりも歌が多い。但し、所々聞き取れず、進行がわかりにくい箇所があったのが残念。机と椅子程度の道具だったが、情景はよくわかった。歌も演技も史桜が郡を抜いており、出演者の力量が少々アンバランス。篠原は良い雰囲気を出しているが、歌が聞き取りにくい箇所があった。二人とも、言葉遣いが丁寧過ぎる気がする。探偵もどきの役回りをする後半の永井(小林)はキャラクターが生きていた。衣裳が戦後という感じではなかった。もんぺをはけば良い、ぼろければ良いという訳ではなく、もう少し時代性を出して欲しかった。
★映画「グラディエータ」 (7月2日掲載)
監督:リドリー・スコット、脚本:D・フランゾーニ、J・ローガン、W・ニコルソン、製作:D・ウィック、D・フランゾーニ、B・ラスティグ、配給:UIP、2時間35分
西暦180年、ローマ帝国のマキシマス将軍(ラッセル・クロウ)はゲルマン軍を破り、生い先短いアウレリウス皇帝(リチャード・ハリス)から次期皇帝即位を嘱望される。しかし彼の望みは妻子の待つ故郷に帰る事だった。一方、皇帝になれないと知った王子コモドゥス(ホアキン・フェニックス)は、皇帝を殺害して自ら即位し、マキシマスの処刑を命ずる。部下の計らいで難を逃れたマキシマスは傷付きながらも家に帰るが、そこで見たものは妻子の亡骸だった。力尽きた彼は奴隷商人に拾われ、グラディエータ(剣闘士)として戦う羽目になる。
久し振りの壮大な史劇である。おびただしい兵氏、古代の街、巨大なコロシアム等、金と時間を掛けただけの出来になっている。CGの箇所は何となくわかってしまうが、違和感は無い。戦闘場面も、アップが多くて少々疲れるが、真に迫っている。血飛沫が飛び交う残酷さもあるが、緩和した表現になっている。
ストーリーも、権力拡大と権力争いをベースに、男女の愛、親子の愛等が描かれ、見応えがある。己の非力を知りながらも親を犠牲にして権力者になろうとするコモドゥスは、悪人ではあるが、親に愛されていなかった悲しさは、自業自得とは言え、わかる気がする。かつての恋人マキシマスと弟の間に挟まれての、王女ルッシラ(コニー・ニルセン)の苦しみ、悲しみもよく描かれていた。という訳で、この映画は近年稀にみるお奨め作である。
最も印象的だったのは、剣闘で勝ち残るには強くなければならないのは当然だが、観衆を味方にして初めて“英雄”になれる、という事である。わが身を振り返って見ると、幾らダンステクニックが優れていても、観客に受けなければ、エンターテイナーとしては失格なのである。
★FREE PACKAGE VOL.16(6月25日掲載)
6月20日(火)16:00−、19:00−。俳優座劇場(東京都港区六本木 03-3470-2880)。チケット(全席自由):前売=3500円、当日=4000円。
「UN〜」振付:三浦宏之、出演:jou……部分的な動きや照明による椅子の影などに良さを感じたが、全体的にはあまり楽しめなかった。途中で暗転を使用した為か、作品の終了時点がわかりにくく、拍手が無かったのが残念。
「目がまわる、目がまわる、目がまわる」振付:野和田恵里花、出演:奥田純子……よく覚えていない。
「真夜中のジュリア」振付:稲葉枝美、出演:高橋美恵子……蛍光色の棒が印象的。
「Finding Your Voice」振付:馬場ひかり、出演:山崎則子、手塚多希、茂木左記子、槙田優……普段着っぽい衣裳で踊るとミュージカルの雰囲気だが、モダンだとちょっと妙な気がする。各人のダンスやフォーメーションは良かった。
「湯飲みイッパイノの海」ショクニンズ/jours 振付:jou、出演:野和田恵里花、宮沢さおり、MILLA、千葉由紀子、佐藤桂子、神風ことり、三枝はな、多田五月……幾つもの場面展開があり、その繋がりがわかりにくいが、それぞれを楽しめた。可動式スクリーンの使い方や、それに投影されるダンサーの影や映像が面白い。
「煉瓦色の壁は重く堅い」振付:稲葉枝美、出演:高橋美恵子、荒井笑子、小池恵美子、鵜沢むつみ、古田美樹……前半はジャズダンス風、後半はモダン風。劇場の壁を効果的に使っている。
*実は最近、私の感想は、例えば寿司好きの私が中華料理を食べて脂っこ過ぎる、と言っているような気がして来ている。
★ミュージカル「峨眉山伝奇-GABISANDENKI-」 (6月19日掲載)
6月17日(土)19:00-21:40、品川区・アートスフィア、作:船越英一郎、水口馨、制作:マガジン企画
中国・隋の戦乱で母を殺された子春は、力を頼りに生きて行くが、やがて平静な時代が続くと金に囚われる。しかし、金に振りまわされる人間社会に嫌気がさした彼は、仙人になるべく「峨眉山」に向かい、仙人・鉄冠子の弟子となるが……。
筋は単純明快、結局大切なのは人間性、という事になる。仙人になる為の掟である「助けを求められたら助ける」を守るには、母の敵をも助けなければならない。ここで目的と手段に悩むのだが、人生においても、目的や手段、人情と義理などが混沌とし、板挟みで苦しむ事もある。そこは舞台、割り切って進行。オープニングから、多くのダンサーが舞台狭しと踊り、模造とは言え、武器が舞う殺陣に圧倒される。ミュージカルにダンスは必須だが、よくここまで完成させたと感心する。但し、戦闘ダンスが多く、見る側もちょっと疲れる。
それにしても主役の山崎タカヤスは出ずっぱり踊りっぱなしで、感服する。短時間だが中村嘉夫のアクロバットダンスも見物。渡辺純の可憐な演技も良かった。他のダンサーも良かったが、植村きわ蔵(女性)が際立った。
合間に講釈師が冗談を交えて面白おかしく解説を挟むが、この役は不要ではなかったか。それより、妖怪等の化粧で役者が判別しにくいので、プログラムの顔写真は、素顔と両方が欲しかった。劇場名が表記されていないのも妙。
これだけ動ける二十数名のダンサーが出演しているのに、知っているダンサーが一人だけとは、まだまだ私の見聞は浅いようだ。
★新鋭・中堅舞踊家による現代舞踊公演 (6月19日掲載)
6月14日(水)−16日(金)、いずれも19:00開演、東京芸術劇場中ホール(東京都豊島区)。チケット(全席自由):4000円。主催・問合せ:現代舞踊協会(03)3400-4544
14日:伊澤百恵、立石美智子、古賀豊、中井恵子、高沢和歌子、飯田泉、伊藤実知子、島田明美、平多量子(見てません)
15日:伊藤孝子、青木理江、南部美紗子、加藤きよ子、志保野ひろみ、中西優子、内田香、中村友美(見てません)
16日:町田睦・小田みさえ=4人とも同じ衣裳だったが「わたし」だけ別の方が良かった。布の使い方が斬新。
有馬百合子=動きは良いが、意図がわかりにくい。
肥後宣子=5人の群舞としてはエネルギッシュで堪能出来たが「砂漠の薔薇」と言う感じは無かった。
松永茂子=大きな物指しの意図は? 4人群舞としては良かった。
杉本光代=フラメンコにサン・サーンスの「白鳥」は意外だった。
熊澤純子・熊澤美子=ストーリー性のある、バレエっぽい作品。中村信夫の新境地。
二見一幸=圧倒される群舞だが、ちょっと飽きる。
鈴木由美子=テクニックはあるが、ソロの難しさ……。
湯原園子=カップルは見せてくれるが、バックダンスが霞んだ感じ。
高瀬多佳子=独創的なフォーメーションだが8人の位置が固定的だったので、もう少し変化が欲しかった。
★キレイ 神様と待ち合わせした女 (6月19日掲載)
6月13日(火)、19:00−22:30。シアターコクーン(東京都渋谷区 bunkamura)。作・演出:松尾スズキ。出演:奥菜恵、南果歩、古田新太、篠井英介、片桐はいり、秋山菜津子、安部サダヲ、宮藤官九郎、松尾スズキ、康本雅子、他17名。チケット:A席5500円(2階4列目)
誘拐され地下室に幽閉されていた少女が、5年振りに地上に出ると、戦争の最中だった。初めはよそ者だったが、やがて、死んだ“大豆兵士”の再生業者と行動を共にするようになり、結婚もするが……。
3時間半は長過ぎる。退屈はしなかったが、もっと展開を早めて2時間半が適当ではないか。
過去・現在・未来という時間の行き来が多過ぎて、あらかじめストーリーを読んでいないと混乱してしまう。
舞台装置、大道具が凝っていたが、それだけに場面展開に無理があった(想定されている場面に切り変えるのが困難)。特に線路は邪魔だったのではないか。踊る際のリスクを考えると、無くしても良かったと思う。
ギャグは笑わえたが、あまり必然性は感じなかった。「ライアン2等兵」等の流用ギャグ(パロディでもなく)や性的ギャグも、笑ったものの効果はあまり感じなかった。コメディーにしては物足りないし、当然シリアスでもなく、中途半端な感じ。
役者が二人だったせいだけではなく、人物描写の面からも、「ケガレ」という人物像があまり鮮明ではなかった。いかにもケガレている、という実感も無ければ、地下に幽閉されていた「傷跡」や悲惨さ、記憶の彼方に置き去りにしたモノへの苦悩なども弱く、従って対照的なラストの「キレイ」の誕生もドラマチックではなかった。
オープニングで、テレビに文字を流していたが、どうにか読めたもののとても読みづらかった。人が文章を読む際は、一字ずつ読んでいるのではなく単語や文節単位で読んでいる事を改めて認識した。
全体的に、ミュージカルという感じはなかった。理由は主役・主役級がほとんど踊っておらず、歌っても余韻が残るナンバーではない事。ミュージカルっぽく感じたのは、村人登場シーンとパーティー、マジックショーくらい。印象に残ったのはラストの松尾のソロ。こういう踊りはおやじダンサーズの舞台で踊れば面白そう、と。
★映画「どら平太」 監督:市川昆、脚本:黒澤明、木下恵介、市川昆、小林正樹、製作:西岡着信 (6月5日掲載)
ある小藩に望月小平太(役所広司)、通称どら平太が赴任する。藩の「濠外」と呼ばれる一画が無法地帯化し、しかもそこからの上がりで藩が潤っているという状況の改革が目的だったが、彼の風評は芳しくなかった。
手を触れずに茶碗を真二つに割り、何十人もの敵を斬り倒すという、S・セガール主演映画もどきのスーパーマン振り。居並ぶ城代家老達にも悪の三親分達にも動じない自信はどこから来るのか。その三親分の内の二人は腰抜けで、一人は番頭風で、今一つ迫力に欠ける。江戸からどら平太を追って来る芸者(浅野ゆう子)や、彼女には頭が上がらずに逃げ惑うどら平太は、面白くはあるが、不可欠ではなかろう。そういう不満があるものの不思議に退屈しないのは、どら平太の、ひょうひょうとしつつも大胆に改革をこなして行くヒーロー振りが、今の日本に待望されているからなのではなかろうか。
★モダンダンス5月の祭典 (5月26日掲載)
5月23日(火)−25日(木)、いずれも18:30開演、メルパルクホール(東京都港区)。チケット(全席自由):前売=3500円、当日=4000円。主催・問合せ:現代舞踊協会(03)3400-4544
23日:室井久美、レイアロハ和多田、窪倉チエ子、渡辺克美、葉桐次裕、育芳香、八城伸子、レフアナニ佐竹、矢野通子、平多結花、内田裕子、賀来良江、石川須妹子。)(見てません)
24日:天野郁代「花の命は短くて」=4人のダンサーが花を持って登場。題名から想像できるように、枯れた花はごみ箱に捨てられ、ダンサーは嘆くという構図。人の世もその繰り返し、と言うのだが……。
窪内絹子「欠けた月−その2−」=曲は徐々に盛り上がって行くのだが、前半の振りがマッチしていない。後半は曲と共に盛り上がるが結局はクライマックスに至らず。テーマである「欠けた月」の登場場面はハッとさせられ、最後の影絵は美しかったが「欠けた月」のテーマが今一つ。
大津千恵「AISOPOSU」=旅人か、5人がレインコートを着、一人が更にボストンバッグを持って登場。やがて嵐になり、必死に抵抗する動き。嵐が過ぎ去り夜明けと共に静けさが戻るが、そこでチョン。
平多実千子「命のリズム」=衣裳の色合いが乾いた人形、埴輪のよう。一人を中心に、15人が周囲で群舞。その造形、フォーメーションが美しい。マスゲーム風に展開するが、一部で、ウェーブなのかユニゾンなのか、動きが乱れたように見えたのが残念。
育かほる「なんじゃ・・・もんじゃU」=上衣は小袖風の日本的出で立ち。題名からユーモラスな作品を想像したがそうでもなく、意図が今一つわかりにくい。
山名たみえ「天然へのラブソディ」=緑の葉を持ってのバレエ風ダンス。動きも曲に合って心地良く見られたが、最後に後ろ向きでTシャツを脱いで上半身裸になる意図は?
正田千鶴「WIND−見えないもの−」=曲も効果音的で、動きも抽象的な作品。前半は動きに注目できるが後半はちょっと飽きて来る。
関口華恵、石井智子、葛西良子、加藤美香、小林伴子、蘭このみ(見てません)
25日:沢美知、南部美紗子、杉原ともじ、坂本秀子、河野潤、渡部伊曽子、育麻咲美、岡村えり子、青木健、池田瑞臣・和田寿子、渡辺宏美、村上クラーラ、井上恵美子、金井芙三枝(見てません)
★ジャック・カロの旅 第アーリーダンスグループ“カプリオル”公演 (5月22日掲載)
17世紀イタリアの古典舞踊〜カローゾ、ネグリ、アルボーの舞踏教本より〜
5月21日(日)18:00。労音大久保会館内R'sアートコート(東京都新宿区大久保1-9-10 03-5273-0806)。出演:古典舞踊=高橋里織、武田牧子、本間杉江、牧野晴美、石倉正英、大津昌吾、岡本益寛、木澤譲、服部雅好。音楽/人形=グレゴ・ダナ。楽士=ラファエル・ゲーラ。チケット(全席自由、ワイン付き):前売¥3,000、当日¥3,500。問合せ:045-785-5724(服部)
全く予備知識が無い人が見たらこう思うかもしれない。「ジャック・カロの旅」と言う割にはカロが主人公とは思えない。展開の切っ掛けは作るが、常に主人公ではない。基本的には17世紀の西洋古典舞踊が多少のストーリーの下に、古典楽器の演奏をバックに繰り広げられる。但し舞踊テクニックは覚束ない箇所があり、場面展開もスムーズとは言い難い。人形遣いも、それだけを見れば楽しめるが、全体の中の位置付けが不明瞭である。
しかし、出演者のほとんどはプロダンサーではなく、衣装や道具は手作り、振りも文献を調べての復刻等々である事を知ると、古典の雰囲気盛り沢山の楽しい一時と言えよう。板の振動を応用したタランチュラの踊りが感動もの。(実際は鑑賞したのではなく、写真撮影だった。)
★KAKERA第38回旗野恵美創作舞踊公演 (5月22日掲載)
5月16日(火)19:00。北とぴあ・さくらホール(東京都北区王子駅前)。出演:旗野由記子、中川桂、小田原真貴、大迫英明、稲垣順子、北岡恵里香、宮崎百代、桐谷みえ子、福島かなで、宮杉綾子、旗野恵美。チケット(全席自由):前売¥3,500、当日¥4,000。問合せ:旗野恵美舞踊研究所:03-3420-4953。
30年前から改訂されながら続けられている「KAKERA」は、日本音楽をバックに人形をモチーフにした作品。脚と手が帯状に繋がった衣装は不自由さの象徴か。“舞踏”的で、テンポも内容も古い感じ。2部は七つの連続小作品で、やはりあまりスピーディな展開ではなく、現代舞踊としては少数派の感じ。しかし、それ故にこれはこれで個性的な作品になっている。
★DANCE創世記2000 (5月13日掲載)
5月12日(金)19:30。北沢タウンホール(東京都世田谷区北沢2-8-18 03-5478-8006)。前売¥3,500、当日¥4,000。問合せ:西山プロジェクト:03-3476-0526。
「ジャグリング」振付:浅野つかさ、出演:矢作聡子、浅野つかさ、他4名。舞台中央奥での登場シーンには奇術的なものを感じたが、後は普通。
「Cross World Power」振付:北村真美、出演:古賀豊、北村真美、他4名。いつもながらのスピーディで、かつエネルギッシュな動きだ。一人の身体の動きが、連鎖反応的に他人へ伝播して行く。そういう動きには目を見張るが、何を表現しているのかがわからない。
「Untitled」振付・出演:池田素子。スロモーな動きが速くなり、やがて再びスローになる。やはり表現よりも動きを主体に見てしまう。
「開かれた手の方へ」振付:妻木律子、出演:妻木律子、高橋克仁。ばら撒かれた安全ピンの上での踊りはひやひやさせる。争うカップル? 二人の関係が今一つ見えて来ない。
「夜の草を踏む」振付:高野尚美、出演:深見章代、他9名。学生の創作ダンスという感じ。それが悪いと言うのではなく、初々しい。
「Mariages−婚礼−」振付:田保知里、出演:二見一幸、田保知里、他10名。6組のカップルが織り成すフォーメーションが楽しめる。北村作品とは違ったスピード感がある。但し、婚礼という感じは無かった。
★歌劇「ドン・キショット」 作曲:J・マスネ、指揮:A・ギンガル、演出・美術・衣裳・照明:P・ファッジョーニ (5月13日掲載)
5月9日(火)18:30−21:20。新国立劇場オペラ劇場。出演:ドン・キショット=R・ライモンディ、サンチョ・パンサ=M・トランポン、合唱=新国立劇場合唱団、藤原歌劇団合唱団、バレエ=東京シティバレエ団、管弦楽=新星日本交響楽団。
日本初演だからという訳ではないが、音楽も歌も初めて聞く。全体的に静かで奇麗だが、バレエ版のような盛り上がりに欠ける。また、「ラ・マンチャの男」のような余韻も無い。バレエも期待したほどは踊っていない。
炭坑の中での劇中劇という設定で、舞台美術が圧巻。馬やロバもリアリティがある。4基の風車の羽根がぐるぐる回るシーンはオペラ劇場ならではである。
この劇場には何度か来ているが、予算の都合でいつも4階席だった。今回は1階の8列目。値段は18,900円也! と言っても実は学割で3,000円だったのです。前列の客の頭を気にする事無く、さすがによく見えました。
★劇団クレッシェンド第3回公演 ボーイフレンド〜タップで恋を語ろう〜 (4月30日掲載)
4月30日(日)13:00−15:20。東京芸術劇場小ホール2(東京都豊島区池袋駅西口)。出演:和田哲監、小川真樹、三浦志保、足立原江美、神田剛、木村雅彦、小鍛冶さおり、桜木かおる、照井寛、中島克英、中野智絵、永原あやの、本多純子、山下淳吾、安藤恵、大谷まゆみ、中村望。前売:3000円、当日:3500円(全自由席)。問合せ:エヌケーディー 0424-92-3041
「1920年代の陽気なフラッパービートにタップダンスとチャールストン、躍動感あるミュージカルナンバーとダンスナンバー、劇場を出る時には誰もがステップを踏みたくなる、そんなミュージカルコメディです。」という謳い文句に嘘は無かった。
1920年代のニース郊外の、寄宿制の花嫁学校で繰り広げられる恋愛物語。
ストーリは他愛ないが、歌曲が良く、退屈しない。但し、全体的に平板だったのは、対立要素の描き方が弱かったからだろう。例えば、花嫁学校の躾の厳しさが描かれていれば、校長の目を盗んで男友達と会う生徒達の解放感がもっと活きただろう。また、厳格だが自分の恋愛には甘い校長の2面性、ポーリーとトニーの、お互いに身分を隠しての恋愛と、本当の姿が判明した時のショックなども同じ。
一目惚れシーンの演出が面白い。チャールストンは、もっと乱痴気騒ぎ風に踊った方が良かった。
劇団も作品も、予備知識無しで見たのだが、団員はオーディションで選ばれただけあって、それぞれに歌・演技共にそれなりの実力を感じた。特に小鍛冶さおりの帽子・衣裳・髪型はチャールストンにぴったりで雰囲気も良く、男どもを“焦らす”演技も秀逸で、主役級。木村雅彦は、演技にぎこちなさはあったが、コミカルな振りにそれが却って活きていた。篠原豊は、少ない出演だったが存在感があった。
所々、歌が聞き取れなかったのが残念。最後、幕が下りる前に、3人のきらびやかなセクシー女性が登場して、エンディングに華を添えるが、蛇足だと思う。
客席の天井方向から聞こえて来るスタッフの会話がうるさかった。
★映画「NYPD15分署」 監督:ジェームズ・フォーリー、脚本:ロバート・ブッチ、製作:ダン・ハルステッド (4月30日掲載)
ニューヨーク・チャイナタウンでは、二つのマフィアが張り合っていた。その街の秩序を守るのは、チェン(チョウ・ユンファ)が率いる、東洋人で構成されたニューヨーク市警15分署。そこに白人警官ウォレス(マーク・ウォールバーグ)が配属された。彼は白人故に、初めは署員に相手にされなかったが、パートナーとしての働きを次第に認められて行った。しかし同時に、マフィアとの腐れ縁にも組み敷かれて行くのであった。
前半は主にアクション、後半は男の友情物語である。
意のままに派手な捜査方法で功績を上げるチェンだが、話が出来過ぎているのは裏社会に通じているからだとしても、展開が早過ぎる。
警察官としての職務を遂行する為の手段としての裏取引と、本来の使命と、人種を越えた友情に悩むウォレスの心情を、もっと描いて欲しかった。反面、彼の正体を知った時のチェンの演技は良かった。
いずれにせよ、世の中は勧善懲悪だけでは渡れない。本音と建前の使い分けが必要なのである。
★映画「シュリ」 監督/脚本:カン・ジェギュ、製作:サムスン・ピクチャーズ (3月26日掲載)
韓国情報機関のジュンウォン(ハン・ソッキュ)は、1箇月後に、熱帯魚店を経営するミョンヒョン(キム・ユンジン)との結婚を控えていた。彼は同胞と共に、北朝鮮の女性諜報員イ・バンヒの動向を探っていたが、どうやら情報が敵側に漏れているようだった。おりしも、南北朝鮮の首脳が出席するサッカーの南北交流試合が行なわれる寸前に、極秘に開発されていた液体爆弾「CTX」が盗まれた。犯人はイ・バンヒ一味だった。
今年の1月に封切られ、未だに上映されているのと、何かで「今までで最も面白かった映画」という評判を読んでの鑑賞。その結果、アクション映画としては二流だが、政治、民族問題と恋愛をうまく絡めてあり、お薦めしたい作品だった。
冒頭の、イ・バンヒの優秀さに説得力が無く、オープンカフェで捜査の進捗を話す非現実性、必要以上に飛びまくる銃弾、格闘技に優れた諜報員なら肉体を見れば一目瞭然のはずなのに……、全く商売っ気の無いペットショップ、アクションを捕らえるカメラが動き過ぎて見づらい等々、文句はあるが、使命と愛情の狭間に苦しむ気持ちには、涙腺が緩んでしまいました。
東西の敵対関係が描けなくなって以来、地球外生物が敵に設定される映画が多かったが、我々の身近には、まだまだ対立関係は残っているのだ。
★バレエへの招待「アンナ・パブロワと「瀕死の白鳥」」 (3月26日掲載)
展示「バレエへの招待」 戦前に来日した、パブロワを始めとする海外の舞踊家の資料、新国立劇場のバレエ公演の衣裳、写真、ビデオなどを展示。3月24日(金)−26日(日)13:00−18:00、3月28日(火)−30日(木)17:00−21:00、新国立劇場オペラ劇場プロムナード、入場無料。
「アンナ・パブロワと「瀕死の白鳥」」 講演(薄井憲二、ニコラ・ヴィロードル、牧阿佐美、松澤慶信、西形節子)、フィルム上映(瀕死の白鳥、蜻蛉、カリフォルニア・ポピー、他)、上演(鷺姫、瀕死の白鳥)。3月24日(金)、18:00−21:00、新国立劇場中劇場、入場無料(17:00より先着順)。問合せ:新国立劇場情報センター:03-5352-5781
薄井憲二:「伝説」となっている事柄は、検証してみる必要がある。
牧阿佐美:最近は技術に走り勝ち。そろそろ限界で、パブロワの頃の表現に戻るのかも。
パブロワの映像を見る機会も貴重だったが、フォーキンが自分の振りを残す為に残した数十枚の写真を、連続させて踊りにした映像も見応えがあった。約8割の入り。95%は女性。
★BAOBAB PLANET公演「雑」 (2月27日掲載)
2月26日(土)18:00。北沢タウンホール(下北沢駅南口下車)。出演:ジョー高橋、野和田恵里花、宮沢さおり、他14名。お問い合わせ:バオバブシステム:03-3204-7351
ダンス界のさまざまな所で活躍している際立つダンサーを17人選びBAOBABの樹の故郷マダガスカル島を背景にイメージしたとの話。BGMも照明も変えないで始まったので、中には気付かない観客もいたと思うし、時間を気にしながらトイレに行って、戻ったら既に始まっているので慌てた人もいた。やはり何らかの切っ掛けが欲しい。一人の女性ダンサーが客席に来て、席を移動しながら私の隣に座った。「羽交い締め」でもしようかと思ったが、進行に差し障りがあってはいけないの“石”になっていた。
野和田の作品は、ダンサー、ダンステクニックは見事だが、構成、中身が今一楽しめないものが多い。今日も然りだったが、「雨降り」の後の女性の群舞、男性の群舞は良かった。
出演者の挨拶が済んだ後も、プロジェクターは延々と「モンティーパイソン」風の張り絵アニメを流しており、私は見ていたが、ほとんどの客は出て行ってしまい、残念だった。入りは約3割か。
★バレエ「トリプル・ビル」 新国立劇場バレエ団 (2月6日掲載)
「ラ・バヤデールより“影の王国”」 古代インドが舞台というが、そういう印象は受けなかった。一場面の為、ストーリー性が無いが、踊りとしては見応えがある。(35分間)
「テーマとバリエーション」 酒井はなのシェネを始めとする動きが実に滑らか。小嶋直也の動きは安定しているが、太股が益々筋肉質になっており、少々グロテスク。舞台装置の柱の遠近感の描き方がおかしい。(25分間)
「ペトルーシュカ」 ビデオで部分的に見た限りでは、何やら騒々しい内容だったので敬遠していたのだが、やはり一度は生で見ておこう、という事で見たが、やはり趣味に合わなかった。全体的に芝居が大袈裟であり、主役の三人も人形という設定の為、動きがバレエの優雅さとは程遠い。ストーリーも単調で楽しめない。3度の舞台転換の間も、ドラムが鳴り続けるだけで能が無い。(45分間)
2月6日(土)、15:00−、新国立劇場オペラ劇場(4階4列にて鑑賞)。見掛けた有名人:草刈民代
★映画「エンド・オブ・デイズ」 監督:ピーター・ハイアムズ、配給:ギャガ・ヒューマックス/東宝東和 (1月9日掲載)
1979年、バチカン市国の夜空に輝く満月の上には、彗星がカーブを描いて飛んでいた。それは人類の運命を左右する呪われた子の誕生を予見していた。その6時間後、北アメリカで女の子が誕生した。それから20年後の1999年12月、ニューヨーク。元刑事のジェリコ(A・シュワルツェネッガー)は妻子を無くした後、警備会社でVIP専門の身辺警護を担当していた。ある日、警護していたウォール街のビジネスマンが襲われ、ジェリコは狙撃犯を追跡、逮捕直前に謎の言葉を聞くが、それは1000年紀「ミレニアム」最後の日の始まりだった。
年末ではなく、正月に見たのでリアルタイムではなかったが、結構楽しめた。「150億円の巨費を投じて製作された史上空前のSFXスペクタクル・アクション巨篇」との謳い文句に釣られたが、「エクソシスト」物を無理やりアクションに仕立て上げたような感じである。ヘリや地下鉄での追跡、銃器類等、アクションシーンが盛り沢山で飽きないが、テーマは、この世を支配しようとする悪魔と人類(何故か神は出て来ない)との戦いである。もっと精神的、宗教的な脚本にして欲しかった。撃たれても撃たれても立ち上がる悪魔は、まるで「TM2」を見ているかのようだった。
悪魔も智慧が足りないようだ。強引に女性と交わろうとせず、スマートに恋愛関係に持ち込めば成就したであろう。バチカン側も、切羽詰ってからではなく、もっと早く手を打っていれば難無く成し遂げたのだ。でも、それじゃぁ映画にならない?
例によって色々イチャモンを付けたが、客の入りも良く、見て損の無い作品である。(2000年1月4日鑑賞)